「プチ贅沢」メニューのメリットと導入上の注意点【公認会計士×中小企業診断士が解説】

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大衆チェーン店で期間限定のプチ贅沢メニューが好評

近年、牛丼チェーンやうどん店など、いわゆる大衆向け飲食チェーン店で期間限定のプチ贅沢メニューが人気を集めているのをご存じでしょうか。例えば、普段は500円前後のメニューが中心の牛丼店で、特選和牛を使った1,000円の限定メニューが出ると、多くのリピーターや新規客が注文します。こうしたメニューは、通常メニューよりも粗利率が高く、売上を押し上げる効果があります。また、普段は安さを重視するお客様も、何かの節目や自分へのご褒美として、少しだけ贅沢なメニューを頼むことで満足感を得られるのです。この心理をうまく突いたのが「プチ贅沢メニュー」です。コロナ禍を経て、外食をする回数自体が減ったことで、せっかくの外食なら少し良いものを食べたいという気持ちが強まったことも後押ししています。こうした背景から、大衆チェーンにとってプチ贅沢メニューは収益を上げるための有力な手段として注目されています。
そこで本稿では、プチ贅沢メニューがどのように大衆店と高級店の特徴を補い合う形で導入されているのか、そして導入の際に気をつけたいポイントを詳しく解説していきます。

高級店のメリットと課題

高級飲食店といえば、客単価の高さと、料理やおもてなしの質で勝負するスタイルが一般的です。高級店では、食材にこだわり、熟練の料理人を揃え、店内の雰囲気も特別感を演出するなど、多大な投資を行ってお客様の期待に応えています。その結果、1回の来店で得られる収益は大きく、粗利率も高いため、単価だけで見ると効率良く利益を生み出せるビジネスモデルといえます。しかし、その一方で、高級店には高級店ならではの課題も存在します。まず、お客様の要求水準が非常に高いため、常に期待を上回るサービスを提供し続けなければなりません。そのために、店舗の内装を維持・更新したり、スタッフの教育に力を入れたりと、継続的な設備投資と人材投資が不可欠です。また、景気や社会情勢の影響を受けやすく、来客数が不安定になりがちです。たとえば、経済が低迷すると、真っ先に外食の中でも高級店の利用が控えられる傾向にあります。こうした背景から、高級店は収益性は高くても、安定して利益を確保するのが難しい面を持っています。この点が、大衆チェーンがプチ贅沢メニューで高級感を一部だけ取り入れるメリットにつながっていくのです。

大衆店のメリットと課題

一方で、大衆店には高級店とは異なる強みと課題があります。まず、大衆チェーンの最大の強みは「価格の安さ」と「入りやすさ」です。例えば牛丼店やファストフード店のように、ワンコイン前後で食事ができる手軽さは、多くの人にとって大きな魅力です。価格が安い分、幅広い年代や所得層の人々が気軽に利用でき、来店数は比較的安定しています。また、全国に複数の店舗を展開しているチェーン店であれば、場所によって多少の浮き沈みがあっても全体として売上を支えることが可能です。ただし、大衆店の課題は、単価が低いために一人あたりの利益が少なく、粗利率も低いという点です。そのため、薄利多売で回転率を高めなければ、店舗を維持することは難しくなります。また、競争相手も多く、価格競争に陥りがちです。値下げ合戦を続けると、サービスの質や従業員の待遇にも影響が出かねません。このように、低価格を売りにする大衆店は安定性という強みを持つ一方で、収益性の向上には限界があります。だからこそ、プチ贅沢メニューの導入が注目されているのです。

大衆店+顧客数増加+顧客単価増加

大衆チェーンがプチ贅沢メニューを導入する最大の狙いは、既存の安定した顧客数を維持しながら、新たに顧客単価を引き上げるところにあります。普段は低価格メニューで満足しているお客様も、「今日はちょっといいものを食べたい」「自分へのご褒美に」といった気持ちを後押しされると、少し高めのメニューを選びやすくなります。また、プチ贅沢メニューをきっかけに、普段は高級店を利用する層や中所得者層を呼び込める可能性もあります。家族や友人、職場の同僚など、誰かを誘って来店するケースも増えるため、結果として顧客数の増加にもつながる可能性があります。このように、プチ贅沢メニューは「普段使い」と「特別感」を両立できるため、幅広い層に支持されます。さらに、期間限定という付加価値をつけることで、限定感から購入意欲を高め、店舗への来店頻度を高める効果もあります。ただし、あくまでベースは大衆店の低価格路線にあり、そのバランスを崩さないことが重要です。安さを求める既存客が離れないよう、メニューの位置づけや販促方法を慎重に設計する必要があります。

通年商品とするなら別チェーンで

プチ贅沢メニューは、大衆店にとって売上や話題性を生む大きな武器ですが、導入には注意点もあります。特に、プチ贅沢メニューを期間限定ではなく通年メニューとして扱う場合は、慎重な判断が求められます。なぜなら、プチ贅沢が常態化すると、従来の大衆店を愛用していた低価格志向の顧客が「値上げされた」と感じ、離れてしまう可能性があるからです。大衆店は「安さと気軽さ」が最大の武器です。この軸を崩してしまうと、価格競争力を失い、ブランドのイメージもブレてしまいます。もし、通年で高単価のプチ贅沢ラインを展開したいのであれば、別ブランドの店舗を立ち上げるなどして住み分けをするのが賢明です。例えば、牛丼チェーンが高級ラインの専門店を別に運営し、特別な空間やサービスを提供することで既存ブランドを傷つけずに収益の幅を広げるという方法です。こうしたブランド戦略をとることで、大衆店の既存客を失わず、プチ贅沢を求める層も逃さず取り込むことができます。安定収入を維持しながら利益率を高めるためには、このような柔軟な発想が欠かせないといえるでしょう。

まとめ

プチ贅沢メニューの導入は、薄利多売型の大衆チェーンにとって、収益性を高めるための有効な手段です。普段は安価なメニューを利用するお客様にとっても、特別感を味わえるプチ贅沢メニューは満足度が高く、再来店のきっかけにもなります。しかし、その一方で、高級路線とのバランスを見誤ると、既存客の離脱を招きかねません。大切なのは、大衆店としての強みを維持しながら、一時的に顧客単価を高める工夫をすることです。通年で高級路線を展開したい場合は、既存店とは別ブランドで運営するなど、顧客層を混在させない工夫も求められます。大衆店と高級店の長所と短所を理解したうえで、プチ贅沢メニューの効果的な活用を検討することが、今後の安定的かつ持続的な店舗運営の鍵となるでしょう。
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