2026年から共同親権制度が始まる
これまで日本では、離婚をする際に必ずどちらか一方の親を親権者として指定しなければなりませんでした。そのため、多くの家庭では母親が親権者となる傾向があり、父親が親権を持つケースは少数にとどまっていました。背景には、子どもが幼い時期に母親と過ごす時間が長く、その信頼関係や生活上の密接なつながりが重視されてきたことがあります。結果として、離婚後は母子家庭が大多数を占め、父子家庭は極めて限られた存在でした。
しかし、2026年から施行される共同親権制度は、この状況に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。新制度のもとでは、必ずしも一方の親に限定する必要がなく、父母双方が親権を持ち続けることが認められるようになります。これにより、法律的にも両親が離婚後も「親」であり続けることが制度として保証されます。
これまで「親権=母親」となることで、父親が子どもの生活に関与する機会は大幅に制限されていました。仮に面会交流が認められていても、頻度や内容は母親側の意向に強く左右されがちであり、父子関係が希薄になってしまう例は少なくありませんでした。共同親権が始まれば、一定の割合で子どもが父親の元に暮らす選択がなされるようになり、これまで母子家庭が当然とされていた構図に変化が生じることが期待されます。必然的に、父子家庭の割合が増えていく可能性があります。
そこで本稿では、この新制度が始まることで父子関係にどのような影響が生まれるのか、特に子どもの生活環境や親子関係の観点から詳しく見ていきたいと思います。
いつでも会える
単独親権制度のもとでは、親権者が監護権者を兼ねるケースが大半でした。そのため、子どもと一緒に暮らす親が実質的に生活の全権を握ることとなり、もう一方の親との接触は限定的でした。多くの場合、母親が親権者であり、監護権者として子どもを養育するのが一般的であったため、父親は月に数回の短時間しか子どもと会えない、あるいは全く会えないという状況が生じがちでした。子どもが母親と過ごす時間が長いことから、母子間の信頼関係は自然と強くなり、その一方で父子間の関係は希薄になっていきがちでした。
共同親権制度のもとでは、この構造に変化が訪れます。親権は両親が持ち続けるため、監護権についても必ずしも母親が担う必要はなく、父親が監護権者となる場合も考えられます。仮に母親が監護権者でなくても、親権者としての立場は保持されるため、父親と同じように子どもの教育や生活方針に関与できます。これにより、子どもは父親と暮らしながら、母親とも自由に会うことが可能になります。
例えば、母親を強く慕う子どもであっても、父親の家庭に身を置きながら母親に会いに行くことが自然な形で許されます。学校帰りに母の家へ立ち寄ったり、週末だけ母の元で過ごすといった柔軟な生活スタイルも現実的になります。これは単独親権のもとでは難しかった関係維持の形です。必ずしも「母子家庭でなければならない」という固定的な図式は崩れ、父子家庭としての暮らし方が選択肢の一つとして広がる可能性があります。
父親のもとでは環境が変わらない
離婚によって子どもの生活に最も大きな影響を与えるのは、住居や学校の環境の変化です。多くの場合、家の名義人や住宅ローンの契約者は父親であるため、離婚後に母親が親権者となれば、母子は新しい住居を探さなければならず、子どもは引っ越しや転校を余儀なくされます。こうした変化は子どもにとって大きなストレスとなり、友人関係や学業に悪影響を与えることが少なくありません。
その点、父親のもとで暮らす場合は、環境を変えずに生活を続けられる可能性が高いです。父親がそのまま自宅に住み続ければ、子どもは同じ学校に通い、近所の友達とも離れずに済みます。また、日常的な生活リズムも崩れにくいため、心理的な安定が保たれやすいです。特に思春期の子どもにとって、引っ越しや転校は人間関係を一から作り直す大きな負担となりますが、それを避けられるのは大きな利点です。
さらに、父子家庭であれば姓を変更する必要もありません。母子家庭では、母親の旧姓に戻ることで子どもの姓も変わり、友人や教師に説明を強いられる場面が出てきます。こうした微妙な違和感や疎外感は子どもの心に影を落としがちです。姓を変えずに済むことは、本人のアイデンティティの連続性を守ることにつながります。
また、共同親権のもとでは母親が完全に排除されるわけではありません。定期的に母親と交流することで、子どもは「母親を失った」という感覚を持たずに済みます。父親の家で安心して暮らしつつ、母親との関係も維持できる。このように環境変化の少なさは、父子家庭の大きなメリットであり、家庭選択の重要な要素となります。
金銭的に困りにくい
母子家庭における最大の課題のひとつが経済的な不安定さです。離婚後、母親が正社員として働いていれば一定の収入が得られますが、非正規雇用やパート勤務のままでは生活費や教育費を賄うのが難しくなります。その上、父親からの養育費の支払いが滞るケースは非常に多く、実際に支払いを受け続けている家庭は全体の3割程度に過ぎないとされます。このため、多くの母子家庭は経済的に苦しい状況に置かれてきました。
これに対し、父子家庭では経済面での不安が相対的に少なくなります。父親が会社員や公務員、あるいは自営業で安定した収入を得ている場合、生活費や学費を確保することが比較的容易です。もちろん、父親が単身で家事と仕事を両立させるには大変な面もありますが、経済的余裕があることで外部サービスを利用し、負担を分散できます。ベビーシッターや家事代行サービスの活用、学童保育の利用などによっても、家事育児の課題を実務的に解決可能です。
さらに、経済的な安定は子どもの精神面にも大きく影響します。お金の心配をせずに塾や部活動に参加できることは、子どもの将来の選択肢を広げます。母子家庭でよくある「進学を諦めざるを得ない」という事態を回避できるのは、父子家庭の強みです。精神的な不安が少ない環境で育つことは、子どもの自己肯定感の維持にもつながります。
このように、父子家庭では「家事に慣れていない父親が苦労する」という弱点はあるものの、金銭的に困窮しにくいという点が大きな安心感をもたらし、結果的に満足度の高い家庭生活を築ける可能性が高いといえます。
共同親権に適した家庭
もちろん、共同親権がすべての家庭に適しているわけではありません。夫婦の間に暴力やモラハラ、不倫といった深刻な裏切り行為がある場合には、共同親権はかえって危険を伴います。こうしたケースでは、離婚後も頻繁に連絡を取り合うこと自体が双方にとってストレスとなり、子どもにも悪影響を与えかねません。このような家庭では、単独親権を選び、関わりを最小限にとどめる方が望ましいでしょう。
一方で、性格の不一致や生活スタイルの違いといった理由で離婚に至った家庭では、共同親権は有効に機能する余地があります。夫婦関係は解消しても、互いに親としての責任感を持ち続けることが可能であり、子どもにとっても両親がともに存在し続ける安心感が得られます。このような家庭では、父親の経済力や住環境を重視して父子家庭を選びつつ、母親との交流も積極的に行うというバランスの取れた育児が実現しやすいです。
例えば、平日は父親と暮らし、週末には母親の家に泊まるといった生活リズムも成立し得ます。こうした柔軟な形が取れるのは、共同親権だからこそです。そして、姓や住居を変える必要がなく、経済的にも安定した父親の家庭を基盤とする生活は、子どもにとっても安心感をもたらします。結果として「父親と暮らしたい」と考える家庭は増えていく可能性があります。
つまり、共同親権は「すべての家庭に適用すべき万能の仕組み」ではなく、家庭の事情に応じて最適な形を選ぶべき制度です。その中で、父子家庭という選択が現実味を帯びてくるケースは、今後確実に増えていくと考えられます。
まとめ
2026年から始まる共同親権制度は、日本の家族のあり方に大きな変化をもたらします。これまでは母親が親権を持つことが一般的で、結果的に母子家庭が大多数を占めてきましたが、新制度の導入により、父子家庭が増えていく可能性が高まっています。
父子家庭が注目される背景には、住環境や学校生活を変えずに子どもを育てられる点、姓を変えずに済む点、さらに経済的な安定が見込める点といったメリットがあります。また、共同親権のもとでは母親との関係も維持できるため、子どもにとっても安心感が得られます。ただし、暴力や裏切りがある家庭では共同親権は不適切であり、状況に応じた判断が不可欠です。
今後、父子家庭は決して珍しい存在ではなくなり、共同親権の下で多様な家族の形が社会に広がっていくことでしょう。
当研究所では、共同親権制度の開始に伴い、これまでのマニュアル的な母親単独親権処理に抗い、子どものために最も良い環境を徹底的に模索いたします。下記よりお気軽にご相談ください。


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