子ども目線で共同親権とすべきかの最終チェックを【弁護士×CFPが解説】

離婚

共同親権にはメリットもデメリットもある

来年から導入される共同親権制度は、多くの家庭にとって大きな変化をもたらすことになります。これまでは離婚後、親権はどちらか一方の親が持つ単独親権が原則でした。しかし、共同親権の選択肢が加わることで、親子の在り方や生活環境に新たな可能性が生まれます。ただし、その仕組みには当然ながらメリットとデメリットの両面が存在し、慎重な検討が欠かせません。
親の立場から見たメリットとしては、まず養育費の支払いがスムーズになることが期待されます。単独親権の場合、親権を持たない側が養育費の支払いを滞らせるケースが少なくありません。その点、共同親権であれば両親ともに法的責任を負うことになり、経済的支援がより安定的に行われる可能性があります。さらに、進学や医療といった重要な意思決定を両親で話し合えることは、子どもにとっても幅広い選択肢を確保することにつながります。
一方で、デメリットも無視できません。離婚した以上、互いに距離を置きたいと考える親も多いはずです。しかし共同親権を選んだ場合、重要な局面では元配偶者と連絡を取り合い、意見を交わさなければなりません。これは精神的な負担になり得ます。また、両親の意見が対立したとき、解決に時間がかかることで子どもに不利益が及ぶ懸念もあります。
このように親目線で考えれば、共同親権には明暗両方があるといえます。ただし、制度の真価は「子どもにとってどうか」という点を抜きにしては語れません。親の都合だけで判断してしまうと、最も影響を受ける子どもが置き去りにされかねないからです。そこで本稿では、子ども目線から共同親権の意義や課題を丁寧に見直していきたいと思います。

貧しくならない権利

親の離婚は、子どもにとって大人の事情に巻き込まれる出来事です。本来、子どもには一切の責任がありません。しかし現実には、離婚に伴って片親家庭となることで経済状況が悪化し、生活水準が下がるケースが少なくありません。特に日本では、母親が親権を持つ割合が高く、その多くは正規雇用ではなく非正規労働やパートで生計を立てています。結果として、子どもの教育費や日常のゆとりに影響が及びます。
共同親権制度の導入は、こうした状況を少しでも改善する可能性を持っています。監護権を持たない親であっても、法律上の親権を維持することで責任を共有しやすくなります。つまり、養育費や教育費の負担を一方に押し付けず、両親からの継続的な経済的支援を子どもが受けやすくなります。
子どもの目線からすれば、離婚が原因で学びたい進路を諦めたり、生活の質を落とさざるを得ないのは理不尽なことです。子ども自身に落ち度はなく、むしろ大人の都合に振り回される立場にあるのですから、最低限「貧しくならない権利」は守られるべきです。共同親権はその実現に資する手段となり得ます。
さらに、経済面だけでなく心理面の安定にもつながります。進学や習い事を諦めずにすむことは、子どもが将来を前向きに描くための大きな支えとなります。親の離婚を経験しても「自分には両親が支えてくれる」という安心感を持つことができれば、心の健全な成長に寄与するでしょう。
したがって、子どもにとって共同親権は単なる制度ではなく、生活を守る大切な権利を実現するための仕組みといえます。子どもが声を上げにくい立場であるからこそ、社会全体でその権利を認め、保障していくことが求められます。

教育や扶養の公平な負担とバランス

子どもの成長には、衣食住を整えるだけでなく、教育や情緒的なケアも含めた幅広い支えが必要です。単独親権の場合、その多くが一人の親に集中します。するとどうしても、教育方針が一方的になったり、生活全般で偏りが生じやすくなります。子どもの立場からすれば、受けられる恩恵が限られ、場合によっては片親の価値観だけに縛られることにもなりかねません。
共同親権であれば、このバランスを取ることが可能です。たとえば、父親と母親がそれぞれ得意な分野で子どもを支え合えば、より多面的な環境を提供できます。教育費の負担も分散され、片方の収入に過度に依存せずにすむことは、子どもの将来にとって大きな安心材料です。
また、単独親権では子どもがどちらの親を選ぶかという主体的な選択肢はほとんどありません。法律上も、親権を持たない親の意向が反映される余地は限られています。しかし、親権を持たないからといって子どもへの愛情が消えるわけではありません。子どもには「両親から愛され続ける権利」があるはずです。
共同親権を通じてその権利が保障されれば、子どもは必要に応じて頼りたい側に頼るという柔軟な関係を築きやすくなります。これは子どもの主体性を尊重するうえでも重要な意味を持ちます。家庭が壊れても、子どもの生活基盤や心理的な安心感を壊さないためには、両親が等しく責任を果たす仕組みが有効です。
子どもは親の所有物ではなく、一人の独立した存在です。その視点に立てば、教育や扶養の負担を公平に分け合い、バランスを保つ共同親権の意義は大きいといえるでしょう。

共同親権を選択すべきケース

共同親権がすべての家庭に適しているわけではありませんが、子どもの目線で見て有利に働くケースは確かに存在します。たとえば、離婚後に母親が親権者となる場合を想定してみましょう。母親の収入が少ない場合、教育費や生活費を十分に賄うことが難しくなります。そのとき父親が共同親権を持ち、経済的にも教育的にも関与を続ければ、子どもの生活は安定しやすくなります。
また、母親が教育熱心である一方、その厳しさが過度で子どもにとって心理的な負担となる場合もあります。その際、父親が緩衝材となって子どもを支えられるのは共同親権ならではの強みです。片親だけでは偏った教育観に縛られやすいですが、両親の視点が交わることで健全なバランスが保たれます。
さらに、両親の離婚原因が暴力や不倫といった致命的なものでない場合、共同親権を選ぶメリットは大きいといえます。子どもと父親との間に信頼関係が続いているのであれば、その関係を断ち切る必要はありません。むしろ継続して関わることで、子どもの安心感や自己肯定感を育むことにつながります。
子どもの成長にとって大切なのは、両親が揃っていること自体ではなく、それぞれの親から継続的に支えと愛情を受けることです。信頼できる環境が整っているなら、共同親権は子どもにとって非常に有効な選択肢となります。

共同親権を選択すべきでないケース

一方で、子ども目線で考えれば共同親権が適さない場合もあります。たとえば、家庭内暴力や不倫によって家族の信頼関係が根本から破綻しているケースです。このような場合、子どもにとって加害的な存在である親と無理に関わらせることは、精神的な二次被害をもたらしかねません。
また、父親による虐待やネグレクトが過去にあった場合も同様です。子どもが安心して生活できる環境を優先するなら、共同親権は避けるべきでしょう。共同親権によって形式的に責任を負わせても、実際には子どもに害を及ぼすリスクが残るからです。
さらに、夫婦間の仲が極端に険悪で、ちょっとした事でも口論や諍いに発展するような場合も問題です。共同での意思決定がスムーズにできなければ、子どもはその板挟みになり、大きな心理的負担を抱えることになります。
父親に教育への意思がなく、収入も乏しい場合も注意が必要です。共同親権の名のもとに子どもを縛ってしまっては本末転倒です。子どもにとっては、形式よりも実質的な支えが大切だからです。
つまり、共同親権はあくまで「子どもにとって最善の利益が確保される場合」にのみ選ばれるべき制度です。その判断を誤ると、子どもにとって深刻な不利益をもたらすことを忘れてはなりません。

まとめ

共同親権は、親にとっても子どもにとっても大きな影響を及ぼす新しい制度です。親の視点だけで考えれば、養育費の安定や意思決定の煩雑さといったメリット・デメリットが語られます。しかし本当に大切なのは、子どもの目線に立ち「生活の安定」「教育のバランス」「愛される権利」を守れるかどうかという点です。
子どもは親の離婚に責任を負っていません。にもかかわらず、生活の質や教育の機会を失うことがあってはなりません。共同親権はその課題を補う可能性を秘めていますが、すべての家庭に適するものではありません。暴力や不信がある場合には、むしろ単独親権のほうが子どもの利益を守れる場合もあります。
最終的には「子どもにとって何が最善か」という一点に立ち返り、共同親権を選ぶか否かを判断する必要があります。その視点を見失わなければ、制度の導入は子どもたちの未来をより良いものにする道しるべとなるでしょう。
当研究所では、単に両親間の話し合いとしての離婚だけでなく子どもの環境や離婚後の生活まで見越した総合的な解決策の提案を心がけております。下記よりお気軽にご相談ください。

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