資金繰りを借入に依存し過ぎると倒産リスクが高い
中小企業の経営において、資金繰りは最も重要な要素の一つです。しかし、売上の回収が遅れたり突発的な支出が発生したりすることで、一時的に資金繰りが苦しくなることは珍しくありません。その際、つい安易に追加融資を受けて資金繰りをしのごうとする経営者も多いのが現実です。ところが、資金繰りを借入に依存し過ぎると、いわゆる自転車操業に陥りやすくなります。一時的な資金不足を補うはずの借入が慢性化し、次の返済がまた新たな借入でしか賄えなくなる悪循環に陥るのです。
こうした状況は金融機関にとっても大きなリスクです。貸したお金の回収が困難になる可能性が高いため、金融機関は自転車操業の兆しが見える企業には貸し渋りや貸しはがしを行わざるを得なくなります。これが結果として企業の資金繰りをさらに圧迫し、最悪の場合は倒産につながることも少なくありません。そこで、本稿では金融機関がどのようなポイントを見て与信管理を行っているのか、そして経営者としてどのような姿勢で資金調達に臨むべきかを解説します。
経営が厳しいから借り入れるのではなく、借入余力維持のために経営を良くしておく
金融機関は融資を行う際に、何よりもまず企業の財務状況を確認します。特に重視されるのは、売上高や利益率、自己資本比率などの収益性を示す定量的な情報です。これらの数字が健全であれば、金融機関は安心して融資を実行できますが、逆に数字が悪化していれば当然融資の判断も厳しくなります。したがって、「経営が厳しいからお金を借りよう」という発想では、借りたくても借りられない状況に陥ってしまうのです。
そうならないためには、借入余力を維持するという考え方が不可欠です。日頃から経営数値を良好に保つことを目指し、無理のない範囲で利益を確保し、自己資本を増やしておくことが重要です。これにより、いざという時に金融機関に安心感を与え、円滑に追加融資を受けられる余地を確保できます。また、経営数値を定期的にモニタリングし、問題点を早期に発見して改善する姿勢も求められます。借り入れはあくまで経営の手段の一つに過ぎません。余力を維持するための健全経営を心がけましょう。
人的体制や取引先など定性的要素も重要
金融機関が与信管理で見ているのは、数字だけではありません。どれほど経営数値が良好に見えても、内部の体制や取引先の状況次第で企業の信用力は大きく変わります。例えば、社内の人員が慢性的に不足している企業や、重要なポストが属人的に運営されている企業では、経営者が不在になっただけで事業が立ち行かなくなるリスクがあります。こうした人的体制の脆弱さは、金融機関にとって大きなマイナス評価につながるのです。
また、取引先の質も重要な定性的要素です。売上が大きくても、特定の大口取引先に過度に依存している場合、その取引先が取引を停止したり経営破綻したりすると、一気に資金繰りが悪化する恐れがあります。逆に、複数の取引先と安定的に取引があり、長期的な信頼関係が築かれている企業は、取引先倒産のリスクが分散されているため、金融機関からの信用も高まります。したがって、ただ売上や利益を追求するのではなく、内部の体制を整備し、取引先の多様化を図ることで、与信評価を高めることができるのです。
相対評価と絶対評価
金融機関が与信管理を行う際は、単純に「黒字か赤字か」「資産が多いか少ないか」といった絶対評価だけではなく、業界内での位置付けや類似企業との比較といった相対評価も行われます。同業他社と比べて利益率が高いのか、自己資本比率が標準を上回っているのか、成長率は業界水準に達しているかなど、多角的にチェックされるのが実態です。
このため、経営者としては自社の数値を客観的に把握し、どのような点が強みで、どこに改善余地があるのかを説明できるようにしておく必要があります。例えば、利益率が一時的に低下していても、その理由が明確で、今後の改善策が具体的であれば、金融機関は前向きに評価してくれます。反対に、数値だけを取り繕っても、業界全体との比較で見劣りがするようであれば、融資判断は厳しくなります。つまり、金融機関は与信判断を誤らないために、絶対評価と相対評価を組み合わせて総合的に信用力を見極めているのです。
金融機関が求めるのは明確なエビデンスとロジック
融資を引き出す際に最も重要なのは、金融機関が安心して貸せるだけの明確なエビデンスとロジックを示すことです。与信管理には絶対的な正解はなく、金融機関側もあらゆるリスクを想定しながら判断しています。そのため、必要な資料が揃っていなかったり、数値の説明に一貫性がなかったりすると、それだけで「不安な企業」と見なされてしまい、思うように資金調達ができなくなってしまいます。
よく「何を出せばいいですか」と金融機関に聞く企業もありますが、これは受け身の姿勢に過ぎません。理想は、自社の経営状態を冷静に分析したうえで、融資担当者が知りたいであろう情報を先回りして提示することです。たとえば、財務諸表だけでなく、売上計画や資金繰り表、借入金の返済計画、主要取引先の状況などを体系的にまとめ、説明のロジックが矛盾なくつながっているかを確認しましょう。こうした準備ができていれば、金融機関の担当者も「この企業なら問題ない」と判断しやすくなり、結果として融資の実行がスムーズになります。
まとめ
資金調達は企業経営において重要な手段である一方で、安易に借入に依存し過ぎると倒産リスクが高まるという現実を無視してはなりません。金融機関は、与信管理において企業の財務数値だけでなく、人的体制や取引先の状況といった定性的な要素、さらには業界内でのポジションといった相対評価も含めて総合的に判断しています。つまり、単に一時的な数字を取り繕うのではなく、持続可能な経営を実現するために体制を整え、明確なエビデンスとロジックをもって金融機関と向き合うことが重要です。
経営が厳しくなってから慌てて資金調達をするのではなく、日頃から健全経営を心がけ、借入余力を維持する姿勢が求められます。そして、金融機関との信頼関係を築き、必要なときにスムーズに資金調達ができる環境を整えておくことこそが、企業の持続的な発展につながるのです。
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