日本でも金利が上昇
日本では長らく超低金利政策が続き、銀行預金にほとんど利息がつかない環境が当たり前になっていました。しかし最近、預金に数百円、あるいは数千円と、以前からは考えられない水準の利息がついたという話を耳にします。長期にわたり「預ける意味がない」とまで言われていた時期が続いた中で、こうした変化に驚いた人も多いのではないでしょうか。預金者にとってはプラスの変化であり、金融の世界で何か大きな転換が生じていることを感じさせます。
金利とは、お金のやり取りにおける価格です。資金を借りる側は利息を支払い、貸す側は利息を受け取ります。そして金利の動きは、単なる金融用語にとどまらず、企業活動、家計、投資、さらには政府の財政運営にまで広がる極めて重要な指標です。金利が上がるというだけで、ローンの返済計画が変わり、企業の収益性評価が変わり、株式や債券など資産価格にも影響が及びます。つまり、金利は経済活動の基盤であり、血流とも言える存在です。
このような背景から、金利上昇は社会全体に様々な変化をもたらします。利息が上がるという一見良い側面だけでなく、借入負担の増加や資産価値の変動という現象も生じます。生活者も、企業も、投資家も、金利という軸を踏まえて行動を調整する必要が出てきます。したがって、日本における金利上昇は、単なる数字の変化ではなく、経済構造の変化を示すシグナルであり、これまでとは異なる視点が求められる局面と言えます。そこで本稿では、こうした金利上昇が持つ意味を、順を追って理解していきます。
借金すると返済が大変になる
金利が上昇した際、まず大きな影響を受けるのは、借入を行う個人や企業です。借金というのは、元本に加えて利息を返済する必要があります。そのため、金利が低ければ負担は軽く、金利が高ければ返済負担は重くなります。住宅ローンを組んでいる家庭が多い日本では、数%の金利変化が家計に大きな影響を与えます。例えば、数千万円規模のローンでは、わずかな金利上昇でも月額支払いが大幅に増えることがあります。
企業にとっても事情は同様です。設備投資や事業拡大のために借入を行う場合、金利が低いと積極的に借り入れてビジネスを進めやすくなります。しかし、金利が高くなると資金調達コストが増加し、事業採算を慎重に見極める必要が生じます。つまり、借りた資金で金利以上の利益を確実に生む必要があり、単に資金不足を補うために借りるという発想では立ち行かなくなります。低金利時代には成立した事業計画が、金利上昇期には見直しを迫られることもあり得ます。
このように、金利上昇は資金調達のハードルを上げ、より計画性と収益性を求める環境を生み出します。無計画な借入はリスクを高め、返済難に陥る可能性もあります。逆に言えば、金利上昇期こそ、資金管理や事業評価の重要性が高まる時期であり、金融リテラシーと経営判断の質が問われる局面とも言えます。
債権の現在価値は下がる
金利上昇は、既存資産の価値にも影響を与えます。特に重要なのが債権の評価です。例えば、1年後に100万円を受け取れる権利があるとします。この権利が現在いくらの価値を持つかは、金利を使って割り引いて計算します。割引現在価値という考え方で、金利が低いほど将来のお金の価値は高く評価され、金利が高いほど低く評価されます。
具体例を考えると、金利が1%の場合、100万円の現在価値は約99万円ですが、金利が5%になれば約95万円となります。同じ100万円という約束でも、金利が高い環境では価値が下がってしまうのです。これは国債や社債など金融商品のみならず、企業間取引における受取債権、弁済請求権、損害賠償請求権などにも関係します。
債権を持っている人にとっては、金利上昇によって資産価値が目減りすることを意味します。逆に言えば、債権を購入する投資家は、より高い金利での運用機会が生まれる可能性があるという側面もあります。しかし、何もせず保有しているだけで価値が減る可能性があるため、金利環境に応じて資産の組み替えや管理を行う重要性が高まります。金利が動くというだけで、資産の安全性や効率性に差が出るという点は、資産形成を行う上で押さえておきたいポイントです。
企業価値は上がる
企業価値の評価に用いられる方法のひとつに、DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法があります。これは、企業が将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り戻して企業価値を計算する手法です。この際、企業の成長率が評価に影響します。一般に、永久成長率が高いほど企業価値は大きくなります。金利が上がり安定することで経済全体の成長率が引き上げられると、企業の永久成長率が高まると見なされ、結果として企業価値が上昇する可能性があります。
もっとも、ここで重要なのは企業が金利上昇に見合う収益性を持っているかどうかです。成長率が上昇しても、それを上回る収益力を持つ企業でなければ投資家の評価は高まりません。高い収益性と競争力を持つ企業には、投資家からの資金が集まり、さらなる成長投資が可能となり、企業価値が増大します。このように、金利上昇は経済における「ふるい」として機能し、健全で高い競争力を持つ企業が評価されやすい環境をつくります。
一方で、収益性に乏しい企業は資金調達が難しくなる可能性があります。金利上昇は、企業経営の質が問われる局面であり、成長性と収益性の両方が求められます。金利上昇は必ずしも悪要因ではなく、競争力ある企業にとっては評価を高める追い風となり得ます。
金利が上がるということはそれ以上のリターンを得なければならないということ
金利が上がると、資金を運用する側は当然より高いリターンを求めるようになります。これは、単に金を貸す側にお金が入りやすくなるという話ではありません。むしろ、市場全体で「資金を使うなら、それ以上の成果を出さなければならない」という意識が強化されます。企業が負債を用いて事業を拡大するのであれば、金利以上の収益を安定的に生み出せるプロジェクトに資金を投じる必要があります。利益の見込みが曖昧なまま借入を増やす経営は、金利上昇環境では大きなリスクとなります。
また、不動産投資においても同様です。借入金利が上昇する場合、保有物件から得られる賃料収入もそれに応じて増加させる必要があります。つまり、金利上昇は経済全体で価格上昇圧力を高め、物価の高騰につながる性質を持ちます。それと同時に、労働生産性の向上や効率化を求める力として作用します。金利が高い環境では、より高い付加価値を生み出せる企業や個人が生き残り、経済の質が向上していくと捉えることもできます。
こうした流れの中では、資本効率を意識した運用が求められます。資金を使うならば、それがどれだけの成果を生むのか、コストに見合うリターンを確保できるのかという視点が、以前にも増して重要になります。金利上昇は、経済全体において資源配分をより合理的な方向に誘導する役割を果たしていると言えます。
まとめ
金利上昇は、単なる金融市場の変動にとどまらず、家計、企業経営、投資市場、さらには経済全体の健全性に深く関わる現象です。預金利息が増える一方で、借入コストが高まり、債権の価値が変動し、企業価値の評価にも影響します。さらに、金利が高い環境では、資金を使う側に効率性と高いリターンが求められます。金利上昇は厳しさと機会を併せ持つ仕組みであり、資金の使い方や投資の判断において、より計画性と合理性が求められる時代へと移行しています。
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