刑事裁判ではみんな反省する。では、どう反省すればよい?
犯罪を犯して裁判を受ける場合、ほぼ全員が裁判官に対して反省の意を示します。反省の意があるかが、刑を少しでも軽くする可能性があるためで、弁護人も被告人に反省文を書くよう促します。
しかし、具体的にどう反省すればよいかというと難しく、裁判官は減刑を求めるためのパフォーマンス謝罪は見破ろうとします。
そこで本稿では、刑事裁判でどのように反省すればよいかを整理します。
大谷選手の通訳、水谷氏の失敗例
先日、大谷選手の通訳を以前務めていた水谷氏の裁判がアメリカで行われました。水谷氏は裁判官宛に、大谷選手の通訳業務は激務で割に合わず、ストレスも溜まっていたという旨の反省文を出しましたが、あえなく裁判官に「おかしい」と見抜かれました。
水谷氏は通訳として数千万円の報酬を受け取っていました。日本でプレーする野球選手の一体何%がこの金額の報酬を受け取れるのでしょう?金銭的には優遇されていたに関わらず、困窮を盾に減刑を求めようとした水谷氏の戦略はあえなく見破られたのでした。
みせかけではなく真摯な反省を
裁判官が何を一番注目しているかというと、究極的には再犯罪防止であり、そのために真摯な反省をしているかどうかを何より注目します。真摯な反省があれば次にまた犯罪の誘惑にかられた際も耐え忍ぶことができますが、見せかけの反省では次も同じ過ちを繰り返す可能性が高いです。
裁判官も何があれば真摯な反省だと言えるかについては答えを持っていません。ただ、被告人の言動全体を見て本当に深く反省し、次は犯罪を思いとどまれるかを総合的にチェックしているのです。
執行猶予には説教するが、実刑の場合は無視
執行猶予がつくか微妙な案件の場合、裁判官の態度に顕著な傾向があります。ギリギリ執行猶予がつく被告人に対しては裁判官はかなりの時間と言葉数を使って説教をします。説教することで、少しでも真摯な反省に近づけて欲しいという裁判官の願いからの行動です。
逆に実刑になる人は刑務所で矯正するため、裁判官はほとんど説教はせずに短時間で裁判は終了することが多いです。
いかに被告人が再犯罪に及ばないようにするかという観点は裁判官も弁護人もきちんと対応すべきところで、真摯な反省に近づけるために、アメとムチどちらがよいかはしっかり考えなければならないと私も思います。
性犯罪の示談金高額化は決して被告人に不利益ではない
近時、性犯罪の検挙が厳格になり、示談金も高額化が進んでいます。示談するために多額の金銭を用意しなければならないのは大きな負担ですが、これは決して悪い話ばかりではありません。
年収の何倍もの示談金を支払うことは大きな痛手、だから、もう同じ過ちは繰り返さない、それが常識ある人間の思考回路です。これを裁判官に認識してもらえば、真摯な反省として受け止めてもらえる可能性が高まります。逆に雀の涙程度の示談金で合意できても、あまり反省せずに、同じ過ちを繰り返してしまう恐れが高いと、周囲は思ってしまいます。
その観点で、私が被害者側に就任した際はかなりの高額を要求しますし、それが相手のためにもなると依頼者に説明しています。
まとめ
刑事裁判において反省することはセオリーですが、これを戦術だと思っては良い成果は得られにくいです。真摯な反省が不可欠で、弁護人もどうすればそこに達することができるのかわからないため、ただ「反省しろ」とだけ伝えて本人任せにしがちです。
当研究所では、基本的に無罪主張案件限定で刑事事件は取り扱っていますが、複雑な示談交渉や案件などの依頼もケースによっては受任します。もし、そうした案件がありましたらまずは下記よりお気軽にご相談ください。
コメント