「すれ違い」が離婚原因と言われる離婚が増加
近年、芸能人カップルや著名人夫婦が離婚を発表する際に「すれ違い」を理由として挙げるケースが目立ちます。お互いの仕事が多忙で、家庭での時間を共有できずに心の距離が広がってしまったという説明は、世間の共感を呼ぶ一方で、あくまで当事者の価値観やライフスタイルを反映した結果でもあります。
夫婦関係が破綻する原因は様々ですが、すれ違い離婚は「誰が悪い」という問題ではなく、互いの生き方が一致しなくなったことが本質です。かつては「離婚は人生の失敗」と見られる風潮がありましたが、現代では「離婚は新たな人生のスタート」として捉えられることが増えています。その背景には、個人の生き方やキャリアを重視する価値観が社会に浸透してきたことが影響しています。本稿では、こうした「すれ違い離婚」について、法的な論点を押さえつつ、その背景にある人生観や社会的意義について考察します。
法的な離婚原因にはなりにくい
離婚には民法で定められた法的原因が必要ですが、「すれ違い」だけでは法的な離婚原因として認められにくいのが実情です。民法770条では、配偶者の不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、重大な精神病、その他婚姻を継続しがたい重大な事由が離婚原因とされています。しかし、単に「お互いが多忙で接点が少ない」という理由は、これらに該当しません。
もっとも、すれ違いが長期間にわたり、夫婦関係が完全に形骸化している場合、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性が出てきます。ただし、それでも一方が離婚を拒否すれば裁判での立証が必要になり、単なるすれ違いが法的にどれだけ深刻かを裁判所に理解してもらうのは簡単ではありません。このように、すれ違い離婚は法律論だけで解決できるものではなく、むしろ当事者同士の話し合いや価値観の擦り合わせが求められる場面が多いのです。
本質的には、すれ違いとは「お互いに歩み寄る努力を拒絶した状態」にほかならず、法的な責任論を超えた人間関係の問題です。そのため、形式上は協議離婚で円満に解決するケースが多い一方、どちらかが一方的に別れを切り出す場合、相手の同意を得るまでに時間がかかるのも、この類型の離婚に見られる特徴です。
生活にマイナスとなりかねない
夫婦は法律上「相互扶助義務」を負っています。これは経済面だけでなく精神面においてもお互いを支え合うことを期待するものです。しかし、すれ違い夫婦の場合、物理的に接点が少ないことから、この相互扶助義務がほとんど機能していません。それどころか、同居しているにもかかわらず生活リズムや価値観が大きく異なり、お互いの行動が相手の生活を邪魔する結果になるケースすらあります。
例えば、夜勤と昼勤で生活時間が完全にずれている夫婦が同じ空間で生活することで、相手の睡眠を妨げたり、生活音や光の問題でトラブルが生じたりすることがあります。こうした状況では、夫婦でいることの「メリット」が「デメリット」に転じてしまいます。
一方が相手に配慮して生活スタイルを大きく変えることができれば良いのですが、多忙な仕事に追われていると、それすら困難な場合がほとんどです。その結果、「夫婦でいる意味とは何か?」という根源的な問いに直面し、離婚という選択肢を検討せざるを得なくなるのです。このように、すれ違い夫婦は、法的義務以前に実生活における負担感が大きくなりがちな点が問題となります。
子どもや関係者にも良い影響を与えにくい
夫婦間のすれ違いが長期化すると、その影響は当事者間だけにとどまらず、子どもや家族、職場の同僚など周囲にも及ぶことがあります。仮にすれ違い夫婦が子どもを授かった場合、親子の時間が十分に確保できず、子どもの成長に必要な情緒的な関わりが不足するリスクが高まります。片親が多忙でほとんど家庭に不在という環境は、子どもにとって精神的な不安定さを生じさせる原因にもなりかねません。
また、周囲の人間関係にも影響が及ぶことがあります。例えば、夫婦のすれ違いにより実家の親族が間に立って調整を試みる場面が増えると、家族全体が疲弊してしまうケースがあります。友人や職場の同僚に愚痴をこぼすことで人間関係がギクシャクする事例も珍しくありません。
このように、夫婦というステータスに固執して関係を維持し続けることが、かえって自分自身だけでなく、子どもや周囲の人々にとっても悪影響を及ぼすリスクがあります。単なる「世間体」のために夫婦関係を維持し続けることが果たして賢明なのか、一度冷静に考え直す必要があります。
1度きりの人生を有意義に
すれ違い離婚を選択する人々の多くは、「自分の人生をこのまま無意味に浪費してよいのか?」という根源的な問いに突き当たります。相手が自分に歩み寄る気がない、また自分も相手に合わせることができない状況下で、無理に夫婦関係を継続することが本当に自分にとって幸せなのか、深く考えるようになります。
離婚は法的な制度であると同時に、一人ひとりのライフプランニングに直結する重大な決断です。特に現代では、経済的・社会的に自立している人が増え、一人でも人生を豊かに生きる力を持つ人が多くなりました。そのため、無理に「夫婦」という形に固執せず、別々の道を歩むことで新たな人生の充実を得ようとする選択肢が現実味を帯びています。
すれ違い離婚は「法的理屈で争うものではない」という側面が強く、自分自身の価値観や幸福追求を軸にして選ばれる離婚です。一人で生きていける覚悟がなければ選択しにくいものですが、自分の一度きりの人生を大切にするためのポジティブな決断ともいえるでしょう。
まとめ
すれ違い離婚は、単なる「夫婦仲の悪化」ではなく、現代における個人主義の浸透や価値観の多様化を背景に生まれた現象です。法的な離婚原因としては扱いにくいものの、生活実態や心理的負担を考えると当事者にとって極めて切実な問題です。すれ違いによる相互扶助義務の形骸化、家庭内でのストレス、周囲への影響といった問題を冷静に分析し、人生を有意義に生きるために離婚を選ぶという選択肢も、今や特別なものではなくなりつつあります。
離婚は決して失敗ではなく、新たな人生の第一歩です。すれ違い離婚は、自分らしさを取り戻すための前向きな決断であり、自立した人生を歩むための重要なライフイベントとして捉えるべきでしょう。
当研究所では、離婚問題を決して法律だけで解決しようとはせず、相談者の人生観や倫理観を大切にし、離婚後の生活設計まで手厚くサポートしております。下記よりお気軽にご相談ください。


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