カールのパクリ商品が登場。効果的な対策を探る

知財戦略

カールのパクリでは?という商品を大手が堂々販売

明治ウェブサイトより引用

東ハトウェブサイトより引用

カールといえばほぼ全世代が知っているスナック菓子。私も小学生の社会見学で明示の工場へ行き、チョコレートとカールをもらってみんなでわいわい食べたのを覚えています。
そんな人気商品カールですが、メチャクチャ似ている商品が流通し、「パクリではないか?」と話題になっています。零細企業が大手企業の商品コンセプトをパクるのは常套手段なのですが、今回対商品を出してきたのは、大手の東ハトです
大手企業はコンプライアンス体制が整備されており、顧問弁護士も複数抱えている企業も多く、法令チェックには余念がありません。では、この東ハトのパックルは本当に問題ないのか、本稿ではその分析と明治側の対策について紹介します。

「何」をパクったのか、その特定が9割

自社商品をパクられたと主張する場合、何をパクられたかの特定が重要です。それにより、検討すべき法令が変わってしまい、要件や対策も全然異なるためです。
そこで、上記の2つのパッケージを見比べると、以下の点でかなり似ています。
・全体的に黄緑の背景の上に中央に大きく商品名
・左上に企業名
・背景に類似した計上の商品画像
・右上に「サク!」という触感表示
・商品名の下でチーズ味の強調
・右下にチーズ味の表示
パッケージ全体や商品の形状はかなり似ており、物議を醸すのは当然です。では、どの法令に抵触するかというと、これがなかなか難題です。

一番確率が高いのは不正競争防止法

パッケージや商品形状が似ているので、最も明治側が主張しやすいのは不正競争防止法です。同法では、権利として登録されていない著名表示を守るルールが規定されています。
では、同法を分析していくと、カールというお菓子は国内では知らない人間はほとんどいない超有名商品です。しかし、カールの形状やパッケージまで有名かと言うと、裁判で争うとどのように立証するかが悩ましいところです。
ここは、私は明治側が立証できると思いますが、では、両者のパッケージは本当に似ていて、消費者には見分けがつかないかというと、かなり似ていますが、さすがにカールを食べたい人が間違ってパックルを買ってしまう可能性は低いのではないかと思われます。
この要件が難しく、不正競争防止法での主張は苦しい、と予想され、東ハトの法務担当者もそこをついた戦略を選んだと考えられます。

その他法律は嵌れば手堅いが・・

そのほかに考えられる法律構成ですが、商標法は、ここで主張できれば強いのですが、お菓子名が異なるため、無理筋です。意匠法もこの形状がカールというわけではないため、難しいでしょう。
パッケージの類似を見るなら著作権法の主張が考えられます。しかし、著作権侵害というためには、侵害者が侵害品に依拠したことが必要ですが、その立証が困難です。
こうして、知的財産権侵害は様々なルートを用意してはいるのですが、主張しやすい構成はそれなりに顕著な特徴や、一定の手続を要求されるため、どのルートで考えても手詰まりになりやすく、訴訟の際位に主たる法律構成を考えるうえで大変難儀です。

商品の作りこみを大事に

これだけパッケージが似ているのに法律上攻めきれない最大の理由は、パッケージを作成する際に、同業他社にパクられる可能性を意識していないためです。当時はまだ昭和。お菓子業界の競争は激しかったですが、パッケージをパクるという発想はまだまだありませんでした。
今ではこうして法律の間隙をついて堂々と大手事業者がライバル業者の主力商品をパクる時代です。外資相手であればもっと鋭い切り込みがあるでしょう。
こうした状況で、企業がその正当な権利を守るためには、商品設計段階での徹底した作りこみが大事です。カールであれば、なぜその名称なのか、なぜその形状なのか、なぜそのパッケージデザインなのかを徹底して作りこめば、競合他社がそれと同じくする理由がどんどんなくなって不自然で、パクリ疑惑が強まります。これからはそうした面も考えながら商品設計をする必要が増していくでしょう。

まとめ

カールは私も子どものころから思い入れのある商品で、きちんと明治側の主張が通ってほしいと思いますが、東ハトもかなり鋭いところを攻めており、この件が訴訟になるとどちらに転ぶかわからない、出たとこ勝負になりそうです。それは要は訴訟リスクであり、事前に回避するのがセオリーです。
このようなパッケージなど、あまり重点的に作りこんでいない部分についてのパクリは今後も増加しそうで、知財専門家と相談して対策を練る必要があります
当研究所では、特許庁勤務経験もある弁理士・弁護士が、御社の知財戦略、さらにはそれを高度化した知的資産経営の実現を全方位でサポートいたします。下記よりお気軽にご相談ください。

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました