現代の倒産の主たる要因はお金の問題ではなく・・【弁護士×公認会計士が解説】

事業再生

倒産=お金が足りない状態ではない?

倒産という言葉を聞くと、多くの方が「会社にお金がなくなった状態」と直感的に理解します。実際、倒産の定義の一つには「支払期日に債務を返済できない状態」があり、資産よりも負債が上回る債務超過も典型的な要因とされます。そのため、要因分析ではしばしば、売上減少に伴う収入の減少や、経営者の金銭感覚の甘さによる過剰投資、無駄な費用支出など、金銭面の問題に焦点が当てられます。
しかし、現代の企業環境を俯瞰すると、必ずしも資金不足だけが倒産の直接原因ではないことが分かります。特に、資金調達手段が多様化し、従来であれば資金繰り難に陥っていたケースでも、今では外部資金で一時的に凌げる場面が増えています。金融機関による短期融資や、オンラインでの資金集めが広まり、資金難からの即倒産というパターンは相対的に減っています
それでも倒産は減らないどころか、一部業種では増加傾向にあります。この事実は、「お金の問題」が表面的な要因であることを示しています。裏側には、お金以外のリソース、特に人材や設備、事業の仕組みといった別の課題が潜んでいる場合が少なくありません。本稿では、こうした現代的な倒産のメカニズムを探り、お金に限らない倒産要因を分析していきます。

組織の3大リソースはヒト・モノ・カネ

企業経営における三大リソースとして、「ヒト」「モノ」「カネ」が挙げられます。カネは経営の血液と呼ばれ、確かに重要ですが、近年はその調達・運用方法がかつてより多彩になっています。銀行融資に加え、ベンチャーキャピタルやクラウドファンディングなど、非伝統的な資金源が増えました。決済システムや会計ツールの高度化により、資金の流れも把握しやすくなり、一昔前のように資金繰りの難しさが直接的な経営危機に結びつく割合は下がっています。
一方、モノは技術革新で効率化が進み、必要な機材や資材も以前よりスムーズに調達できます。物流網も整い、在庫や供給面での詰まりは一定程度解消されてきました。
では、残る「ヒト」はどうでしょうか。これは今、最も深刻な課題です。人材不足は全国的に広がっており、特に技能職や専門職では慢性的な人手不足が続いています。求人を出しても応募がない、採用してもすぐに離職してしまうといった現象は珍しくありません。しかも、人材は資金や物資のように、欲しい時にすぐ調達できるものではありません。採用から育成まで時間がかかり、定着には組織文化や労働環境の整備が欠かせません
このように、現代においてはカネやモノよりもヒトの不足が、事業を止めてしまう最大の要因となりつつあります。次章では、こうした人手不足が具体的に倒産に結びついている業種の一例を取り上げます。

解体業の倒産増加を分析する

近年、建物や構造物の解体業者の倒産件数が増えています。解体業は、建設業界の中でも特に人手依存度が高い業種です。大型の重機や機械を使う作業もありますが、それらを安全に操作し、現場を管理するのは結局のところ人間です。現場の安全確保、廃材の仕分け、搬出といった工程は自動化が難しく、人員の確保が欠かせません。
ところが、解体業の多くは小規模事業者であり、大企業のような人材確保のための待遇改善や福利厚生の充実が難しいのが現状です。結果として、経験豊富な人材が離れ、残ったスタッフの負担は増え、さらに離職が進む悪循環に陥ります。人がいなければ受注しても仕事をこなせず、納期遅延や契約解除が相次ぎ、やがて資金繰りも悪化します。
さらに物価高や最低賃金引き上げの影響も追い打ちをかけます。原材料や燃料費の高騰は請負価格に転嫁しづらく、利益率を圧迫します。賃上げ要求が強まる中で、人件費は増えても売上がそれに見合わない状況が続けば、倒産は時間の問題です。
このように、表面上は資金不足が原因に見えても、その根底には人手不足という構造的な問題が横たわっています。資金を注入しても人がいなければ業務は回らず、経営の再建は難しいのです。

大企業傘下で復活する企業の条件

倒産危機に瀕した小規模事業者でも、大企業に買収(M&A)され、見事に復活を遂げる例があります。しかし、それはどの企業でも起こるわけではありません。復活の条件の一つは、もともと優秀な人材が残っていることです。現場を熟知した職人や、業務を効率的に回せる管理職が揃っていれば、大企業の資金力と経営ノウハウを背景に、労働生産性を大きく向上させることができます。
大企業は資本力で最新の機械やシステムを導入し、効率化と賃上げを同時に進められます。これにより、従業員の士気は高まり、離職率も低下し、再び受注を増やすことが可能になります。さらにブランド力や信用力の向上により、取引先の拡大や単価改善も期待できます。
一方で、人手不足が深刻で、残っている人員も疲弊している企業では、たとえ大企業の傘下に入っても短期的な回復は難しいです。業務ノウハウを持つ人がいなければ、設備や資金を投入しても成果は出ません。むしろ、立て直しに時間とコストがかかり、撤退に至るケースもあります。
つまり、大企業の傘下で生き残れるのは、最低限の人的基盤が維持されている企業だけです。資金力よりも、まず人材の有無が命運を分けるのです。

AIによる支援と法的規制

人手不足を補う手段として、AI(人工知能)の活用は注目されています。例えば、事務作業の自動化、スケジュール管理、顧客対応のチャットボットなどはすでに実用化され、多くの企業が導入しています。また、画像認識やセンサー技術を組み合わせた現場作業の補助も可能になりつつあります。
しかし、AI活用には法的な制約がある分野も少なくありません。建設現場や医療、法律業務など、安全性や倫理性が重視される分野では、AIが担える業務範囲が法律で限定されています。AIが人間の判断に取って代わるには、規制緩和や法改正を待たなければならないケースもあります。
したがって、企業はAI導入を常に検討しながら、法改正や技術進歩のタイミングを逃さないことが重要です。今のうちから導入計画や教育体制を整えておけば、規制が緩和された瞬間に素早く対応できます。AIは人手不足を完全に解消する万能薬ではありませんが、部分的な負担軽減や効率化には有効です。
結局のところ、人材不足は当面続くと考えられるため、AIはそれを和らげる一つの有力な手段として位置づけ、戦略的に活用していく必要があります。

まとめ

現代の倒産は、従来のように単純なお金の欠乏が原因とは限りません。資金調達の多様化によって、お金だけの問題であれば一時的に凌げるケースが増えています。しかし、人材不足は資金投入だけでは解決できず、多くの企業で致命的な経営課題となっています。特に人手依存度の高い業種では、人が減ることで業務が回らず、やがて資金難に直結します。
大企業による救済も、人的基盤が維持されていなければ効果は薄く、AIも法的制約の中でしか活用できません。現代の経営者に求められるのは、資金繰りの工夫だけでなく、人材確保と定着、そして技術導入の準備を同時並行で進めることです。
お金だけを見ていては、現代の倒産リスクは回避できません。経営の本質は、ヒト・モノ・カネのバランスをいかに保つかにあります。
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