真実は他人に頼らずに自ら辿り着かなければリスクがいっぱい【弁護士×MBAが解説】

リスクマネジメント

何が真実であるかの判断は難しい

情報があふれる現代において、何が真実なのかを判断することは一段と難しくなっています。特にインターネットやSNSが普及したことで、誰もが情報の発信者になり得る社会となり、情報の質や正確性のばらつきが非常に大きくなりました。新聞やテレビのような従来型メディアであれば編集部による一定のチェックが働いていましたが、現在ではそのようなフィルターのない情報が瞬時に拡散され、真偽不明のまま多くの人の認識を左右してしまうことも珍しくありません。したがって、今まで以上に「情報を受け取る側の判断力」が求められる時代になったと言えます。
例えば、中国による日本への渡航自粛要請に関するニュースを見ても、報道の切り取り方によって印象は大きく異なります。一部のメディアは「観光業への大打撃」「地方経済の深刻な損失」と報じる一方、別の報道では「観光客の多様化により長期的には良い傾向が見える」「過度な一市場依存からの脱却が進む」と、むしろ肯定的に取り上げるケースもあります。このように、ひとつの事象であっても見せ方によって結論が大きく変わってしまうことから、情報の受け手はそのまま信じ込むのではなく、複数の情報源やデータを比較し、自分自身で納得できる結論を導く姿勢が重要になります。
真実を見誤ると、他人に騙されるリスクだけでなく、自分が他人を誤らせてしまう危険も生じます。特にビジネスにおいては、誤った事実を前提に判断したことで契約や投資などの重大な意思決定を誤り、大きな損害につながることすらあります。それだけに、ファクトチェックの重要性は日々増しています。そこで本稿では、情報を正しく扱うために必要なファクトチェックの考え方や、そのスキルを高める方法を整理し、真実を自らつかみ取るための視点を紹介します。

真実を見誤ると騙される

真実を正しく見極められないと、誰しもが容易に騙されてしまいます。営業の電話を例に取ると、その構造がよく理解できます。営業電話の担当者は、商品やサービスの良さを強調し、相手にとって魅力的に聞こえるように巧みに説明します。その話だけを聞いていると、「これはとても良い話だ」「お得に違いない」と感じてしまうことが少なくありません。しかし、そこには必ず意図的な“切り取り”が存在します。すなわち、ネガティブな側面や不利な条件は可能な限り見せないようにし、相手が飛びつきたくなる部分だけに光を当てて説明するのです。このような説明を鵜呑みにして商品やサービスを購入すると、実際には説明されていなかった不利益や追加コストが発生し、結果として損をしてしまうケースが後を絶ちません。
また、もっともらしい話をするコンサルタントも数多く存在します。彼らはデータを見せているかのように装いますが、実際には「どのデータを使うか」「どの期間を切り取るか」「どの比較対象を示すか」によって、結論はいくらでも変えることができます。極端な例を言えば、同じ企業の業績であっても、成長しているようにも見えるし、悪化しているようにも説明できてしまいます。これは、情報の切り取り方次第で印象を大きく変えることができるからであり、裏を返せば、他人の示す結論をそのまま信じるのは非常に危険であると言えます。
結局のところ、真実が何であるかという最も根幹の判断を他人に任せてしまうと、相手の意図や視点に自分の判断が左右されてしまいます。相手は必ずしも悪意を持っているとは限りませんが、相手の価値観や目的が自分と一致しているとは限らない以上、判断を預けることは極めてリスクが大きい行為といえます。他人の言葉をそのまま受け止めるのではなく、自ら情報を確認し、事実を自分の頭で整理する努力こそが、自分自身を守るために欠かせないプロセスになります。

他人を騙してしまうおそれが大きい

真実を確認しないまま行動してしまうと、知らず知らずのうちに自分が他人を騙してしまう危険があります。これは単純に「誤情報を信じてしまった」だけでは済まされない問題です。情報の扱い方を誤ると、結果として刑事責任を問われる場合さえあるため、軽視はできません。
例えば、特許出願を弁理士に依頼したとします。そして、その弁理士から「特許が取れました」と口頭で説明を受けたと仮定します。ここで、しっかりと特許証を確認したり、特許庁のデータベースで番号を照会したりすることなく、「特許取得済みの技術です」として新事業の出資を募った場合を考えてみてください。もし実際には特許が正式に登録されていなかった場合、この行為は出資者を誤導している点で重大な問題を生じさせます。悪意がなかったとしても、虚偽の事実を示して金銭を集めたことになり、場合によっては詐欺罪が成立する可能性すらあります。つまり、真実の確認を怠っただけで、自分が加害者となってしまいます。
このような事態を避けるためにも、真実であるかどうかを確認する作業は他人任せにするべきではありません。特に法的な効果や金銭のやり取りが伴う事柄においては、裏付けとなる一次情報を自らチェックし、「本当にそうなのか」を徹底的に確かめる必要があります。特許に限らず、契約、登記、財務情報、人事記録など、法律上の重要な判断に関わる情報は、必ず自分の目で一次資料を確認する習慣を持つべきです。真実を確認しないまま他人に何らかの説明をしてしまえば、それは無自覚であっても結果として「他人を騙す行為」になります。こうしたリスクを避けるためにも、ファクトチェックは自分自身だけでなく、周囲を守る意味でも欠かせないものです。

経験則を磨け

真実を正しく把握するためには、経験則を磨くことが非常に役立ちます。経験則とは、過去の経験を通じて「一般的にはこうなる」「平均的にはこの程度である」といった感覚的な基準のことです。これは決して絶対的なものではありませんが、物事が常識から大きく外れているかどうかを判断するための大切な指標になります。経験則があれば、「これは本当にあり得る話なのか」「普通ならどう考えるべきか」という基準が自然と身につき、騙されにくくなるだけでなく、自分が誤判断する可能性も減らすことができます。
例えば、投資話や新規事業の提案を受けた際、「短期間で必ず大きな利益が出る」「ノーリスクで利回り10%以上」といった説明をされることがあります。しかし、経験則として、ノーリスク高利回りという投資は現実には存在しないと理解していれば、こうした話を疑う土台ができます。経験則とは、まさにこのように「普通であればどうか」を考えるための基準を提供してくれるものです。
また、経験則から外れる事象があれば、そこには必ず理由があるはずです。外れている理由が合理的に説明できるかどうかを確認することも、真実を見極めるための大切なプロセスになります。経験則が役立つのは、日々の観察と考察を通じて少しずつ蓄積していく点にあります。日常生活の中でも、ニュースやデータを見た際、「これは普通だろうか」「今までの経験と比べてどうか」と意識的に考えることが、経験則を磨くための訓練になります。これにより、情報を受け取ったときに違和感を持てるようになり、ファクトチェックをする際の重要な手がかりを得られるようになります。

新しい情報を積極的に入手する

経験則は重要ですが、それだけでは真実を正しく判断することは難しくなってきています。なぜなら、社会や技術が急速に進化し、今までの常識が通用しなくなるケースが増えているからです。したがって、最新の情報を積極的に取り入れ、経験則をその都度アップデートする姿勢が求められます。
新しい情報を取り入れる際には、信頼できる情報源を複数確保することが重要です。公的機関が発信する統計データや公式発表、学術的な研究成果、一次情報に近いレポートなどは、比較的信頼性が高く、事実確認の基礎となります。また、専門家の解説や複数メディアの情報を照らし合わせることで、より立体的かつ中立的な視点を持つことができます。
情報を更新することによって経験則も同時に進化していくため、真実に近づくための判断力が大幅に向上します。例えば、技術の進歩によって今まで不可能とされていたことが可能になった場合、それを知らないまま判断すると誤った結論に至ってしまうかもしれません。同様に、経済政策や国際情勢が変わることで、過去の経験がそのまま当てはまらなくなることも多くあります。だからこそ、最新の情報と過去の経験を組み合わせて判断することが、現代における最も基本的なリスクマネジメントと言えるのです。

まとめ

真実を見極めるためには、他人に依存するのではなく、自ら主体的に情報に向き合う姿勢が欠かせません。情報が氾濫する現代では、誰もが容易に誤情報に触れる可能性がありますし、自分自身が誤った認識を広めてしまうリスクさえあります。だからこそ、ファクトチェックという行為は単なる作業ではなく、日々の生活や仕事を安全に進めるための重要な自衛手段なのです。
真実を他人に委ねることは、判断を他人の価値観や意図に預けてしまうことに等しく、自分の意思決定を大きく誤らせる原因になり得ます。営業トークやコンサルタントの説明は、その場ではもっともらしく聞こえても、必ずしも全体像を示しているとは限りません。また、確認を怠ることで、自分が意図せず他人を誤導してしまう危険もあり、責任問題に発展することもあります。これらのリスクを避けるためにも、一次情報を確認する姿勢と、情報の裏側を冷静に見る習慣が重要です。
さらに、経験則を磨き、過去の知識や常識を基盤として違和感を察知できる力を持つことも大切です。しかし、それだけに頼るのではなく、新しい情報を積極的に取り入れることで、自分の判断基準を随時アップデートしていく必要があります。時代の変化が激しい現代においては、過去の常識がそのまま通用しないことも多いため、経験と最新情報の両方を組み合わせて判断することが、最も安全で効果的な方法になります。
最終的には、真実を自らの手で確かめ、自分の頭で考え、納得できる判断を下すことが、自分自身と周囲を守る最大のリスクマネジメントになります。他人任せの姿勢を捨て、主体的に情報と向き合う習慣を身につけることが、これからの時代における最も確実な生き抜き方だと言えるでしょう。
当研究所では、マニュアル的に物事を処理するのではなく、常に何が真実であるかを議論し、最善の課解決策を模索します。下記よりお気軽にご相談ください。

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