ハンバーガー店の行く末と真の競合相手は?【公認会計士×中小企業診断士が解説】

事業再生

ハンバーガー店の倒産件数が過去最高

近年、ハンバーガー店の倒産件数が過去最高を更新しています。飲食店全体が厳しい状況にある中でも、ハンバーガー業態は特に打撃を受けていると報じられています。街中で「人気店だったはずの店が突然閉店した」という例は珍しくなく、SNSでも惜しむ声が目立ちます。背景には、原材料価格の高騰と急速な円安による輸入コスト増加があります。ハンバーガー店で使用する肉、パン、小麦加工品、ポテト、油、紙パッケージなどの多くが輸入品に依存しており、これらの値上げが経営に直接の負担となっています。
もちろん価格転嫁という選択肢はありますが、ファーストフード業態は消費者の価格感度が極めて高く、安易な値上げは客離れの要因となります。特に独立系や小規模店舗はブランド力や広告力で大手に劣るため、値上げによる集客低下の影響が直撃します。値段を据え置けば利益率が悪化し、値上げすれば客数が減るというジレンマの中、多くの店舗が苦しんでいます。
ただし、炭水化物離れや健康志向が語られがちな時代とはいえ、ハンバーガーそのものの需要が大きく減少したわけではありません。テイクアウトやデリバリー需要の増加、短時間で食べられる手軽さ、満足感のあるボリューム、さらには「映えるグルメ」としての魅力など、依然として支持される要素は多く存在します。むしろ、素材や安全性にこだわった高級志向のハンバーガーや、ヘルシー志向で野菜を多用する新たなスタイルのバーガーが人気を獲得するなど、変化の兆しが見られます。
つまり市場が縮小しているのではなく、消費者の価値観が多様化し、選ばれる店とそうでない店の差が鮮明になっています。生き残りのためには、価格帯、提供体験、メニューの方向性など、明確な戦略が欠かせません。そこで本稿では、ハンバーガー店の生き残り戦略についてせt明します。

二極化の傾向

ハンバーガー業界では、近年顕著な二極化が進んでいます。一つは「安さ重視・効率重視」の業態で、もう一つは「高品質・体験重視」の業態です。かつて100円バーガーが大量に販売され、多くの消費者の支持を集めていました。しかし現在では原材料費と人件費の上昇により、100円での提供は現実的ではなくなりました。それでも100円台の商品を提供する店は存在し、ワンコイン感覚の手軽さを武器に、学生や時間を節約したい利用者などから一定の支持を受けています。このゾーンの店舗は調理工程の効率化、セルフオーダー、座席スペースの最小化、仕入れスケールの拡大など、少ない利益を積み重ねるための徹底した経営が求められます。
一方で、1個2000円前後の高級ハンバーガーを提供する店も増加しています。国産牛やA5ランク和牛を使用したパティ、自家製バンズ、地元農家の無農薬野菜、トリュフやフォアグラを使用した限定バーガーなど、徹底的に素材にこだわり、さらに内装や接客にも力を入れるスタイルです。バーガーを「贅沢な食体験」として位置付け、記念日や特別な時間に選ばれる存在となっています。SNSによる口コミや写真投稿が集客を後押ししており、施設型商業施設や都心の人気エリアを中心にブームが広がりつつあります。
この二極化の背景には、消費者が「とにかく安く、素早く食べたい層」と「満足感やストーリー、特別感を求める層」に分かれているという現象があります。逆に言えば、中途半端な価格帯やコンセプトの店舗は埋もれやすく、生き残るのが難しい状況です。「安いから来る」「特別だから来る」という明確な理由づけを作れるかが、ハンバーガー店にとっての重要な課題となっています。

その他ファーストフードとの差別化

ハンバーガー店は、ファーストフード業態の一角として米国型のイメージが強いですが、日本では牛丼チェーン、立ち食いそば、定食チェーンなどの強力な競合が存在します。これらの業態と比較すると、同じ価格帯でも「食事としての満足度」で見劣りすると考える層が一定数います。例えば、定食のほうが野菜が多い、汁物がある、腹持ちが良いといった理由です。特に男性ビジネス層や中高年層においては、ボリューム感や栄養バランスを重視する傾向が強く、ハンバーガーは「軽い」「子ども向け」と捉えられる場面があります。
しかしハンバーガー店には、コーヒーやスイーツ、ポテト、サイドメニューが豊富である点や、明るく開放的な空間で短時間の会話や簡易の打ち合わせが可能という強みがあります。牛丼店で長時間座って仕事や勉強をする光景はほぼ見られませんが、ハンバーガー店では比較的自然です。つまり、ハンバーガーは「食事・休憩・社交」という複合的な利用目的に対応しやすい業態です。この点は大きな武器です。
ただし、低価格帯の戦略を取る店舗の場合、長時間滞在は回転率が低下するため経営的に大きな負担となります。そこで、テイクアウト・デリバリー重視の店舗設計、注文・受取導線の合理化、座席の最小化などが必須になります。逆に、滞在価値を重視するなら、椅子の質、照明、音響、雰囲気づくりが重要です。つまり、ハンバーガー店はファーストフードとしての効率化と、居場所としての価値提供の両立をどうデザインするかが問われています。

喫茶店との差別化

ハンバーガー店が「会話」「くつろぎ」「仕事や勉強の場所」といった用途に踏み込めば、喫茶店やカフェが大きな競合となります。カフェは一般に、静かに過ごせる空間、香り高いコーヒー、居心地良いソファ、落ち着いた照明を備え、長居することを前提とした設計になっています。加えて、雑誌や観葉植物、セレクトされたスイーツなど、空間自体が顧客体験として成立しており、価格以上の価値を提供していることが強みです。
一方、ハンバーガー店は滞在時間を短くし、回転率を上げることで収益を確保する構造のため、座席配置やBGM、内装の作りが異なります。速さと効率性が求められるため、椅子の座り心地や照明の柔らかさは、どうしてもカフェに劣りやすくなります。この違いがそのまま差別化にも弱点にもなります。近年は顧客が用途を選び分ける傾向が強まっているため、曖昧な店は「目的に合わない店舗」と判断されやすく、過ごし方の設計が重要です。
喫茶店はコーヒーの価格に場所代を織り込み、単価を確保することで滞在コストを吸収します。しかし、低単価で客数を回転させるモデルのハンバーガー店では、同じような運営をすると収益が圧迫されます。したがって、もしハンバーガー店がカフェのような過ごし方を提供したければ、メニュー構成の再設計やドリンク価格帯の見直し、高品質な軽食の追加、Wi-Fiや電源設備の整備など、総合的な投資が必要です。軽食とスイーツを強化し、食後も滞在したいと思わせるバリエーションを増やす工夫も欠かせません。
また、長居客による混雑を避けるため、時間制の導入、座席タイプの工夫、ブース席の拡充、テラス席の活用など、店舗設計次第で差別化が図れます。デジタルオーダーや席予約制を取り入れ、用途別に使い分けられる空間を提供する戦略も有効です。むやみに「カフェ化」するのではなく、自店の強みを見極めた「ハンバーガーカフェ」という独自領域を設計できれば、新しい市場が開ける可能性があります。

お店として何を提供するか

ハンバーガー店が直面する最大の課題は、自らの提供価値を明確に定義できているかどうかです。「ハンバーガーを売る店」という枠に留まると、単価競争や立地競争に巻き込まれやすくなります。そこで、「何を提供して顧客に満足してもらうか」を徹底的に設計する必要があります。食事だけでなく、時間、体験、安心感、利便性といった価値が求められていることを認識することが出発点です。
もし「早い・安い・便利」を追求するなら、席数を減らしてテイクアウト中心とし、セントラルキッチン化、自動化、キャッシュレス化を進めることで利益率を向上できます。さらに、モバイルオーダーやピックアップロッカー、ドライブスルーの強化など、スピード体験を極めるほど差別化が可能です。逆に、「特別な体験」「コミュニティ」「居心地」を提供するなら、メニューの質の向上、空間デザイン、限定イベント、地域協力など、多面的な価値創出が求められます。食材ストーリーの発信や、地域農家との提携、季節イベントやライブ企画など、感情価値の創出も競争力になります。
さらに、環境配慮型包装や地産地消、ヘルシーメニューなど、現代の価値観に応じたブランディングも有効です。ビーガン対応やアレルギー配慮メニューなど、多様な顧客ニーズに応える姿勢は支持を獲得しやすく、口コミにもつながります。
重要なのは、「顧客がその店を選ぶ理由」を鮮明にすることです。ランチの時短目的なのか、リラックスのためなのか、友人とゆっくり過ごすためなのか、目的の設計次第で必要な投資や運営戦略が変わります。中途半端な位置付けの店舗は淘汰されやすいため、経営者には勇気ある選択と一貫した戦略が必要です。明確なコンセプトの表明と、その実現に向けた細部へのこだわりこそが、選ばれる店づくりの要となります。

まとめ

ハンバーガー店の倒産増加は市場縮小ではなく、競争構造の変化と消費者価値観の多様化の結果です。安さを追求するなら効率化、体験価値を追求するなら空間づくりと付加価値向上が必要です。さらに、消費者は味だけでなく、居心地、サービス、ブランド姿勢、SNS映えといった多角的な視点で店舗を評価しています。したがって、従来型の「早い・安い・ボリューム」だけでは差別化が難しくなってきています。
また、競合はハンバーガー店だけでなく、牛丼、定食、喫茶店、カフェと幅広く、業態を横断した競争が続いています。フードデリバリーの台頭により、店内価値の存在意義も問われています。その中で生き残る鍵は、「どんな時間と体験を提供する店なのか」を明確にし、徹底して磨くことです。料理そのものの価値に加え、席の居心地、注文体験、接客、店舗のストーリーなど、総合的な顧客体験をデザインする姿勢が求められます。
単なる食事提供ではなく、「その店で過ごすことの意味」を提供できる店舗が、次の時代のハンバーガー業態を担う存在となるでしょう。明確な個性と戦略を持つ店舗だけが、多様な競争環境の中で長期的に支持を得ることができます。
当研究所では、時代の流れを先読みした事業戦略設計に尽力いたします。下記よりお気軽にご相談ください。

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