事業再生は外部専門家を頼らなければならない?
事業再生という言葉を聞くと、多くの経営者は外部の専門家に相談する場面を思い浮かべるのではないでしょうか。実際、中小企業が経営に行き詰まった際には、地域の活性化協議会や商工会議所などを通じて支援を受けることが一般的です。その際、公認会計士や中小企業診断士といった専門家に依頼し、事業の現状を分析して立て直しの計画を練るケースが少なくありません。さらに一度再生を果たした後も、顧問契約を結んで継続的に助言を受ける形が多く見られます。
もちろん、外部の専門家に頼ることは効果的です。客観的な視点を持つ第三者が関与することで、社内では気付きにくい問題点を指摘してもらえるからです。また、専門知識に基づいた分析や計画立案は、成功の確度を高めてくれるでしょう。しかしその一方で、費用面の負担が大きいという課題も無視できません。顧問料や相談料は長期にわたり発生し、再生を進める資金を圧迫する可能性もあります。
では、専門家を頼らなければ事業再生は不可能なのでしょうか。必ずしもそうではありません。自社の経営陣が基本的な分析と判断をしっかり行えば、外部の支援に頼らずとも再生の道を切り開くことは可能です。大切なのは「どこに問題があるかを自分で見抜き、改善のための意思決定を実行できるか」という点です。本稿では、外部専門家に頼らずに進められる事業再生の基本的な考え方について整理していきます。
損益計算書を分解して分析せよ
事業再生の第一歩は、自社のどこに赤字の要因が潜んでいるかを特定することです。企業全体の業績を把握するには損益計算書が有効ですが、そのままの形では全社レベルの数字しか見えません。事業を立て直すためには、これを事業部門別や商品別に細かく分解し、どの部分が収益性を欠いているのかを明らかにする必要があります。
例えば、売上高総利益を部門ごとに算出してみると、ある部門では利益率が高く安定している一方で、別の部門では赤字を垂れ流しているケースがあります。こうした情報を可視化しなければ、経営者自身もどの領域が問題なのかを正確に理解できません。
さらに、費用構造を把握することも欠かせません。損益計算書に計上される費用は、大きく固定費と変動費に分けることができます。売上に比例して変動する費用と、売上に関わらず一定額かかる費用を分けることで、どの程度の売上を確保すれば黒字転換できるのか、すなわち損益分岐点を見極めることが可能になります。
固定費の中には、全社共通の管理費を事業ごとに按分しなければならない場合もあります。例えば、経理部門や人事部門の費用をどのように事業に割り振るかを考えることで、真の収益性を測ることができるのです。こうした分析作業は手間がかかりますが、問題の根源を明らかにするためには欠かせない工程です。最終的に、赤字の大きい部門や収益性の低い分野が整理の対象となることが見えてくるでしょう。
不要なコストを探せ
事業再生のもう一つの基本は、不要なコストの削減です。企業が赤字に陥る要因は売上の不足だけでなく、無駄な支出の多さに起因することも少なくありません。したがって、まずはどのコストが過大なのかを洗い出すことが重要です。
コストを把握する際には、同業他社との比較が有効です。例えば、仕入原価率や販売管理費率を業界平均と照らし合わせれば、自社がどの項目で無駄を抱えているかを知ることができます。加えて、損益計算書に現れない隠れたコストにも注意を払わなければなりません。
在庫の持ちすぎは典型的な例です。過大な在庫は保管スペースの確保や管理コストを生み、資金繰りを圧迫します。設備投資についても同様で、必要以上に大きな設備や使われていない機械が費用増加の原因となることがあります。このような点は損益計算書だけでは分からず、現場を確認することで初めて気付ける場合が多いのです。
ただし、削減できるコストがすべて良いわけではありません。研究開発費や人材育成に関する費用など、将来的な成長に直結する項目を安易に削れば、企業の競争力を失う危険があります。そのため、一つひとつの費用について「本当に不要か」「将来の利益に寄与するか」を慎重に見極めることが欠かせません。コスト削減は単なる節約ではなく、戦略的に企業を再生させるための武器なのです。
不採算部門や過大なコストは躊躇なくカットせよ
分析の結果、不採算部門や不要なコストが特定できたら、次に求められるのはそれを躊躇なく削る決断です。経営者にとっては難しい場面ですが、赤字部門や収益に結びつかない費用を残したままでは事業再生は実現できません。思い切ったリストラこそが企業を蘇らせるための条件となります。
しかし、外部専門家が関与していない状況では、社内の利害関係が強く作用することがあります。特定の部門が社内の権力構造に組み込まれていたり、従業員や役員の既得権益が絡んでいたりすると、合理的な判断が妨げられるのです。また、企業には伝統や創業者の思い入れといった無形の価値も存在し、それを理由に不採算事業を残そうとする声が上がることも少なくありません。
しかし、事業再生の局面においては、感情よりも合理性を優先せざるを得ません。残すべきものと切り捨てるべきものを区別し、未来の企業にとってプラスにならないものは排除しなければなりません。ここで必要なのは経営陣の覚悟です。外部の専門家に依存せず自力で再生を図る以上、自分自身に厳しく、冷静な判断を下せるかどうかが試されます。
事業を守るために一時的に痛みを伴う決断をすることは避けられません。しかし、その痛みを乗り越えることでこそ、健全で持続可能な企業体質へと変わることができます。
売上を増やす方向に考えるのはセオリーではあるが・・
事業再生の手段として「売上を増やす」という発想は、多くの経営者がまず思い浮かべるものです。確かに、売上高が増加すれば固定費の負担が相対的に軽くなり、利益が拡大することが期待できます。理論的には正しい方向性ですが、実際の現場ではそう単純にはいきません。
売上を拡大するには、新規顧客の獲得や販路の拡大が不可欠です。それには営業人員の増強や広告宣伝の強化といった追加投資が求められます。つまり、売上を増やそうとすれば同時にコストも増加してしまいます。再生過程にある企業がこれに耐えられるかは大きな課題となります。
さらに、人手不足が深刻化している現代社会では、優秀な人材を確保すること自体が困難です。資金も人材も潤沢ではない状況で、短期間に売上を大幅に増加させるのは現実的に難しいケースが多いのです。むしろ売上拡大を焦って失敗すれば、資金繰りを悪化させ、事業再生どころか倒産に至るリスクも高まります。
もちろん、売上増加の施策を完全に否定するわけではありません。ただし、それを優先的な手段とするのは危険です。まずは既存の事業をスリム化し、収益性を高めたうえで、余力が生まれてから拡大を図る方が現実的で安全な道となります。売上至上主義に陥らず、冷静に状況を見極めることが求められます。
まとめ
事業再生を進める際、外部専門家の存在は頼もしいものです。しかし、専門家に依存せずとも、自社内でできることは数多くあります。まずは損益計算書を分解して赤字部門を明らかにし、不要なコストを削減します。そして、不採算部門や収益に結びつかない支出を毅然とした姿勢でカットすることが重要です。
売上拡大という選択肢は魅力的に見えますが、再生過程の企業にとってはリスクを伴います。むしろ支出のスリム化と合理的な判断によって収益体質を強化することが先決です。経営者自らが主体的に問題を分析し、厳しい決断を下すことで、外部に頼らなくても事業再生の道は開けます。重要なのは「自分の会社を自分で立て直す」という覚悟と実行力に尽きるのです。
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