新しいサービスの売り込み方【MBA×中小企業診断士が解説】

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新しい商品やサービスは認知にも選択にも時間がかかる

新しい商品やサービスを考案することは、創造的で刺激的な作業です。アイデアが形になった瞬間には、「これはきっと世の中に歓迎されるに違いない」と胸が高鳴ります。しかし、その高揚感とは裏腹に、実際の販売プロセスは長く険しい道のりです。新しい商品は、生まれた瞬間から広く知られるわけではありません。多くの場合、存在を知ってもらうまでに相当な時間と労力を要します
なぜ時間がかかるのかといえば、人間は基本的に「今までと違うもの」に対して慎重だからです。既存の選択肢に慣れている消費者は、新しいものに飛びつくよりも、まずは様子を見ます。そのため、まずは広告や口コミ、メディア露出などで認知を広げる必要があります。さらに厄介なのは、仮に存在を知ってもらえたとしても、それが「実際に選ばれる」段階まで進むには別の壁があることです。
選ばれるためには、顧客が「今よりも良い」と感じる理由が必要です。既に利用している商品やサービスを変えるのは手間であり、場合によってはリスクも伴います。そのため、認知と選択の間には心理的なハードルが存在します。
そこで本稿では、こうした認知の獲得から選択されるまでの過程を整理し、新しい商品やサービスを設計・販売する際のポイントを、段階的に解説していきます。焦点は、単なる発明を「売れる仕組み」へと転換するための現実的なアプローチです。

販売戦略はメニュー化が基本

販売戦略を立てる上で、最も基本的でありながら見落とされがちなことが「何ができるかを明確に伝える」ことです。これを実現する方法が「メニュー化」です。メニュー化とは、飲食店のメニュー表のように、提供する商品やサービスを整理し、顧客が一目で理解できるようにすることです。
たとえば、弁護士や公認会計士のように法律で独占的に認められた業務がある職業は、名前を聞いただけで「何をしてくれる人なのか」が比較的伝わりやすいです。しかし、その他の業種では事情が異なります。たとえば「コンサルティングサービス」と言っても、それが経営改善なのか、採用支援なのか、マーケティング戦略なのかは人によって想像が異なります。顧客が混乱した時点で、購買意欲は薄れてしまいます。
飲食店であれば、提供する料理の種類や価格帯を明示するのは当然ですが、それは他のサービス業でも同じです。何を、どのくらいの価格で、どのような条件で提供するのかを明確化しなければ、顧客は安心して利用できません。メニュー化は単なる情報の羅列ではなく、「選びやすさ」を意識して設計する必要があります。
顧客ニーズは多様であり、メニュー数を増やせば対応できる範囲も広がりますが、数が多すぎると逆に探しにくくなります。そこで、カテゴリ分けや価格帯別の整理、簡潔な説明文、写真やアイコンの活用といった工夫が重要です。ネット上で展開する場合は検索機能の充実も欠かせません。「何ができるのか」を伝えることは、売り込みの第一歩であり、ここでつまずくと後の努力がすべて無駄になる危険すらあります。

「何ができるか」はシーズではなくニーズから考える

新しい商品やサービスの内容を決めるとき、多くの人は自分の経験やスキル、つまり「シーズ(Seeds)」を出発点にしてしまいます。たとえば「自分は英語が得意だから英会話教室を開こう」「プログラミングができるからアプリ開発をしよう」といった具合です。もちろんシーズは大切な資源ですが、それを出発点にするのは必ずしも得策ではありません。
顧客は「提供者が何を得意としているか」よりも、「自分の悩みが解決されるかどうか」に関心があります。たとえば、英会話を学びたい人は「講師がTOEIC満点であること」よりも「海外旅行で困らない会話力が短期間で身につくこと」の方に価値を感じます。つまり、出発点は顧客のニーズです
自分の持つシーズを無理やり当てはめてしまうと、本来の市場ニーズから外れる危険があります。顧客の課題を丁寧に調べ、その解決策として自分のシーズをどう活用できるかを逆算することが重要です。この思考の順序を守ることで、商品やサービスはより「使いたい」と思われる存在になります。

価格帯は最初は控えめに

新しい商品やサービスが市場に認知されたとしても、次は「実際に選んでもらう」という難関が待っています。このとき大きな壁になるのが、「未知の商品にお金を払うことへの抵抗」です。人は新しいものに魅力を感じつつも、それが自分にとって本当に価値があるのか確信が持てないと、購入をためらいます。
この心理的な壁を低くするために有効なのが、販売初期における控えめな価格設定です。これは単なる安売りではなく、試用促進のための戦略的価格です。たとえば、通常5,000円のサービスを初回限定で3,000円に設定し、「今だけ」のお得感と体験の機会を同時に提供します。この際、割引の期間や条件を明確にすることが重要です。「限定感」が購買を後押しします。
ただし、この方法には注意点もあります。価格だけを理由に集まった顧客は、値引きがなくなると離れてしまう可能性が高いです。そのため、割引期間中に「この価格でなくても使いたい」と思わせるだけの価値を体験させることが不可欠です。価格戦略は市場浸透の助走期間であり、その後の定価販売への移行を見据えて設計する必要があります。
また、控えめな価格は「試す価値がある」と感じさせるきっかけであり、ブランド全体の印象にも影響します。あまりに安すぎると品質に疑念を持たれ、逆に高すぎると初期利用が進まないため、バランスが肝心です。競合他社の価格帯や顧客の購買力を参考にしつつ、利益よりもまずは「市場での足場固め」を優先する戦略的判断が求められます。

お客様の声の収集と活用

新しい商品やサービスを売り込む上で、顧客からの口コミやレビューは非常に強力な武器です。特に市場に出たばかりの段階では、利用者が少ないため、他人の体験談が購入を後押しする効果は絶大です。人は広告よりも、自分と同じ立場の人の意見を信じる傾向があります。
しかし、実際にはアンケートやレビューの依頼に応じてもらうのは容易ではありません。そこで効果的なのが、購入直後やサービス利用直後といった「熱が冷めないうち」に簡単な回答フォームを提示することです。さらに、初期の割引販売の条件としてアンケート記入をお願いする方法もあります。これなら顧客にとっても「割引を受けられる対価」として納得感があります。
集めたお客様の声は、社内で改善に活用するだけでなく、積極的に外部発信します。ウェブサイトやSNSに写真つきで掲載したり、パンフレットに引用したりすることで、次の顧客の信頼を得やすくなります。高評価が蓄積されると、それ自体が「信頼の証明書」となり、購入の障壁を大幅に下げる効果を発揮します。
加えて、ネガティブな意見であっても適切に対応すれば、逆に信頼を高めるきっかけになります。誠実な改善報告や、顧客の声を反映したアップデート情報を発信することで、「この企業は顧客を大切にしている」という評価が広がり、長期的なブランド力の向上につながります。

まとめ

新しい商品やサービスは、単に作っただけでは売れません。市場に認知され、選択されるまでのプロセスを踏む必要があります。第一歩は、わかりやすいメニュー化による内容の明示。次に、発想の出発点をシーズではなく顧客のニーズに置くこと。そして、初期は控えめな価格で体験のハードルを下げ、さらに顧客の声を集めて信頼性を高めることが成功の鍵です。
売り込みとは、押し付けることではなく、顧客が自ら選びたくなる環境を整えることです。この視点を持てば、新しい商品やサービスは単なる一過性の存在ではなく、市場に長く根付く価値あるものへと成長していきます。
さらに言えば、この流れは一度きりでは終わりません。市場環境や顧客ニーズは常に変化しますから、メニューの見直しや価格戦略の調整、口コミ施策の更新などを継続的に行う必要があります。売り込みの成功は単発の施策ではなく、継続的な改善と顧客との信頼関係の積み重ねによって初めて実現します。
当研究所では、新しい商品やサービスをどのように売っていくか、模倣を防ぐかという攻防一体の支援サービスを提供しております。下記よりお気軽にご相談ください。

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