改めて整理する共同親権を活用できる家庭の条件【弁護士×CFPが解説】

離婚

共同親権制度が4月1日スタート

離婚時の子どもの親権を、父母双方が持ち続けることができる共同親権制度が、4月1日からいよいよスタートします。これまでの日本では、離婚後は原則としてどちらか一方の親のみが親権を持つ単独親権が採用されてきましたが、この制度変更により、離婚後も両親が子どもの養育に関与し続けるという新たな選択肢が現実のものとなりました。
私の法律事務所においても、この制度開始を見据えた相談が急増しています。特に目立つのは、共同親権を選択するためにあえて離婚のタイミングを遅らせるというケースです。従来の制度では望めなかった関係性を維持できる可能性があるため、制度開始を待つという判断は一定の合理性を有しています。
もっとも、共同親権は単に「選択肢が増えた」というだけで安易に歓迎すべきものではありません。制度の本質は、離婚後も両親が共同で意思決定を行う点にあります。つまり、夫婦関係が解消された後も、子どもに関する重要事項については協議を続けなければならないということです。この点を軽視して選択すると、日常生活のあらゆる場面で衝突が生じ、かえって子どもに不利益を及ぼす可能性があります
したがって、共同親権は「使い方を誤ると負担が大きい制度」であるという認識が不可欠です。そこで本稿では、この制度を有効に活用するために、どのような家庭が適しているのか、またどのような点に注意すべきかについて整理していきます。

共同親権にすべきでない夫婦

共同親権はすべての離婚家庭に適しているわけではありません。むしろ、一定の条件を満たさない場合には、選択すべきでないケースが明確に存在します。その代表例の一つが、離婚原因がDVである場合です。身体的暴力に限らず、精神的圧迫や経済的支配なども含め、当事者間に深刻な力関係の偏りがある場合、離婚後も対等なコミュニケーションを継続することは極めて困難です。このような関係性のもとで共同親権を維持すれば、被害を受けた側が継続的に相手の影響下に置かれることになりかねません。
また、離婚原因が不倫である場合も慎重な検討が必要です。不倫という行為は夫婦間の信頼関係を大きく損なうだけでなく、子どもに対しても価値観の混乱をもたらす可能性があります。不倫をした側が離婚後も頻繁に子どもの生活に関与することが、教育的に望ましいかどうかは疑問が残ります。もちろん一律に否定されるべきではありませんが、少なくとも無条件に共同親権を選択すべき事案ではありません。
さらに、離婚後に父母が遠距離で生活することになるケースも問題です。物理的距離があると、日常的な意思疎通が難しくなり、緊急時の対応にも支障が生じます。例えば進学や医療に関する判断など、迅速な決断が求められる場面で調整が遅れれば、子どもに不利益が及びます。
これらに共通するのは、離婚後も継続的かつ建設的なコミュニケーションが取れるかどうかという点です。共同親権は、形式的に親権を分け合う制度ではなく、実質的な協働を前提としています。したがって、感情的対立が激しい、信頼関係が完全に崩壊している、あるいは物理的条件が整っていないといった場合には、この制度は適さないと考えるべきです。

裁判所に丸投げはやめよう

離婚手続は複雑であり、専門的な知識が求められる場面も多いため、「調停を申し立てて裁判所に任せてしまえばよい」と考える人は少なくありません。確かに、家庭裁判所の調停制度は当事者間の合意形成を支援する重要な仕組みですが、それに過度に依存する姿勢には注意が必要です。
特に近年は、家庭裁判所の人的資源の不足が指摘されています。調停委員や調査官は限られた時間の中で多数の案件を処理しなければならず、一つ一つの事案に対して十分な時間と労力を割くことが難しいのが実情です。新たに導入される共同親権制度についても、実務がどこまで丁寧に対応できるかは未知数と言わざるを得ません。そのような状況の中で、自らの人生や子どもの将来に関わる重要な判断を全面的に委ねるのは極めて危険です。
また、調停はあくまで話し合いを前提とした手続であり、当事者の意思が最終的な結論を左右します。つまり、裁判所が一方的に最適解を提示してくれるわけではありません。むしろ、自らの考えや方針が曖昧なままでは、望ましくない結果に流されてしまう可能性が高まります。
共同親権を選択する場合には、離婚後も継続的に意思決定を行う責任が伴います。このような制度を選ぶにあたり、「誰かが決めてくれるだろう」という受動的な姿勢では到底対応できません。自分の価値観や子どもにとって何が最善かを主体的に考え、必要に応じて専門家の助言を受けながらも、最終的な決断は自分で下す覚悟が求められます。
したがって、裁判所に運命を預けるような考え方をしている人は、そもそも共同親権という制度の前提に適合していないといえます。主体性と責任感を持てるかどうかが、この制度を選択するうえでの重要な分岐点となります。

父の体面と責任

共同親権の導入によって、特に大きな影響を受けるのは父親の側であるといえます。従来の実務では、離婚後に父親が単独で親権を取得するケースは限られており、多くの場合、子どもとの関係性が希薄になりがちでした。しかし共同親権のもとでは、父親も引き続き法的な親としての地位を維持し、子どもの成長に関与し続けることが可能になります。
これは単に「会える機会が増える」という話ではありません。親権者である以上、教育、医療、生活環境など、子どもの重要事項について責任ある判断を行う義務が生じます。また、養育費の支払いについても、これまで以上に明確な責任が求められることになります。親としての権利が維持される一方で、それに見合う義務を果たすことが不可欠となります。
ここで重要なのは、形式的な関与ではなく、実質的な関与が求められる点です。例えば、単に面会交流を行うだけでなく、学校生活の状況を把握し、進路について意見を述べる、健康状態に関心を持つなど、日常的な関わりが必要になります。これを負担と感じるか、あるいは親として当然と受け止めるかによって、共同親権の適否は大きく変わります。
また、父親が関与し続けることは、子どもにとっても心理的な安定につながる可能性があります。離婚によって一方の親との関係が断絶されるのではなく、継続的に関係を保てることは、自己肯定感や安心感の維持に寄与する側面があります。
もっとも、責任を果たす意思が乏しい場合には、この制度は逆に混乱を招くだけです。関与する意思はあるが実行が伴わない、あるいは都合の良い場面だけ関わるといった態度では、子どもにとって不安定な環境を生み出します。したがって、共同親権は父親に対して「親であり続ける覚悟」を強く求める制度であり、その覚悟がある家庭においてこそ意味を持つといえます。

親の離婚は子どもには関係ない

子どもの視点に立ったとき、親の離婚は本来、子ども自身の責任でも選択でもありません。それにもかかわらず、離婚によって生活環境が大きく変わり、心理的・経済的な影響を受けるのは子どもです。この点を軽視して、親の都合のみで制度を選択することは避けなければなりません。
例えば、居住地の変更や転校、生活水準の低下、親との接触頻度の変化など、離婚は子どもにとって多くの変化を伴います。これらの変化は必ずしも避けられないものですが、少なくともその影響を最小限に抑える努力は不可欠です。親の関係が破綻したとしても、子どもにとっての「家族」の意味まで断絶させる必要はありません。
この観点から見ると、共同親権は一つの有効な手段となり得ます。両親が関与し続けることで、生活の連続性を一定程度維持できる可能性があるからです。例えば、教育方針の一貫性を保つ、重要な行事に両親が関わる、日常的な相談相手が複数いるといった点は、子どもに安心感を与える要素となります。
しかし、ここで重要なのは「形式的に両親が関与しているか」ではなく、「子どもにとって安定した環境が提供されているか」です。両親の対立が激しいまま共同親権を維持すれば、子どもは常に板挟みの状態に置かれ、かえって大きなストレスを受けることになります。つまり、共同親権は万能の解決策ではなく、適切に機能して初めて意味を持つ制度です。
親の離婚という大人の事情によって、子どもが過度な負担を強いられることのないよう、制度の選択にあたっては常に子どもの利益を中心に据える必要があります。そのうえで、共同親権がその利益に資するかどうかを冷静に判断することが求められます。

まとめ

共同親権制度は、離婚後も両親が子どもの養育に関与し続けることを可能にする新たな枠組みであり、従来の単独親権制度では実現が難しかった関係性を維持できる点に大きな意義があります。しかし、その一方で、制度の本質は「協働」と「継続的な意思決定」にあり、単に形式的に親権を共有するだけでは十分に機能しません。
まず重要なのは、当事者間に最低限の信頼関係とコミュニケーション能力が存在することです。DVや深刻な対立がある場合、あるいは物理的に離れて生活する場合には、制度の運用自体が困難となり、子どもに不利益を及ぼす可能性が高まります。共同親権は「仲が良い夫婦のための制度」ではありませんが、「完全に関係が破綻している場合には適さない制度」であることは明確です。
次に、主体的な意思決定ができるかどうかも重要な要素です。離婚手続を他者に任せきりにするのではなく、自らの価値観に基づいて判断し、その結果に責任を持つ姿勢が求められます。これは離婚時に限らず、離婚後の継続的な関係にも直結する問題です。
さらに、特に父親にとっては、親としての責任を継続的に果たす覚悟が問われます。共同親権は権利を与える制度であると同時に、義務を明確化する制度でもあります。関与し続ける意思と実行力がなければ、制度のメリットは活かされません。
そして何よりも、最優先されるべきは子どもの利益です。親の都合や感情ではなく、子どもにとって安定した生活環境が維持されるかどうかを基準に判断する必要があります。共同親権はそのための有効な手段となり得ますが、適切に運用されなければ逆効果となることもあります。
以上を踏まえると、共同親権を活用できる家庭とは、離婚後も一定の協力関係を維持できる意思と能力を持ち、子どもの利益を最優先に考えられる家庭であるといえます。制度の導入により選択肢は広がりましたが、その選択には慎重さと責任が伴うことを忘れてはなりません。
当研究所では、離婚を人生の再設計ととらえ、家計、子どもの生活も含めた総合的な視点で貴方のお困りごとに寄り添います。下記よりお気軽にご相談ください。

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