人手不足の本当の原因は人手不足ですか?【公認会計士×中小企業診断士が解説】

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人手不足倒産が増加傾向だが

人手不足が原因で倒産に追い込まれる企業が、近年増加していると報じられています。特に中小企業では、必要な人材を確保できず、事業拡大どころか維持すら困難になる状況が目立ちます。人口減少社会に突入した日本では、働き手の絶対数が減少しており、業種や地域によっては採用活動をしても応募が全くないという声も珍しくありません。物流、建設、介護、外食など、労働集約型産業では顕著です。こうした状況を見ると「人手不足=人が足りない」という単純な図式が浮かびますが、実態はより複雑です。本当に、人口が減っているから従業員が確保できないのでしょうか。もちろん一因ではありますが、それだけでは説明がつかない現象もあります。
例えば、同業他社は十分に人材を確保しているのに、一部企業だけが慢性的な人手不足に悩んでいる例があります。これは単に人が足りないのではなく、働き手から選ばれない企業である可能性が高いということです。給与水準が低い、職場環境が悪い、過度に長時間労働を求める、成長機会が乏しいなど、働く側が魅力を感じない要素が積み重なれば、どれだけ募集をかけても人は集まりません。また、企業が抱えている業務量が、本当に必要に基づくものなのかという視点も重要です。「こんなに仕事があるのに人が足りない」と嘆く企業が、実はその仕事自体が過剰であったり、利益につながらない活動に多くの時間を割いていたりするケースもあります。つまり「仕事が多い=良い状態」ではないです。必要以上の仕事量を抱え込んでいると、いくら人を増やしても負担は減らず、改善しません。
もちろん、人手不足は深刻な問題ですが、原因を人口減少だけに求めると、解決策を見誤ります。そこで本稿では、何が“本当の人手不足”なのかを解きほぐし、企業が採るべき解消方針について考えていきます。重要なのは、人が少ないから困るのではなく、事業構造や戦略に問題があることが多いという視点です。真の原因に向き合うことで、持続的な成長と労働環境の改善が初めて実現します。

その需要は本物?

人手不足とは、仕事があるにもかかわらずそれを担う人材が不足している状態を指します。仕事があるということは、一般的に商品やサービスに対して需要が存在していることを示します。しかし、その需要が「本物かどうか」は慎重に見極める必要があります。需要があると企業が思い込んでいるだけで、実際には市場のニーズと乖離している場合があるからです。本来であれば削減すべき業務を抱え込んでいたり、顧客が実際には求めていないサービスを提供していたりする企業が「忙しいのに儲からない」状態に陥りがちです。
例えば、無駄に手順が多い業務フローや、誰も求めていない付加サービスに工数を割いているケースがあります。この場合、いくら人員を増やしても根本的な問題は解決しません。重要なのは「本物の需要に合致した仕事」だけをすることであり、余計な業務を削ぎ落とすことで人手不足と感じる状況は大幅に改善します。さらに、顧客も必要としていないサービスを無償で提供し続けると、企業側が疲弊するだけです。市場の声を真摯に受け止め、必要なことに絞り込む経営姿勢が求められます。
実際、多くの企業では業務整理だけで負担が軽減し、従業員の負担が減り、求人に対する魅力向上にもつながることがあります。適正な仕事量に整えるだけで、従業員は余裕を持って質の高い仕事をこなし、企業は本当に必要な戦略領域にリソースを集中できます。「忙しい=価値がある」という錯覚から脱却し、「必要な仕事に集中する」ことこそ、人手不足解消の第一歩です。

無理に作り出した需要で人手不足を叫ぶ滑稽

需要が自然に存在するのではなく、無理やり作り出そうとする企業も少なくありません。例えば、業界の定番イベントとして定着したおせち料理や恵方巻は、伝統文化という側面がある一方、需要が減少しているにもかかわらず、売上目標だけが毎年吊り上げられるケースがあります。その結果、販売現場は過剰な製造や廃棄リスクを抱え、スタッフの負担は増大します。実際には顧客離れが進んでいる商品なのに、強引に売ろうとするから従業員が疲弊し、人材が定着しなくなりがちです。
また、コンビニ業界のように「出店目標数」ありきで店舗を乱立させるモデルも典型例です。顧客需要が追随していないのに店舗数だけが増えると、利益は分散し、従業員の労働負担が増します。そうした状況に陥ると、募集をしても応募は集まりません。収益性が低いために賃上げができず、人が集まらないという悪循環に陥ります。結果として「人手不足だ」と叫ぶわけですが、実態は“需要がないのに仕事を作った”ことが原因です。
こうして無理に仕事だけ増やして人手不足だからうまく回らないと嘆くのは自作自演の1種のコメディです。無理に需要を喚起するのではなく、自然に存在する需要に対して必要な人手を配置することが重要です。顧客の本当のニーズを理解し、利益につながる領域に集中することで、従業員が誇りを持って働ける環境をつくれます。市場と調和した経営こそが持続的な成長につながり、人材が自然と集まる企業体制になります。

薄利多売は時代錯誤

かつては「安さこそ最大の差別化戦略」という考え方が一般的でした。商品サービスに個性がなくても安ければ買手が簡単につっからです。こうした薄利多売は高度経済成長期に多くの産業で有効なモデルでしたが、現代ではその前提が崩れつつあります。低価格競争は体力勝負であり、利益率が下がると従業員の待遇も改善されず、募集をかけても応募がこないという悪循環につながります。さらに、忙しいのに収益が伸びず、従業員が疲弊する環境は、若い世代にとって魅力的ではありません。現在の労働市場では、適正な給与と働きがいが求められています。
働き方改革が進む中で、効率的に働き成果を上げることが重視されています。従業員一人ひとりの能力を高め、付加価値の高い業務に集中させることが重要です。消費者も「安いから買う」だけではなく、品質やサービス、ブランド価値を重視する傾向にあります。つまり、薄利多売の時代は終わり、適正な価格帯で質の高い商品やサービスを提供することが成功の鍵になっています。
企業が人手不足を解消するためには、ただ人を増やすのではなく、業務の質を高め、従業員にとって魅力的な環境を整える必要があります。薄利多売は完全にこの流れと逆方向に向かうもので、今の時代はほどほどの業務量でしっかりと利益を得られるビジネスモデルを構築することが求められています。難しい時代だからこそ、効率性と付加価値を両立させる経営が不可欠なのです。

適正収益を見極めろ

薄利多売や無理な売上目標の押し付けは、短期的には成長に見えるかもしれませんが、中長期的には人材流出と品質低下を招きます。人手不足を真に解消するためには、自社の資源と市場環境を踏まえた“適正収益”を見極める視点が必要です。企業の強みを活かし、利益率の高い分野に集中することで、業務量と収益のバランスを取って従業員の待遇を改善し、魅力ある職場環境をつくることができます。
適正な収益が確保できれば、給与を引き上げることができ、従業員のモチベーションと定着率が向上します。また、価格競争に巻き込まれず、ブランド価値を構築しやすくなります。さらに、必要な投資や教育に資源を回すことで、長期的な企業成長につながります。業務量と給与のバランスが取れた環境は、働き手にとって魅力的であり、採用もスムーズになります。
収益を確保するためには、ターゲット市場の明確化、商品・サービスの付加価値向上、適切な価格設定が重要です。物価高のこの時勢なので、ある程度強気の価格設定も有効です。競争力のあるビジネスモデルを構築し、従業員が誇りを持って働ける企業文化を育むことで、自然と人が集まる組織になります。人手不足は単なる人材不足ではなく、経営戦略と直結する問題であることを理解する必要があります。

6.まとめ

人手不足は人口減少だけに原因を求めるべきではなく、企業が抱える構造的な問題が大きく関係しています。需要の本質を見極め、無理な拡大や薄利多売に頼らず、適正な収益を確保する経営が求められます。ほどほどの業務量で十分な報酬を受け取ることができる体制を構築することで、従業員が魅力を感じる職場をつくり、自然と人が集まる好循環を生み出すことが、人手不足の真の解決策です。必要なのは、働き手が選びたい企業になるための戦略的な取り組みです
当研究所では、薄利多売や見せかけの需要に関わる業務を削減し、御社の適性な収益を確保して人財の獲得と定着のための施策を支援いたします。下記よりお気軽にご相談ください。

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