練習はインドアでプレーは郊外で【公認会計士×MBAが解説】

事業再生

ゴルフ場練習場の倒産件数が増加傾向

近年、打ちっぱなしをはじめとする従来型のゴルフ練習場が倒産するケースが増加傾向にあります。ゴルフ人口そのものは、コロナ禍を経ても底堅い人気を維持しており、若い世代のプレーヤーも取り込むなど、むしろ活気が戻っていると言われています。屋外でプレーできる点や、密を避けやすいスポーツであることから、コロナ禍をきっかけにゴルフに再挑戦する人や、新規に始める人が増加したという調査もあります。にもかかわらず、ゴルフ練習場の倒産件数が上昇しているという状況は、一見すると矛盾しているようにも映ります。
しかし、こうした背景には明確な構造変化が存在します。第一に技術革新が進み、従来は広大な敷地が必要であった練習環境が、都市部の小スペースでも再現できるようになりました。高精度のセンサー、スイングデータの解析、ボール軌道のシミュレーション技術が急速に普及したことで、従来型の練習場でなければ得られなかった体験が、屋内でも容易に得られるようになっています。
第二に、都市生活者の行動スタイルの変化があります。仕事後に短時間で効率的に練習したい人や、休日に郊外まで移動する手間を避けたい人が増えたことで、便利な立地で利用できる練習環境が好まれるようになりました。これらの変化の結果として、従来型のゴルフ練習場の経営が厳しくなり、倒産件数が増加しているという流れにつながっています。そこで本稿では、このような背景事情の具体像を確認しながら、現代のゴルフ練習のあり方について検討していきます。

インドアゴルフ場が増加

都心の中心部にインドアゴルフ場が増加していることは、今や大きなトレンドとなっています。駅近のビルの一室や商業施設のフロアを利用し、コンパクトな空間でありながら高精度のシミュレーションを実現する店舗が次々に誕生しています。これらの施設では、狭い部屋でもスイングの軌道、ヘッドスピード、インパクトの角度、ボール初速などを細かく計測し、それらのデータから実際の弾道を算定して大型スクリーンに表示できます。
プレーヤーにとっては、まるで本物のフェアウェイにボールを打ち出したかのような臨場感を味わえるため、練習として十分な満足度が得られます。クラブごとの距離感や弾道のクセを把握することも容易であり、課題の可視化にも役立ちます。また、映像技術の向上により、コースの風景や高低差の再現もリアルになってきており、限られた空間でありながら豊かなプレー体験を得られる点が魅力です。
さらに、都心部に立地しているため、仕事帰りに立ち寄れる気軽さが人気の理由となっています。従来であれば、郊外の練習場まで移動する手間や時間が必要でしたが、インドア型であれば短い隙間時間でも練習を積むことができます。予約制や会員制を採用する店舗も多く、混雑を避けて一定のクオリティを保ちながら利用できる点も支持されています。このように、インドアゴルフ場は「効率的にうまくなりたい」という現代のニーズに合致し、都市生活者のゴルフ習慣を大きく変えつつあります。

従来のゴルフ練習場の課題

従来のゴルフ練習場には、いくつか避けがたい課題がありました。第一に、広大な敷地を確保する必要があり、そのための土地代や維持費が経営を圧迫していました。都市部では適した土地を確保することが難しく、地価も高いため、自然と郊外に位置することが多くなります。その結果、アクセスの不便さが利用者離れの一因となっていました。車での移動が前提となり、特に若者や都心で生活している人にとっては、気軽に通うにはハードルの高い環境だったといえます。
さらに、多量のボールを打つことが練習の中心となるため、その回収作業や設備管理にも手間がかかります。芝の管理、ネットの修繕、機器のメンテナンスなど、運営側の負担は決して小さくありません。また、打席数の制限から繁忙時間帯には利用者が集中し、待ち時間が発生することもありました。
リアルな弾道や風の影響を感じられる点は従来型の強みでしたが、インドアゴルフのシミュレーション技術が進歩したことで、その優位性が薄れつつあります。データの正確性や臨場感が飛躍的に向上し、狭い空間でもリアルに近い体験が得られるようになったため、従来型の練習場は相対的に魅力が低下してきました。こうした課題が積み重なった結果、経営面での苦境が顕在化し、倒産件数の増加につながっています。

練習はインドア傾向が進む?

何事においても練習では「数」をこなし、効率よくスキルを伸ばしたいというニーズが強まっています。ゴルフも例外ではありません。短時間で集中してスイングの課題を確認したり、反復練習をしたりするには、アクセスの良さは大きな要素です。その点、生活圏の近くにあり、予約状況を管理しながらスムーズに利用できるインドア型は、まさに現代のタイムパフォーマンスを重視する価値観に適合しています
さらに、シミュレーション技術の発展はゴルフにとどまりません。野球のバッティングや投球フォームも、動作解析を含むバーチャル環境で練習できるシステムが登場しています。広い敷地を必要とするスポーツほど、このような技術の恩恵が大きいと言えます。都市部での練習環境の整備が困難である競技でも、仮想空間で高度な練習を可能とする未来が見え始めています。
また、教育分野でも類似の変化が起こり得ます。従来は学校や塾まで通うことが当然とされていましたが、移動時間の負担や、スケジュール調整の難しさから、近所の小規模スペースでバーチャル授業を受けるというスタイルが広まる可能性があります。技術が進めば進むほど、「わざわざ遠くへ行かなくても質の高い体験が得られる」ことが当たり前になっていくでしょう。こうした流れを考えると、ゴルフにおいても練習はよりインドアに寄っていく傾向が続くと見られます。

本番はリアルで

練習がどれだけバーチャル化し、効率化されても、本番はリアル空間で行われ続けます。ゴルフ場そのものが消えるわけではなく、広大な自然の中でコース戦略を練りながらプレーする醍醐味は、今後も多くのプレーヤーに支持され続けるでしょう。これは野球場やサッカースタジアムなど、他のスポーツの大規模施設でも同様です。リアルな環境だからこそ生まれる緊張感や感覚、天候や芝の状態の変化に対応する面白さは、バーチャルでは完全には再現できません。
従来は、本番で良い結果を出すためには、本番の環境と近い場所で練習すべきだという考え方が一般的でした。確かに、実際のフェアウェイや芝の状態を体感しながら練習できることは大きなメリットです。しかし、現代では時間の制約やライフスタイルの変化から、効率的に練習できる環境が求められています。そのため、練習はインドアで行い、そこで得られたデータとイメージを基に、週末などにリアルのコースで腕試しをするというスタイルが広まっています。
インドアとリアルの役割分担が明確になりつつあり、練習はデータ重視で効率化、本番は自然の中で実践という住み分けが成立しつつあるのです。これは技術革新と生活様式の変化が相互に作用した結果生まれた新たなスタイルであり、今後のスポーツ全般においても参考になる動きだと考えられます。

まとめ

ゴルフ練習場の倒産件数が増加している背景には、技術革新と生活スタイルの変化があります。都市部にはインドアゴルフ場が続々と誕生し、高精度のシミュレーションにより限られた空間でも質の高い練習ができるようになりました。一方、従来の広大な敷地を必要とする練習場はアクセスや維持費の面で不利になり、利用者が離れやすくなっています。練習はインドアで効率的に、本番はリアルのコースで楽しむという新しいスタイルが定着しつつあり、この傾向は他のスポーツや教育にも広がる可能性があります。技術と人々の行動様式が変わる中で、練習と本番の役割が再編されていると言えるでしょう。
当研究所ではこうした外部環境の変化にどのように対応して既存事業を守っていくかについて広い視点から多角的に分析・助言させていただきます。下記よりお気軽にご相談ください。

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました