モラハラで離婚を考えた際の実践的手順

離婚

増加するモラル・ハラスメント

モラル・ハラスメント、いわゆるモラハラを原因とした離婚相談案件が増えています。モラル・ハラスメントは正式な定義はないようですが、広義の精神的な嫌がらせ、精神を攻撃するDVと捉えて大きな間違いはないでしょう。例えば以下のようなものが該当します。

  • 大声で怒鳴りつける
  • 無視する
  • 知人や子どもの前で馬鹿にしたり、悪口を言う
  • 行動を束縛する
  • 暴力を仄めかして脅かす

モラハラを原因として離婚できるか、と問われると答えはイエスです。しかし、物理的な攻撃を伴うDVであっても、裁判で決着をつけようとすると証拠の壁にぶち当たることがしばしばあるのですが、モラハラは、こうした物理的な行動を伴わない点で、さらに立証が難しくなるケースが多いです。そこで、本稿では、モラハラを受けて離婚を考えた際の実践的な手続の進め方を整理します。

「婚姻を継続し難い重大な事由」だと裁判官にどう説明するか

離婚原因は民法770条に記載されたものである必要があり、その中の「婚姻を継続し難い重大な事情」があると言えるかがポイントになります。この「婚姻を継続し難い重大な事情」はぼんやりとした概念であり、およそ常識的に離婚が相当の事案について、法律の条文がないから離婚できない、というおかしな結論とならないよう、広く離婚原因をカバーする側面から考えると、モラハラは「婚姻を継続し難い重大な事情」に含まれると考える必要があります。

他方で、逆におよそ常識的に離婚が不相当の事案について、軽微なすれ違いを根拠に離婚を認めないようにする側面もあり、その観点から、「婚姻を継続し難い」「重大」といった要素は厳格に判断されることもあります。この観点からは、ただ一度きりのモラハラや、軽微なモラハラが数回あった程度では、離婚は認められないでしょう。

モラハラ行為として何があったかを書き出し、そのせいで、「婚姻関係を続けることができない」「重大なモラハラだ」ということを裁判官に説得的に伝えるシナリオを整理する必要があります

DVとの異同

ここでDVの手続とどう異なるか整理したいと思います。DVとモラハラは、先に記載した通り、攻撃が物理的なものか精神的なものか、という違いがあります。

DVを受けた場合、一般的にはすぐに警察か病院にかけこんで、事情とケガの状況をこうした公的機関に記録してもらいます。過去の事実について、自身で裁判所で証言しても信用性はあまり高くありませんが、こうした第三者の記録は信用性が高く、証拠としての価値が高いからです。

しかし、モラハラは、精神的な攻撃であるため、目に見えた被害がなかなか現れにくい点に違いがあります。そのため、被害を受けても、すぐに警察や病院に相談できるケースが多くない点が、DVよりも難しいところです。

また、物理的な攻撃を受けるということは、「暴行罪」という犯罪であり、「犯罪をするような人とは過ごせない」という理屈で「婚姻を継続し難い重大な事情」があるという主張をすることは至極論理的で裁判官も判断しやすいのですが、精神的な攻撃行為が「暴行罪」に該当するかは難しい問題もあり、「婚姻を継続し難い重大な事情」の主張上も、DVより困難なことが多いです

どうしても離婚したい場合の現実的な対応策

このようにDVと比較して考えると、モラハラで離婚が成立するハードルは、一般人の社会感覚より高めに設定されそうであり、離婚が認められないということは、被害を受けた側にとっては「その程度が我慢せよ」といわれるようなものです。

過去の裁判例や決定的な証拠の有無が与えるインパクトを考えると、モラハラを受けたことにより、精神的に不調を来し、病院に通院して診断書をもらえるレベルが、裁判で高い確率で離婚が認められる水準ではないかと考えられます。すなわち、どうしても離婚したい場合は、病院にかけこんで診断書をもらうべきであると、一般論としては言えそうです。

ただ、現実的な対応として、軽微なモラハラはずっと我慢し続け、精神に不調を来すまで離婚できないというのは、私はおかしな話だと考えます。そこで、私がこうした事案でよく提案するのは、「我慢できなくなった時点で別居を考えてはどうか」という事です。別居により、モラハラから身を守れますし、一定期間別居を続けることで、確実に離婚に向かうことができるからです。

まとめ

モラハラを理由に離婚できるかといわれると、理屈上は可能ですが、実践的には医師の診断書をもらえるレベルでなければ高い勝率は見込めないかもしれません。

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