採用活動において経歴や数値をどれだけ重視すべきか【中小企業診断士×MBAが解説】

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採用活動は難しい

採用活動は、一見すると単純な流れに見えます。まず、自社が欲しい人材の条件を整理し、募集要項として明確化します。次に、その条件に合致しそうな人材を募集広告やエージェント経由で募り、応募者の中から条件に沿った人を選び出す――多くの企業がこの手順を踏んでいます。選考段階では、履歴書や職務経歴書といった書面から経歴・職歴に関する情報を収集し、場合によっては具体的な数値や成果指標を確認します。さらに、面接を通じて人物像や志向性を見極め、採否を判断します。
しかし、この一連の流れは理論上は整っていても、実務の現場では予想以上に難しいものです。経歴は立派でも実際の実務力が伴わないケースや、逆に経歴が平凡に見えても極めて高い能力を持っているケースがあります。また、数値や実績は一定の参考材料にはなりますが、必ずしも応募者の本質を示す決定的な証拠にはなりません。さらに面接では、応募者が意識的に自分を良く見せることで、実際の人物像との乖離が生じる場合もあります。
採用活動の難しさは、限られた情報と時間の中で、将来的に自社で活躍するかどうかを見抜かなければならない点にあります。履歴書や数値は有力なヒントである一方、それらだけに依拠するとミスマッチのリスクが高まります。そこで本稿では、このような難しさを踏まえつつ、経歴・数値の評価方法や、倫理性・リーダーシップといった非数値的な要素の捉え方、そして面接の在り方について、よくある失敗例と実践的な対策を紹介していきます。

経歴は面接と組み合わせて掘り下げて聴取せよ

採用活動では、応募者の学歴や職歴がまず目に入ります。しかし現代の採用現場では、出身大学の偏差値やブランド力は以前ほど重要視されなくなっています。特に、実務で即戦力となる人材を探す場合、学歴よりも職歴の中身の方が重要視される傾向が強まっています。
例えば、知的財産部門の管理職候補を探しているとします。この場合、特許庁での勤務経験や、大企業の知的財産部での長期的な実務経験を持つ人は確かに有力候補に見えます。そうした経歴は、専門知識や業務遂行能力をある程度裏付けるからです。しかし、履歴書にそれらの経歴が書かれているからといって、すぐに採用を決めてしまうのは危険です。
経歴は「肩書き」だけで判断するのではなく、その裏側にある具体的な職務内容や成果を掘り下げて確認すべきです。例えば「特許庁勤務」と書かれていても、実際には短期間の非常勤だったのか、長期的に審査官を務めたのかで意味合いは大きく異なります。企業での職歴も、担当業務が中心業務か補助的な業務かによって、スキルの習熟度は変わります。
したがって、面接では「どの組織で」「どの程度の期間」「どのような職務」を行ってきたのかを、時系列に沿って具体的に確認することが不可欠です。このプロセスを丁寧に踏むことで、経歴が自社の求めるスキルセットや価値観に適合しているかをより正確に判断できます。経歴はあくまで出発点であり、その真価は面接での深掘りによって見えてくるのです。

具体的な数値

採用選考において、応募者の業務経験を測る指標として「具体的な数値」を確認するケースは少なくありません。例えば、知的財産部員を採用する際に「これまで何件の特許出願を担当しましたか」と尋ねるのは一般的です。数値が大きいほど、その業務に関する経験の豊富さを示している可能性があります。
しかし、こうした数値はあくまで一側面であり、万能ではありません。多数の特許出願を経験していても、その内容が単純なものであれば専門性や問題解決能力は低い場合があります。逆に、担当件数が少なくても、技術的に難易度の高い案件や戦略的に重要な出願を成功させていれば、実務能力は高いと判断できます。
また、数値は応募者が自ら提示するため、誇張や誤解を招く表現が含まれることもあります。例えば「年間50件出願」と言っても、そのうち本人が主体的に関与したのは一部かもしれません。したがって、数値を評価する際には、その背景や実際の関与度を詳細に確認する必要があります
結局のところ、数値は経験の量を示す指標としては有用ですが、そのまま能力の証明にはなりません。採用担当者は、数値の背後にある実務の質や役割を見極めるために、具体的な案件の内容や困難だった点、工夫した点などを掘り下げて質問し、数字と実力を結びつける作業を怠らないことが大切です。

倫理性・リーダーシップ

採用活動では能力が最も重視されますが、能力の評価は数値以上に難しい場合があります。そのため、能力以外の要素として、近年ますます注目されているのが「倫理性」と「リーダーシップ」です。
倫理性は、組織の健全性を保つために不可欠です。倫理観のない社員が増えると、不正行為やコンプライアンス違反が発生しやすくなり、組織の評判や内部の信頼関係を損ないます。一方で、倫理性の高い人材は、周囲の模範となり、長期的に安定した業務運営を支える存在となります。
リーダーシップは、組織能力の底上げに直結します。必ずしも管理職だけに求められる資質ではなく、チームの一員として周囲を巻き込み、成果を高める能力は幅広い役職で求められます。
これらの特性は、履歴書や数値からは把握しづらく、言動や行動履歴から推測するしかありません。そのため、応募者のこれまでの職場での役割、他者との関係構築の方法、困難に直面したときの行動などを面接で掘り下げる必要があります。また、近年では応募者のSNSを調査し、日常的な価値観やコミュニケーション傾向を確認する企業も増えています。倫理性やリーダーシップは一度採用してから育成するのが難しいため、選考段階で多面的に評価することが重要です

面接は仮説の検証。採否決定ありきの面接は無意味

採用選考の最終段階に位置付けられる面接は、単なる形式的な確認作業ではなく、応募者が自社に適合するかを確かめるための「仮説検証」の場です。履歴書や職務経歴書、数値的な実績から立てた仮説――たとえば「この人は高度な専門性を持っているはずだ」「リーダーシップがありそうだ」など――を、面接での質問や応答によって検証します。
しかし、現場ではしばしば、採否がほぼ決まった状態で面接が行われることがあります。こうした場合、面接は「合格させるための理由探し」になり、応募者の弱点や適合しない点を見落とす危険が高まります。また、逆に先入観で不採用を決めてしまい、面接を通じた新たな発見の機会を失うこともあります。
面接では、仮説を否定する可能性も含め、あらゆる角度から応募者の実像を探る姿勢が重要です。そのためには、経歴や数値に関連する質問だけでなく、過去の行動原理、意思決定の基準、人間関係の築き方など、多面的なテーマをカバーする質問を用意する必要があります。直感や第一印象は参考になりますが、それだけに頼るのは危険です。面接を「決定の正当化」ではなく「仮説の検証」と位置付けることで、採用の精度を高められます。

まとめ

採用活動は、経歴や数値といった分かりやすい情報に頼りがちですが、それらは応募者の一部しか映し出しません。経歴は面接での掘り下げによって、その実態と自社への適合性を判断すべきです。数値は経験の量を示すヒントになりますが、その質を見極めることが不可欠です。
また、数値や経歴では測れない倫理性やリーダーシップといった特性は、組織の将来に直結する重要な資質です。これらを評価するには、多面的な情報収集と質問設計が必要です。そして何より、面接は仮説を検証する場であり、採否が先に決まっている状態では本来の役割を果たせません。
最終的には、採用活動は「限られた情報から将来の活躍を予測する」作業です。その難しさを理解し、経歴・数値・非数値的要素のバランスを取りながら評価することで、ミスマッチを減らし、組織の成長につながる人材を見極めることが可能になります。
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