ラーメン屋と倒産は増加傾向なのに対し、街中の中華料理屋は長続き
近年、ラーメン屋の開業が相次ぐ一方で、その倒産件数も増加の一途をたどっています。新規参入のハードルが比較的低く、流行に乗って一気に拡大する傾向がある反面、生き残るのはごく一握りという厳しい現実があります。これに対して、街中に昔からある中華料理屋は今もなお健在で、地域に根ざした営業を続けている店舗が少なくありません。両方とも同じ中華料理であり、料理単体で見るとラーメンの方が人気であるはずですが、意外に思われる方も多いのではないでしょうか。
こうした現象には、いくつかの構造的な要因が関係しています。本稿では、なぜ街の中華料理屋は長く続き、ラーメン専門店は比較的早期に淘汰されてしまうのか、その理由を段階的に掘り下げていきます。そのうえで、街中華ならではの魅力や、経営を継続する上での注意点についても触れていきます。
早くてメニューが豊富
中華料理屋の大きな強みは、注文から提供までのスピードと、豊富なメニューにあります。注文を受けてから調理を始めるスタイルでありながら、炒飯やラーメン、定食類に至るまで短時間で提供できるのは、中華鍋を使った高火力調理ならではの技術です。また、料理人の手際の良さもあいまって、「早くてうまくて安い」というイメージを強く支えています。
さらに、町中華はメニューが実に豊富です。ラーメン、餃子、麻婆豆腐、酢豚、唐揚げ、チャーハンといった王道メニューから、日替わり定食、季節限定メニューなど、その日の気分や同行者に応じて選択肢が多い点が重宝されます。しかも価格は比較的手頃で、ランチタイムにはセットメニューが800~1000円程度で提供されることも多く、サラリーマンや家族連れの財布にも優しいのです。
これに対し、最近のラーメン専門店は個性を打ち出し、スープや麺に強いこだわりを持つ代わりに、提供までに時間がかかる場合が少なくありません。また、ラーメン以外のメニューが限定的で、一人でふらっと立ち寄るには良いものの、複数人で訪れて好みに合わせるには選択肢が狭いことが敬遠される要因にもなります。
気軽に入りやすく常連客で安定
街中華のもう一つの強みは、「気軽さ」と「常連客の定着力」です。中華料理屋は店構えが気取っておらず、敷居も低いため、一人でも、同僚や家族とでも入りやすい雰囲気があります。またメニューが多く、どんな世代・嗜好の人でも好みに合ったものを見つけやすい点も、複数人での来店を促す要素となっています。
こうした入りやすさは、何気ない日常の中で「また来よう」と思わせる力につながります。初めはランチ利用であっても、夜のちょい飲み、あるいは休日の家族での外食といった形で利用機会が広がり、次第に常連客が増えていきます。常連がつくと客足が安定し、経営のベースがしっかりと築かれるようになります。
一方、ラーメン屋は特定の味に特化する傾向が強く、リピートするにはその味が好きであることが前提になります。また、席数が少なく回転重視である店も多く、ゆっくり過ごしたい人や複数人での来店を避ける人も出てきます。その結果、どうしても客層が限られ、常連化しにくい傾向が強まってしまうのです。
多能工の店主。技術承継が課題
街中華の店主や料理人は、非常に幅広いメニューを短時間でこなす「多能工」であることが多く、その技術力が店の支柱になっています。スピーディーに炒め、揚げ、煮込むといった各種調理法を駆使して、注文ごとに素早く料理を出すためには相当の経験とスキルが必要です。こうした技能は一朝一夕に身につくものではなく、修業と実践の積み重ねが不可欠です。
しかしその一方で、この多能工性が店の脆弱性ともなり得ます。たとえば店主が病気で倒れてしまった場合、他に代わりがいないと店舗運営が立ち行かなくなります。また、スタッフの退職や高齢化が進むと、一部メニューが提供できなくなるケースも出てきます。これではお客様の満足度も低下し、売上にも影響が出かねません。
さらなる課題は技術承継です。後継者がいても、料理の技術や店の味、接客のスタイルをしっかりと引き継ぐには時間がかかります。継がせたくても「覚えることが多すぎて無理」と敬遠されることも多く、実際に廃業に至る例も少なくありません。長く続けてきた町中華であっても、事業承継の壁を乗り越えられない場合、時代とともにその灯を消してしまうのです。
価格転嫁と賃上げを失敗すれば人手不足倒産へ
街中華の最大の魅力の一つは「安くて満足できる」点ですが、昨今の物価上昇や人件費の高騰により、経営環境は厳しさを増しています。材料費の高騰を受けて、適切に価格転嫁を行わなければ利益が圧迫され、スタッフへの賃上げもままならず、人材確保に支障をきたすことになります。実際、「安さ」を守るあまり、最低賃金すれすれの給与しか払えず、慢性的な人手不足に悩む店舗も増えています。
値上げのタイミングを誤ると、それまでの常連客が離れてしまう恐れがあります。中華料理屋は価格に敏感なお客様も多く、たとえ数十円の値上げでも印象が悪化し、リピート率が下がることもあります。そのため、多くの店舗では「原価率が上がっても価格は据え置き」とせざるを得ず、結果的に赤字を重ねるという悪循環に陥るリスクもあるのです。
長期的に見れば、最低限の価格改定を適切に実施し、スタッフに十分な給与を支払い、働きやすい環境を整えることが不可欠です。そのためには、価格改定の際にその理由を丁寧に伝え、サービスの質向上とセットで行うなど、お客様に納得してもらう工夫が求められます。
まとめ
街中華がラーメン屋と比べて長く続くのは、単に「味がいいから」「安いから」という単純な理由ではありません。注文から提供までのスピード感、メニューの多さ、誰でも入りやすい空気感、そして常連客による支えといった、多方面の強みが積み重なって今日の姿を築いています。
ただし、こうした強みの裏には、多能工を支える技術継承の難しさや、人手不足に対する対策の必要性といった、避けて通れない課題もあります。特に、価格転嫁と賃上げのタイミングを誤ると、経営自体が行き詰まりかねません。
街中華を継続させるためには、魅力を最大限に活かしつつ、柔軟に時代に対応する力が問われます。単なる郷愁に頼るのではなく、進化する町中華としてどうあるべきかを考えることが、生き残りの鍵となるでしょう。
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