私的整理の成否は双方の透明性と誠実性に依る

事業再生

私的整理が失敗する主な要因

私的整理は、非常に弾力性のある事業再生手法であり、うまく活用すれば、再生会社も金融機関もwin-winの良い結果をもたらすことが可能です。たとえば、企業側からすれば、取引先に迷惑をかけずに金融機関の支払方法だけ再考することができ、金融機関側からすれば法的整理よりも高い弁済率を確保することができる場合が多いです。

しかしながら、私的整理の弱点は手続の透明性が低く、相手が一度疑心暗鬼に陥ると信頼回復と手続の進行が困難となる点です

私はこの点に関し、私的整理に関わる企業と金融機関双方が意思決定の透明性と、誠実性を持って取り組む必要があると考えます。以下、それぞれ整理します。

企業に求められる透明性

私的整理は手続の透明性が低いため、金融機関に信用してもらえないことが最大の手続上のネックになります。そのため、とにかく、隠し事なく事実や数字を明らかにすることが必要です。特に弁済方法に関する部分は金融機関は特に注視しますので、なぜその数字であるのか明確に答えられる必要があります。

よくある失敗例としては、特定の役員の一存でざっくりとした弁済率を定めて、金融機関に債権放棄を求めるケース、自社の資金繰りや利益の都合で作成した返済計画案を強引に金融機関に飲ませようとするケースなどです。

金融機関としては精いっぱい頑張って支払える内容であれば、これを飲まざるをえません。そのため、「精一杯であるか」を把握したいのですが、最初から特定の結論ありきで進めようとすると、大抵失敗に終わります。

企業に求められる誠実性

企業は私的整理を通じて金融機関に迷惑をかけているため、とにかく誠実である必要があります。法的手続では裁判所を騙すような行為があれば即、手続は破談になります。しかし、私的整理では裁判所が目を光らせているわけではないため、どうしても、企業に有利な結果を得ようと、虚偽説明や資料の捏造を考える企業も出てきます。

しかし、私的整理であっても、誠実義務は同じで、これに違反すれば再生する資格はありません。バレない範囲でうまくやる、なんてのは再生会社となった今、考えることでは絶対にありません。とにかく正確な情報を正直に提出し、その中で最も良い結論を導こうとする意識が不可欠なのです。

金融機関に求められる透明性

金融機関にも透明性は求められます。ありがちなのは、私的整理の対応を若手担当者に任せきりで、意思決定権限を有する層の方が現場に出てこないこと、それが誰なのかも明らかにされないケースです。

金融機関として、誰がどのような方針で意思決定するのか、これを金融機関側も明らかにしなければ互いに有益な結論は見出せません。忙しい中でも面倒くさがらずに、誰が責任を有し、どのような方針で検討を行いのか、早い段階で明らかにすべきです

金融機関に求められる誠実性

ざっくりとした希望観測で数字を作ってしまうのは企業側だけではなく、金融機関側も同様です。特に根拠もなく、「弁済率80%なければ話にならない」などと勝手に線引きしてしまうケースは決して少なくありません。

しかしながら、金融機関担当者に求められるのは業績目標ではなく、法的整理よりも高い弁済率で、これをどこまで引き上げられるかです。相手の現状をふまえずに、自分の要望のみ押し付けるのは誠実ではありません。

企業を最初から下に見る、理解しようとしない。こうした担当者では私的整理はなかなかうまくいかず、これは金融機関が担当者をきちんと教育すべきところです

まとめ

以上のように、私的整理を円滑に進めるためには、企業と金融機関双方が、透明性と誠実性を持って協議を尽くす必要があります。その際、誠実義務を有する弁護士や公認会計士は、必ず役に立ちます。

当研究所では、金融機関とのコミュニケーションに長けた弁護士・公認会計士が、充実した私的整理をサポートいたします。下記よりお気軽にご相談ください。

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