私的整理成功のカギは未知への対応能力

事業再生

中小企業の1割強が私的整理による再生を検討中

いわゆるゼロコロナ融資の返済が始まるのを前に、中小企業において私的整理による事業再生を検討するところが増えています。

私的整理とは、取引先などの小口の債権者には通常通り支払を継続しつつ、金融機関からの借り入れについて一部免除等を求めるよう金融機関と交渉する再生スキームです。

中小企業が私的整理を検討しているのは取引先に迷惑をかけたくないという思いに加え、「コロナはいイレギュラーな損失だからここだけ免除してくれれば後は元通りに頑張る」という考えがあるようです。しかし、そのような単純な話ではないはずです。

「コロナ前」に本当に戻せるか

コロナがイレギュラーな事故で、ここで生じた損失だけ債務免除すれば従前通り営業できる、というのはかなり大雑把な意見で、そう簡単に金融機関は信用しません。

例えばコロナで打撃を受けた飲食業や宿泊業を見てみましょう。まず、アフターコロナの今、コロナ前と同じ売上を本当に確保できるでしょうか。

さらに、値上がりの傾向が続く今、原価をコロナ前と同水準に維持できるでしょうか。一度いなくなった従業員を再調達できるでしょうか。室内の感染対策の手段を講じてなお、コロナ前と同水準のコストを維持できるでしょうか。無理です。

アフターコロナは、コロナ前とは別の新しい事業計画を作成する必要があります

イレギュラーな出来事は他人に押し付けるものではない

イレギュラーだから債務免除してほしい、というのも金融機関を怒らせかねない暴論です。これが成り立つなら、物価高だから・・、円安だから・・など、いくらでも言い訳できてしまいます。コロナ禍はインパクトがあまりに大きすぎましたが、イレギュラーな出来事による損失は自身でカバーすべきもので、他者に転嫁するものではありません

レジリエンスを持ちながら高い見込みのキャッシュフローを提示できるか

私的整理において債権者が見ること、特にアフターコロナで注目度が増すのは、こうしたイレギュラーな出来事にどれだけ耐え得るのか、いわゆる「レジリエンス」になっていくと想定されます。私的整理手続を通じていくら債権カットするかは将来キャッシュフローの見通しに大きく依存し、その見積もりの正確性が何より重視されます。ここで、レジリエンスのない組織は、キャッシュフローの見通しも不安定であるため、私的整理は成立しにくいです。逆に、レジリエンスのある組織であれば、将来キャッシュフローは多くなくとも、安心して債権者は協議を進めることができます。

まず何より、イレギュラーな出来事にも対応可能な力を組織として備える試みが必要です。

まとめ

「コロナさえなければ」という考えは心情的にわからないわけではありませんが、金融機関相手の協議で通用する考えではありません。それよりも未知のリスクやチャンスに柔軟に対応できる力を組織として身に着けることに注力することが苦境脱出の基本です。

当研究所では、私的整理の経験豊富で、かつ、組織設計や戦略策定にも長けた弁護士・公認会計士が、御社のさらなる発展または事業再生に幅広く対応しております。まずは下記よりお気軽にご相談ください。

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