持っているだけでは意味がない。リソースは戦略的に活用せよ【公認会計士×MBAが解説】

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内部留保が潤沢なのは安心だが・・

日本企業は国際的に見ても内部留保が多いと言われています。内部留保とは、企業が事業活動を通じて得た利益のうち、株主への配当や従業員への賞与などに分配せず、社内に蓄積した資金を指します。これは一種の企業の貯金のようなものです。内部留保が潤沢であるということは、企業が安定的に収益をあげ、かつ浪費をせずに堅実な経営を続けている証拠ともいえます。実際、バブル崩壊やリーマンショックなどの経済危機を経て、資金繰りの重要性を痛感した日本企業が内部留保を重視してきた歴史的背景も存在します。そのため、多くの企業が安全性を優先して資金を積み上げてきました。
しかし、内部留保が多いということは、同時に資産の運用効率が悪いことを意味する場合もあります。銀行口座にただ眠っている資金は、インフレが進めば実質的な価値を失っていきます。また、低金利環境下では銀行預金から得られる利息はごくわずかであり、企業の成長に寄与することはほとんどありません。つまり、安心感を得られる一方で、積極的に動かさなければその資産は実質的に停滞してしまうのです。
企業にとって大切なのは、資金を単なる安全網として確保することだけではありません。資産は戦略的に活用することで初めて成長の糧となります。どれほどの資源を持っていても、それを効果的に使わなければ企業価値は高まりません。そこで本稿では、このように「持っているだけでは意味がない」という前提に立ち、資産やリソースをいかに戦略的に運用すべきかを考えていきます。

企業にプラスを生じさせるためには

資産は、ただ保有しているだけでは企業にプラスの価値をもたらしません。最近では日本でも金利上昇の兆しが見え始めていますが、それでも銀行預金などの金融資産が企業に十分なリターンをもたらすとは限りません。経済は常に変動し、資金を動かさなければ成長の機会を逃してしまいます。したがって、企業が持つリソースを最大限に活かすためには、戦略的な投資が不可欠となります。
投資とは、狭い意味では株式や債券などの金融商品への資産運用を指しますが、企業経営においてはもっと広義に解釈する必要があります。例えば、新しい工場や設備への投資は生産力の拡大につながります。人材への投資は、社員のスキルアップを促し、長期的には組織全体の競争力を高める効果があります。研究開発への投資もまた、新しい商品やサービスを生み出す土台となります。このように、投資には多様な形が存在し、それぞれが企業の未来を形作る重要な要素となります。
重要なのは、単に資金を投じることではなく、「いくら投資して、その結果として何を得るのか」を明確に精査することです。費用対効果をしっかりと測り、貪欲により大きなリターンを追い求める姿勢が必要です。特に変化の激しい現代においては、一度の投資で満足せず、絶えず成果を検証し、次のステップへと資源を再投入するサイクルを回すことが欠かせません。資産は活かしてこそ力を持ち、停滞すれば企業の成長は鈍化します。したがって、投資は戦略的に、かつ継続的に行うことが企業の未来を決定づけます。

ゴールドを持ち続けることの意味

金(ゴールド)は古来より普遍的な価値を持つ資産とされ、現代でもその信頼性は揺るぎません。近年では価格が上昇を続け、資産防衛の手段として多くの投資家がゴールドを選んでいます。持ち続けるだけで資産価値が高まっていくように見えるため、安心感を覚える人も少なくないでしょう。
しかし、ゴールドの保有はリスクと隣り合わせでもあります。第一に、ゴールド自体は株式や債券のように利息や配当を生みません。つまり、持ち続けている間は何のリターンも得られないのです。資産が眠っている状態は、他の収益機会を失っていることを意味します。第二に、将来的に価格が下落する可能性も否定できません。世界経済の動向や金融政策、需要と供給のバランス次第で、ゴールドの価値は変動します。長年積み上げてきた資産も、市場が大きく動けば一気に価値を失ってしまうリスクがあるのです。
重要なのは、ゴールドを保有すること自体をゴールにしてはいけないということです。資産をどう運用し、いつ、どのように売却するかを考えることが本質です。ゴールドが値上がりしている局面で適切に売却し、その資金を新しい投資や事業に活かすことで初めて本当のリターンが得られます。つまり、資産を「持つ」ことに満足せず、「どう使うか」を明確にする視点が求められます。資産は生かされてこそ価値を持ち、戦略的に活用してこそ企業の成長につながります。

KPIを明確に

戦略的に資産を活用するためには、成果を測る指標を設定することが欠かせません。そのために有効なのがKPI(重要業績評価指標)です。KPIを設定することで、投資がどの程度の成果を生んでいるのか、また期待した方向に進んでいるのかを数値として把握できます。これにより、経営判断の精度を高めることが可能になります。
特に注意すべきは、投資には金銭的価値だけでは測れないリターンが多いという点です。例えば、人材育成への投資は短期的な利益には直結しないかもしれませんが、将来的に大きな競争力を生み出します。このようなリターンを正しく評価するためには、自社が何を重視すべきかを整理することが大切です。売上や利益率といった定量的指標だけでなく、従業員満足度や顧客ロイヤルティといった定性的なKPIも組み合わせることで、投資の真価を見極めやすくなります
また、優先順位は時代や市場の状況によって変化します。かつては製造コスト削減が最重要であったとしても、現在では環境対応やサステナビリティのほうが優先されるかもしれません。そのため、KPIは一度決めたら固定するのではなく、柔軟に見直す必要があります。状況に応じて適切な指標を採用し、常に最適なリターンを追求することが求められます。KPIは単なる数値管理ではなく、経営戦略の羅針盤として活用すべき重要なツールです。

ストックよりもフロー

企業の価値を判断する際、重要視されるのは単なる資産規模ではありません。例えばM&Aの現場では、買収先企業の評価においてバランスシート(BS)に記載された資産よりも、損益計算書(PL)に示される収益力が注目されます。つまり、「何を持っているか」ではなく「どれだけ稼げるか」、さらに「その利益がどれほど再現性を持っているか」が評価の中心になります。
これは、企業経営においても個人の資産管理においても同様です。たとえ潤沢なストック(資産)を持っていたとしても、それを活かして持続的にフロー(収益)を生み出せなければ長期的な成長は望めません。資産は時間の経過とともに減少したり価値を失ったりすることがあるため、それを効率的に運用し、安定した収益につなげることが何よりも重要なのです。
したがって、リソースを持っていること自体に満足するのではなく、それをどれだけ高い効率で運用できるかに焦点を当てる必要があります。たとえば、豊富な人材を抱えていても、活躍の場を与えなければ能力は埋もれてしまいます。逆に、限られたリソースであっても、的確に運用すれば大きな収益を生むことができます。持続的な成長には、資源を「動かす」視点が不可欠であり、フローを生み出す仕組みづくりこそが鍵を握ります

まとめ

本稿では、資産やリソースを「持つこと」だけに意味を見出すのではなく、「戦略的に活用すること」が重要であると述べてきました。日本企業は内部留保を積み上げ、安全性を高める一方で、その資産が十分に成長へ結びついていないという課題を抱えています。資産は保有するだけでは企業価値を高めず、戦略的な投資や運用を通じて初めて成果を生みます。
ゴールドの例に見られるように、持ち続けるだけではリターンはなく、いつ、どのように使うかを見極めなければなりません。そのためには、KPIを設定して投資の効果を測定し、変化する環境に応じて柔軟に指標を見直すことが重要です。さらに、資産の規模そのものよりも、どれだけのフローを安定的に生み出せるかが本質的な価値を決定します。
結局のところ、リソースは戦略的に活用してこそ意味があります。安心感にとどまらず、積極的に運用する姿勢が企業の持続的な成長を支えるのです。持っていることに安住せず、絶えずリターンを追求する姿勢を持つことこそが、現代における経営の必須条件だといえるでしょう。
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