養育費回収が不安定なこれだけのリスク【弁護士×CFPが解説】

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養育費はできるだけ確実にもらいたい

離婚に伴い子どもを引き取る親には、法律上、相手方に対して養育費を請求する権利があります。これは単なる生活費の補助ではなく、子どもの健全な成長と生活の安定を守るために不可欠な資金であり、社会全体でも保護すべき重要な権利と位置付けられています。衣食住の費用だけではなく、学習費、医療費、将来の進学に備える費用など、子育てには想像以上に多くの出費が必要です。そのため、子どもを育てる側としては、できる限り多くの養育費を安定的に確保したいという思いは極めて自然なものです。
しかし現実には、裁判所の算定表に基づく養育費額は、希望する金額と比べると十分と言えない場合も少なくありません。また、たとえ調停や審判で金額が確定したとしても、支払いが将来にわたり確実に履行されるとは限りません。法律で権利が認められていても、実際の回収にはさまざまな障壁が存在します。相手方の経済状況や生活態度、職業形態、価値観、さらには感情面の対立といった多様な要因が複雑に絡み合い、養育費の支払いが滞るリスクを高めます。
養育費はあくまで子どものための費用であり、親同士の事情や感情によって左右されるべきではありません。しかし、現場の声や統計を見ると、支払いが途絶えてしまう家庭は一定数存在し、その金額も少なくありません。まさに「権利はあるが、回収が難しい」ことが養育費問題の本質です。
そこで本稿では養育費の支払いが不安定となる具体的なリスクを整理し、どのように回収リスクを抑える工夫や視点を持つべきかについて解説します。子どもの生活を守るという観点から、制度や法的手段だけに依存しすぎず、現実的な対策と心構えの重要性を明らかにしていきたいと思います。

自営業の収入は不安定

相手方が自営業者である場合、養育費の回収が不安定になる可能性が特に高くなります。自営業者は、事業の売上に応じて収入が大きく変動するため、景気や業界動向、取引先の状況、体調など、さまざまな外的要因によって収入が左右されます。会社員であれば安定した給与という土台がありますが、自営業の場合はその土台が存在しないため、収入が大きく上振れすることもあれば、逆にゼロに近い状態になることもあります。
また、自営業者は経費として計上できる範囲が広く、生活費に近い部分まで経費として処理しているケースもみられます。結果として、実際の生活レベルに比べて申告所得が低く見えることがあり、養育費の算定段階でも不利に働く可能性があります。さらに、帳簿の透明性が会社員に比べて低く、収入を正確に把握することが難しい場面も存在します。そのため、調停や審判で取り決めた額が実態に即していないと感じ、支払いに消極的になる場合も考えられます。
もちろん、自営業者の中には誠実に養育費を支払い、子どもの将来を第一に考える人が多く存在します。しかし、収入が安定しないという構造上の問題は避けられません。加えて、事業が厳しく資金繰りが逼迫した際などには、生活費や事業資金を優先せざるを得ず、養育費が後回しにされる恐れもあります。
そのため、自営業者が相手の場合、毎月一定額を前提とした支払い方法だけでなく、ボーナス型や年一括型、売上に応じた変動型など、柔軟な支払い方法の検討が必要です。また、支払いが滞った場合の対処策を具体的に定めておくことも重要です。法的に強制できる仕組みを用意しつつ、現実的な運用を視野に入れることが、リスクを抑えるうえで有効です。

会社員のリスク

相手方が会社員である場合、給与から安定的に収入があるため、一見すると養育費の回収が容易に思われます。実際、調停や審判で養育費が決定すれば、支払いが遅れた際には給与を差し押さえる手段が利用できるため、法的な強制力という点では会社員相手のほうが対応しやすいと言えます。
しかし、現実には会社員にも大きなリスクが存在します。給与差押えは相手方にとって心理的な負担が非常に大きく、職場に居づらくなることが少なくありません。給与差押えの事実が会社に知られれば、周囲からの目や評価にも影響し、出世や待遇にマイナスとなる場合もあります。こうした状況を避けるために、自ら退職してしまうケースも決して珍しくありません。
特に現代は転職が一般化しており、転職市場も活発で、職を変えることに対する抵抗が昔ほどありません。そのため、養育費の支払い義務から逃れる手段として転職を選ぶ人が出る可能性もあります。また、仕事を変えることで新たな勤務先を把握しにくくなり、差押え手続を継続するには相手の情報を再び収集する必要が生じます。この情報収集には時間と労力がかかり、相手方が意図的に情報を隠した場合はさらに困難となります。
つまり、会社員だからといって安心しきることはできません。安定した支払いを期待しながらも、万が一の事態に備えて、相手の勤務状況を把握し続ける意識や、必要に応じて迅速に法的措置を取れる準備が重要です。法的手段だけでなく、冷静な情報管理と継続的な対応力が求められる点に注意が必要です。

面接交渉で感情がもつれる

養育費の支払いが不安定になる原因として、経済的要因だけでなく、感情のもつれが大きく影響する場合があります。特に、子どもの面会交流(面接交渉)の場面でトラブルが起きた際、支払いが止まるケースがしばしば見られます。例えば、面会中に相手方の言動が問題となり、子どもに悪影響があると判断して面会を中止した場合、相手がその決定に不満を持ち、腹いせに養育費の振り込みを止めることが起こり得ます。
また、子どもの発言や態度を巡って感情が高ぶり、親同士の関係がさらに悪化することで、養育費の支払いが感情的に左右されることもあります。本来、養育費は子どもの生活を支えるための資金であり、親同士の関係や心理的対立とは切り離して扱われるべきです。しかし、離婚に伴うわだかまりや、子育てに関連する判断がぶつかる場面では、どうしても感情が優先してしまう人もいます。
養育費を交渉材料にすることは本来許されない行為ですが、実務の現場では、「支払ってほしければ面会させろ」といった不適切なやり取りが発生することもあります。これは子どもの健全な環境を損ない、長期的には親子関係にも悪影響を及ぼしかねません。
効果的な対策が難しい領域ではありますが、養育費は子どもの権利であり、面会交流とは分けて考えるべきだという意識を双方が持つことが重要です。また、第三者機関による面会支援や家庭裁判所の調整など、中立的な支援を利用することで、感情的な衝突を避ける工夫をすることも有効です。冷静さを保ち、目的が子どもの利益であることを忘れない姿勢が求められます。

できる限り相手方に依存しない生活を

養育費が支払われないことによって、生活費や教育費が支払えなくなり、子どもに不利益が生じることは絶対に避けなければいけません。もちろん、合意した養育費は確実に支払われるべきであり、支払わない側に責任があります。しかし、現実として、支払いが途絶えるリスクを完全に排除することはできません。そのため、養育費が予定どおり受け取れない場合にも対応できる生活基盤を自ら構築しておく必要があります。
まず重要なのは、支出を見直し、生活費の無駄を削る努力です。必要な支出と不要な支出を明確に区別し、長期的な家計管理を行うことで、急な収入減にも対応できる耐久力を備えられます。また、パートタイムから正社員への転換、副業の活用、スキルアップによる収入向上など、自らの収入を安定・増加させる方法を検討することも重要です。
養育費を受け取る側が経済的に自立しているほど、精神的にも安定し、子どもに安心感を与えられます。相手方に依存しすぎず、自身の力で生活を支える覚悟を持つことが、最終的には子どもの成長にとっても良い環境をつくります。養育費はあくまで補助的な位置づけとし、自分自身の生活設計を強固にすることが、最も現実的で効果的なリスク対策です。

まとめ

養育費は、子どもの健全な成長を守るために不可欠な財源です。しかし、相手方の職業や収入状況、生活環境、そして感情面の対立といったさまざまな要因によって、支払いが不安定になるリスクが存在します。自営業者であれば収入の変動と経費処理の自由度、会社員であれば転職による回収困難性、さらに面会交流に伴う感情のもつれなど、どの相手であってもリスクがあります。
したがって、法的に権利が認められているからといって安心しきるのではなく、回収が滞った場合の備えを持ちつつ、現実的な視点でリスクを理解することが重要です。そのうえで、自ら経済的基盤を固め、相手に過度に依存しない生活を築いていくことが、子どもの生活と将来を守る最も確実な方法です。法律や制度を活用しつつ、冷静な心構えと現実的な対策を両立させることが、養育費問題に立ち向かうために求められる姿勢だと言えます。
当研究所では、養育費をできる限り任意で確実に支払ってもらえるよう合意のあり方に細心の注意を払うとともに、FPのスキルも活用して離婚後の生活設計を徹底的に考え抜きます。お困りごとがありましたら下記よりお気軽にご相談ください。

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