夫婦間でも秘密は秘密。調査は倫理観を持って行う必要がある【弁護士×CFPが解説】

離婚

紛失防止タグを悪用した調査が問題に

夫婦間のトラブルは個人の生活領域に深く入り込むため、感情的になりやすく、行為の是非が見えにくくなることがあります。近年問題になった事例として、紛失防止タグの悪用があります。本来、紛失防止タグは財布や鍵、ぬいぐるみなどの物品を見失わないための補助ツールであり、持ち主が物の位置を簡単に特定できることを目的としています。しかし、別居している配偶者の居所を突き止めるために子どものぬいぐるみにタグを忍ばせて追跡したという事件が報道され、社会的な関心と反発を呼びました。この行為は一見「家族を守るため」との名目で正当化されがちですが、実際には配偶者の行動の自由や私的領域を侵害する行為であり、倫理的にも法的にも重大な問題があります。加えて、この種の行為は子どもの安全や精神的安定にも影響を与え得るため、軽視できません。事件を契機にストーカー規制法の改正や罰則の適用範囲拡大が議論されるようになり、位置情報を利用した監視行為に対する社会的監視が強まっています
そこで本章ではまず、この種の事例がなぜ問題視されるのかを整理し、技術の利便性とプライバシー保護のバランスについて考えます。技術が家庭生活に入り込むほど、倫理的な配慮とルール作りが不可欠になります。配偶者であっても相手の同意なしに居所を把握する行為は慎重に考えるべきであり、被害を防ぐための法整備とともに、個々人の倫理観も問われています。

相手のスマホを見るのは「日常」ではない

スマートフォンは個人の情報の集積庫です。連絡先、写真、メッセージ、位置情報、家計管理、趣味嗜好まで、多岐にわたる情報が保管されており、配偶者のスマホを覗けば多くの「証拠」が見つかるという幻想にとらわれる人は少なくありません。日常的にリビングに置かれたスマホを手に取り、子どもやペットの名前などからパスワードを推測して解除して見る行為は、一見「家庭内の些細なこと」に見えますが、実際は通信の秘密やプライバシーを侵害する行為となり得ます。たとえ家庭という閉じた空間で起きたことであっても、意図的な閲覧や複製は法的な問題を引き起こす可能性が高いです
さらに、スマホ内の情報を用いて相手を問い詰めたり、SNSで拡散したりすれば、名誉毀損やプライバシー侵害として別の法的責任が発生する恐れもあります。重要なのは「発見した情報の正当性」だけでなく、「どうその情報にアクセスしたか」という取得方法自体の正当性です。パスワードが緩くて偶然解除できてしまったとしても、それが法的に許容されるわけではありません。疑念が生じた場合は、まず冷静に対話の場を設ける、または弁護士やカウンセラーなど中立的な第三者に相談するなど、正当な手続きを踏むことが求められます。突破的な手段で得た「証拠」は短期的には安心を与えるかもしれませんが、長期的には信頼関係の破壊、精神的な疲弊、法的リスクを招くことが多いです。

GPSの装着は慎重に


紛失防止タグと同様に、GPS端末を利用した追跡も配偶者間で問題になります。自動車に無断でGPSを設置して行動を監視するケースは少なくなく、こうした行為は刑事法上直ちに明確な罰則が設けられていない場合もありますが、倫理的には大きな問題を含んでいます。GPSによる位置情報は、移動履歴から生活習慣、交友関係、さらには健康上の問題や医療機関の利用状況に至るまで多くの個人情報を照らし出します。配偶者の居所や行動を追跡することで一時的に「安心」を得られるかもしれませんが、それは相手の人格的尊厳と生活の自由を侵害する行為であり、家庭内の信頼回復には逆効果です。
さらに、GPSを不用意に設置した場合、その装着行為が露見した際に相手の反発を招き、対立が激化するリスクも高いです。話し合いで解決しようとしない相手に対して強硬手段を用いることは、「問題の根本的解決」にはならず、むしろ事態を複雑化させます。GPS追跡を考える前に、まずは対話、第三者の仲介、専門家による助言を求め、合法的かつ倫理的な方法で解決を試みるべきです。倫理観を欠いた追跡は、その情報の正当性が認められたとしても、家庭生活や親子関係を長期的に損なう可能性が高い点に留意しなければなりません

民事訴訟法の違法収集証拠排除の要件は緩いが

調査によって得た情報を法的手続きに使用できるかどうかは、多くの人が気にする点です。民事訴訟の場では、刑事手続と異なり、「違法に収集された証拠を完全に排除する」という厳格なルールが常に適用されるわけではありません。裁判所は、証拠の必要性や訴訟における真実発見の重要性と、証拠の入手方法の相当性を総合的に検討します。そのため、探偵業者が実施したGPS追跡の結果や、他方が違法手段で取得した資料であっても、裁判所が証拠として採用するケースが存在します。これは、民事訴訟が当事者間の権利関係を解決する場であること、及び真実の解明が重視されることに起因します。
しかし、この法的な柔軟性は「何をしてもよい」という免罪符ではありません。違法又は倫理に反する方法で情報を取得した場合、相手方から反訴や損害賠償請求を受けるリスクがあり、裁判所によっては証拠価値を軽視したり、当該取得行為自体を厳しく批判する判断を下すこともあり得ます。弁護士や裁判官は職業倫理を重んじ、違法手段の助長を避ける姿勢を取ります。したがって、訴訟に備えるのであれば、証拠収集の段階から合法的かつ倫理的な方法を選択することが、結果的に当事者自身を守る最良の方法となります。法的有効性と倫理的妥当性の双方を満たすよう慎重に考えながら行動することが重要です。

ルールと倫理

技術が進化することで、個人情報にアクセスする手段は日々多様化しています。ルール(法律や規制)が整備されることは被害防止のために不可欠ですが、ルールだけに頼ることは危険です。ルールのない領域でも、高い倫理観に基づいて行動することが求められます。特に夫婦間の問題は、単なる情報収集ではなく、相手の人格・尊厳・家庭内の信頼関係に影響する行為ですから、何が許されるのかを冷静に考える必要があります。
相手の秘密を暴きたいという感情が先行すると、短期的には満足感を得られるかもしれませんが、長期的には家族関係の崩壊や親子関係への悪影響、さらには法的紛争を招く可能性があります。したがって、まずは「本当にその情報が必要か」「その情報を得る正当な手段は何か」「得た情報をどう扱うか」を慎重に検討するべきです。
また、当事者同士の対話が困難な場合は、家庭裁判所や調停、カウンセリング、弁護士といった専門機関を活用し、感情に任せた行為を避ける工夫が必要です。倫理的な判断とは、単に法律を守ることだけでなく、相手の人権や将来を見据えた行動を選ぶことでもあります。ただルールを守るだけではなく、さらに高い倫理観に従って常識的な行動をすることが社会的に重要になっています。

まとめ

夫婦間であっても、相手の秘密は尊重されるべきです。紛失防止タグやGPS、スマホの無断閲覧など、技術を利用した調査手法は便利さと引き換えに重大な倫理的・法的リスクをはらんでいます。民事訴訟では状況によっては証拠が採用されることもありますが、それを理由に違法や倫理に反する手段を安易に用いるべきではありません。疑念や不安が生じたときは、まず冷静に対話の道を模索し、必要であれば専門家の助言を受けることが大切です。ルールの整備を求めつつ、自らも高い倫理観を持って行動し、短期的な安心のために家庭の信頼や将来を犠牲にしない決断をすることが求められます。最終的に大切なのは、法と倫理に基づいた正攻法で問題解決を図る姿勢であり、それが家族全体の健全な関係維持につながります。
当研究所では、ルールを順守し、高い倫理観を持ちながらお客様の抱える課題の最善の解決を追求いたします。下記よりお気軽にご相談ください。

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