マンションの居住者のいない居室に課税か?
タワーマンションが資材や土地不足などを背景に新築はもちろん中古物件も高騰を続けています。そのため、資産家が投機目的でマンションを購入し、そのまま放置しているケースも増加しており、晴海フラッグでもかなりの割合の居室に人が住んでいないのが実情です。
こうした居住者なき居室が増加すると、様々な問題が生じると想定されており、その対策として空室税を設定して、所有者または借主が居室に居住するよう促す施策が検討され始めています。そこで本稿では、この空室税について問題の本質を意識しながら説明します。
居住者がいないと管理が行き届かないおそれ
タワーマンションの話なので、オーナーは別のところにいるが、居室は空室のままであるというケースを想定します。人気マンションであれば借主がつかないということはないでしょうが、オーナーが賃貸管理を面倒がったり、マンション価格を高めるために強気の賃料を設定しているような場合は未入居の居室が生じます。
こうした居住者のいない物件は誰も管理しません。マンションでは毎年火災警報設備などの点検がありますがその点検を受ける者がおらず、台風でガラスが割れたり、室外機が損傷しても誰も修理しない。そのようなことが続けばマンション全体が知らずの内に毀損し、価値が下落してしまうおそれが生じます。
名義上のオーナーは連絡がつけば対処可能
不動産の価格高騰に伴い、マンションを居住目的ではなく、投資目的で購入するオーナーが増えています。こうしたオーナーはマンションには居住しないため、上記のような管理問題が生じます。
ただ、マンションオーナーに連絡がつき、管理費を欠かさず支払っているのであれば、私はこのリスクはそう大きくなく、年1回で良いので管理会社または理事会メンバーの立ち会いのもと設備点検を行えば足りると思います。
また、投資目的である以上、賃貸に出す可能性も高く、そうすれば借主が管理するためやはり問題はありません。名義上のオーナーは連絡がつく限りマンション管理に及ぼす支障はあまりなさそうです。
所有者不明・連絡不通のケース
問題なのは借主がいないだけの物件ではなく、所有者が相続発生によりわからなくなったケースや、所有者と連絡がつかないケースです。
前者はマンションに限らず全国的に空き家問題で大きな課題となっており、所有者の不慮の事故などで相続が発生した場合、当該物件を誰が管理するのかが外部からはわかりにくく、誰も管理しなければマンション価値の毀損につながります。
このほか、所在不明であったり、外国や病院に常時いて管理不能なケースも同様で、管理費が支払われない可能性や、物件がいわゆる「ゴミ屋敷」として放置されている可能性も考えられます。
空室税がマンションの治安や安全・清潔性の管理に主眼を置くのであればこうした連絡がつかず管理行為のできない所有者に課税のうえ、管理費と合わせて物件差し押さえをスムーズにできる体制作りが必要と考えられます。
「空室」の定義は難しい
空室税を導入するとしても、税金の対象を定義するのはなかなか困難です。固定資産税とどう棲み分けるかも難しいですし、何を持って「空室」と定義するのか。家具などの有無で判断するのか、住民票の有無で判断するのか、居住者の長期の海外旅行や入院はどう対応するか。民泊はどう扱うかなど、適正な対象に適正な金額の課税を行うには法律の組み立てが非常に難しいと想定されます。
まとめ
空室税はマンションの居住率を高めて維持管理を促進する。その目的は正当ですが、どうした対象にどの程度の課税をするかは非常に難しい問題があるため、向こう数年で急進展する可能性は低いと考えられます。
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