家庭での食品ロスで最も多いのは野菜
昨今、食品ロスの問題は社会的に大きな関心事となっています。国や自治体も削減目標を掲げ、企業や家庭に対して様々な取り組みを呼びかけていますが、実は私たちの家庭で最も多く廃棄されている食品は野菜だといわれています。肉や魚などの高価な食材に比べると野菜は一つ一つの単価が低く、「少しくらい残しても仕方がない」と感じてしまう方も多いかもしれません。しかし、家庭内で捨てられる野菜の量を集計すると、全食品ロスの中でもかなり大きな割合を占めているのです。
食品ロスは単に資源の無駄遣いというだけでなく、環境負荷の面でも問題視されています。廃棄物の処理には多くのエネルギーが必要であり、焼却によるCO₂排出も避けられません。今後の人口増加や気候変動を考えると、限りある農作物を有効活用することがますます重要になります。野菜の食品ロスを減らすことは、家計に優しいだけでなく、社会全体の持続可能性にもつながる大切なテーマといえるでしょう。そこで本稿では、なぜ野菜のロスが多くなってしまうのか、どのようにすれば減らせるのかを、具体的に考えてみたいと思います。
調理が面倒・分量も余りがち
野菜が家庭で多く廃棄されてしまう背景には、調理の手間と分量の問題があります。例えばキャベツや白菜といった大型の野菜は、一度に使い切るのが難しく、どうしても冷蔵庫で余りがちです。買った当初は新鮮でみずみずしいのに、何度か料理に使ったあと残った部分を使い切れず、結局冷蔵庫の奥でしなびてしまうという経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
また、野菜を調理するには皮を剥いたり、切ったり、下茹でをしたりといった手間がかかります。忙しい平日には、ついつい調理の簡単な肉や冷凍食品、レトルトに頼ってしまい、結果として買った野菜が消費されないまま時間が経ってしまうことが多いのです。こうした状況は家庭だけにとどまらず、飲食店でも同様の課題があります。お客さんの注文状況によっては野菜が余り、使い切れないうちに廃棄せざるを得ない場合があります。
野菜は健康のために積極的に摂りたい食材であるにもかかわらず、調理の面倒さと分量の問題が壁となっている現状は非常にもったいないことです。だからこそ、食品ロスを減らしながら利益を上げるためには、これらの問題をいかに解決するかがポイントになります。
価格が不安定で計画消費しにくい
野菜が廃棄されやすいもう一つの理由として、価格が不安定で計画的に消費しづらいという特徴が挙げられます。野菜は農作物である以上、天候や気候条件に大きく左右されます。台風や長雨、猛暑、寒波など自然災害が起きれば収穫量は大きく変動し、価格も乱高下します。普段は安価で手に入るキャベツやレタスが一玉数百円に高騰することも珍しくありません。
消費者の立場からすると、価格が安いときは「今のうちに買っておこう」と多めに購入しがちです。しかし、いざ使い切れずに傷ませてしまえば、せっかく安く手に入れたつもりが結果的にはロスを生んでしまいます。一方で、価格が高騰すると購入を控える人が増え、店頭での売れ残りや農家での出荷調整が発生するなど、流通段階でも無駄が生じます。このように、野菜は消費者にとっても生産者にとっても計画的に安定消費するのが難しい商品です。
しかし見方を変えれば、この不安定さをいかに平準化するかが、食品ロスを減らす大きなカギになります。計画的な仕入れと消費のバランスを整え、需給のミスマッチを減らすことで、廃棄を減らしながら安定した利益を確保できるのです。
消費しやすい量をパックで供給
こうした課題を解決する一つの方法が、消費者にとって調理しやすく、使い切りやすい形で野菜を供給することです。例えば、契約農家と連携して収穫量を調整し、旬の野菜を安定的に仕入れることで、まず価格の変動をできるだけ抑えます。さらに、小分けカット野菜や使い切りサイズのパック野菜として販売することで、家庭での調理負担を軽減できます。
最近ではスーパーやコンビニでも、カット野菜やサラダパックが多く見られるようになりました。これらはまさに「調理が面倒」「分量が余る」という課題を解決する商品です。忙しい方でも手軽に野菜を食卓に取り入れられ、無駄なく使い切れるため食品ロス削減に直結します。
さらに、飲食店向けにも予めカットされた業務用パックを供給することで、調理時間の短縮とロス削減を同時に実現できます。契約農家と直接取引をすることで中間マージンを抑えつつ、生産者の収入も安定する仕組みを築ければ、まさに消費者・事業者・生産者の三方良しのモデルとなるでしょう。
健康訴求の加工品を開発
もう一つの有効な取り組みとして、余剰の野菜を活用した健康志向の加工品開発があります。野菜はビタミンや食物繊維が豊富で、健康維持に欠かせない食材です。しかし、生鮮のままだと調理の手間や鮮度の問題でロスが生じやすい一方、加工品として新たな付加価値をつければ保存性が高まり、食品ロスの削減と利益の確保を両立できます。
例えば、規格外の形や大きさの野菜をスムージーやジュースに加工して販売する取り組みは各地で広がっています。その他にも、野菜チップス、ピクルス、冷凍野菜ミックス、スープの素など、健康を意識した商品は多様な形で展開可能です。
健康志向が高まる現代において、「手軽に野菜が摂れる」「不足しがちな栄養素を補える」という点は大きな訴求ポイントになります。廃棄のリスクが高い野菜を加工品として有効活用することで、食品ロスを減らしつつ新たな顧客層を開拓でき、結果として売上アップにもつながります。
まとめ
野菜の食品ロスを減らしながら利益を増やすためには、調理の負担や分量の問題、価格変動の不安定さといった根本的な課題を正しく理解し、計画的な供給と消費の仕組みを整えることが重要です。今年の米騒動のように、野菜の価格が高騰してから慌てて探しても思うように調達できないような事態になっては困ります。だからこそ、契約農家との連携や加工品開発などを通じて、余剰分を無駄なく活用し、家庭でも事業者でも扱いやすい形で供給する取り組みが求められます。
食品ロスを減らすことはコスト削減や環境保全にとどまらず、安定した売上を確保するための利益向上策でもあります。消費者にとっても「野菜をもっと食べたいけど面倒」というハードルを下げることは、健康増進に直結するメリットです。生産者、販売者、消費者それぞれの立場で「野菜を無駄なく食べきる仕組み」を意識し、持続可能な野菜の流通を目指すことが、これからの食のあり方に必要な視点だといえるでしょう。
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