町の洋菓子屋が減少傾向
近年、商店街や住宅街の一角にあった町の洋菓子屋が姿を消す光景が目立つようになっています。かつては地域の誕生日やクリスマスなどの行事に欠かせない存在であり、地元の人々が集う場所としても親しまれてきました。しかし現在では閉店に追い込まれるケースが少なくなく、街の風景から洋菓子屋が失われている現実があります。
一方で、洋菓子そのものの人気が衰えているわけではありません。全国的に見てもスイーツ市場は依然として拡大傾向にあり、テレビやSNSで紹介される新しいケーキや焼き菓子は多くの人の関心を集めています。つまり、需要自体は存在しているにもかかわらず、町のケーキ屋が減少しています。
その背景の一つに、これまで成立していたビジネスモデルの崩壊があります。従来、洋菓子屋はショートケーキやモンブランなど定番の生菓子を並べて客を呼び込み、さらに日持ちのする焼き菓子を販売することで固定客を確保してきました。この仕組みは長らく安定的に機能していましたが、近年はその構造自体が揺らいでいます。
ショートケーキなど定番商品はコンビニやスーパーでも簡単に手に入るようになり、しかも低価格で一定の品質を保っています。そのため「特別なときは町のケーキ屋へ」という意識が薄れ、消費者の購買行動が分散してしまいました。さらに、贈答用や手土産としての焼き菓子の需要も通販や大手ブランドに吸収されつつあります。
このように、洋菓子の需要は確かに存在しているのに、町の洋菓子屋がその恩恵を受けにくい状況が生じています。町のケーキ屋が生き残るためには、従来の延長線上ではない新たな視点が必要となっています。そこで本稿ではこうした町のケーキ屋が生き残る対策の方向性を紹介します。
原価の高騰
町の洋菓子屋を取り巻くもう一つの厳しい環境要因として、原材料費の高騰があります。洋菓子作りに欠かせない小麦粉やバター、生クリーム、チョコレートなどの食材の多くは輸入に頼っています。近年は為替の変動や海外の需給バランスの影響で価格が大幅に上昇しており、店舗経営に直接的な打撃を与えています。
さらに問題を深刻化させているのが輸送コストの増加です。国際的な物流網の混乱や燃料価格の高騰により、食材が店に届くまでの運搬費用もかさんでいます。これに加えて電気代や包装資材費など、洋菓子製造に伴うあらゆる原価がじわじわと上がっており、小規模事業者ほど圧迫感を強く感じがちで、小手先の工夫で経費を削るだけでは限界があり、現実的な対応策は非常に限られています。
一方で、安易な価格転嫁も難しい状況です。町のケーキ屋は地域の住民に支えられているため、価格を大幅に引き上げれば客離れにつながるリスクがあります。かといって現状維持を続ければ利益はますます圧縮されてしまうという板挟みの状態に陥りがちです。
このように、原価の高騰は町の洋菓子屋にとって大きな経営課題となっており、従来型のやり方だけでは対応が困難な状況となっています。日々の仕入れ一つにおいても、いかに工夫して対応するかが問われています。
競合分析
町の洋菓子屋が直面する課題を考えるうえで、競合の存在は無視できません。まず注目すべきは、都心部の人気洋菓子店です。そこではいわゆる「映える」商品が豊富に揃っており、SNSに投稿されることを前提にしたデザイン性の高いケーキやパフェが次々と登場しています。こうした店は集客力が非常に強く、休日ともなれば行列が絶えません。
一方で、町の住民にとって身近な存在であるコンビニも大きな競合です。セブンイレブンやローソンなどの大手コンビニチェーンは、自社の規模を活かして高品質かつ低価格の商品を展開しています。洋菓子だけでなく和菓子やスナック菓子も取り揃えており、ちょっとした甘いものを買いたい消費者にとって強力な選択肢となっています。
コンビニの強みは、規模の経済を背景にしたコスト削減能力にあります。原料の大量仕入れや流通網の効率化によって、町の小規模店では到底かなわない価格帯で商品を提供できます。さらに、季節ごとやキャンペーンに合わせて新商品を頻繁に投入するため、常に消費者の関心を引きつける仕組みを持っています。
こうした状況下で、町の洋菓子屋が同じ土俵で戦おうとすれば不利は明らかです。都心の人気店のように大規模な広告や商品開発を行うことは難しく、またコンビニのような価格競争にも対応できません。そのため、町の洋菓子屋が生き残るためには競合との差別化が不可欠です。
つまり、他店が提供していない価値や体験を顧客に提供することこそが、今後の町の洋菓子屋にとって重要な戦略となるのです。
新商品開発の方向性
町の洋菓子屋が顧客を惹きつけるためには、新商品の開発が避けて通れません。従来のショートケーキやプリンといった定番商品は一定の需要がありますが、それだけでは購買意欲を高めるには限界があります。消費者の目を引きつけるためには、今の時代に合った付加価値が求められています。
特に意識すべきなのは、SNSを通じた拡散効果です。都心の人気店ほどの派手さは必要ありませんが、見た目に工夫を凝らした「映える」商品を開発することは有効です。例えば、カラフルなフルーツを大胆にあしらったケーキや、季節感を取り入れた限定デザインのスイーツは、思わず写真を撮りたくなる存在となり、自然と宣伝効果を生み出します。
また、大量生産を前提としたコンビニ商品との差別化も重要です。コンビニは数万単位で同じ商品を製造するため、どうしても均質化が避けられません。これに対して町の洋菓子屋は、小規模であるからこそ「一日限定〇個」といった特別感を演出できます。限定感のある商品は消費者に「今買わなければ」という心理を呼び起こし、購買行動を促す力を持っています。
さらに、新商品開発では他店が手をつけていない隙間を狙うことが大切です。例えば、地元産の果物や食材を使用したケーキ、健康志向を取り入れた低糖質スイーツなどは、大手ではすぐに対応できない分野です。地域性や独自性を反映した商品は、固定客を作るうえで大きな強みになります。
こうした工夫によって、町の洋菓子屋は「ここでしか買えない」という魅力を作り出すことができます。
コストと距離を考える
町の洋菓子屋が戦略を立てる際に忘れてはならないのが、自らの立ち位置です。基本的には、近隣の住民が気軽に訪れて購入できる商品を提供することが原点にあります。遠方から人を呼び込むことを前提にするのではなく、地域に根ざした店としての役割を果たすことが重要です。
そのため、都心部の有名洋菓子店とは競争関係に立たないことを意識する必要があります。豪華な装飾やブランド力を持つ店と張り合うのではなく、生活圏の中で選ばれる存在になることが求められます。
また、身近な競合としては近隣のコンビニや和菓子屋があります。これらの店舗がどのような価格帯で商品を提供しているか、どのような顧客層をターゲットにしているかを調査することが不可欠です。そのうえで、自店の商品ラインナップを調整し、距離と価格を組み合わせて「手軽に買えるのにちょっとお得感がある」ポジションを築くことが望ましいといえます。
ただし、単に価格で勝負するのは危険です。規模の小さい町のケーキ屋がコスト競争で勝てる可能性は低いため、あくまで品質を軸に据えるべきです。例えば、生クリームの鮮度やスポンジの食感など、細部にこだわった改良を積み重ねることで「やはりここで買うと美味しい」と感じてもらうことができます。
つまり、地域に根ざした存在であることを自覚しつつ、コストと距離のバランスを意識して商品と価格を設計することが、町の洋菓子屋にとって生き残りの要となります。
まとめ
町の洋菓子屋は現在、原材料の高騰や競合の多様化といった厳しい環境に置かれています。かつては定番商品の販売で安定的に経営が成り立っていましたが、今ではそのビジネスモデルが通用しなくなりつつあります。その一方で、洋菓子市場そのものは依然として人気が高く、需要は確実に存在しています。つまり、危機と可能性が同居している状況だといえます。
生き残りの鍵となるのは、自店の特徴を活かした差別化と、地域に根ざした商品設計です。都心の人気店やコンビニと同じ戦い方をするのではなく、小規模であることの強みを生かし、「ここでしか買えない」という価値を提供することが求められます。そのためには、新商品の開発や品質の徹底した改良、価格と距離のバランスを考えた経営が重要です。
町のケーキ屋は決して時代遅れの存在ではありません。むしろ、地域の暮らしを豊かにする大切な要素であり、工夫次第で十分に活路を見いだすことができます。視点を少し変えるだけで、倒産のリスクを乗り越える可能性が広がっていくでしょう。
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