新店舗開設時にはオープニングセールをするが
新しく店舗をオープンするとき、多くの店はオープニングセールを実施します。これは当然の戦略であり、地域住民や既存顧客に対して「新しい店ができた」という情報を一気に広めるための有効策です。例えばニーズの高い商品を通常価格より二割引きにする、お得なセット商品を期間限定で用意するなどして、開店時には多くの人を集めます。店舗前に長蛇の列ができ、活気に満ちた雰囲気が生まれると、店舗側としても大きな期待を抱きますし、お客様も「ここは良い店かもしれない」と感じるはずです。
しかしながら、こうした華々しいスタートを切ったとしても、セールが終了した途端に閑古鳥が鳴くという例は少なくありません。開店初日から数日間は賑わっていたのに、一週間後には通常営業の静かな状態に戻り、店側が期待していたほどの売上が継続しないという事態が多く見られます。このパターンは特に飲食店や小売店、新商品の販売開始時に頻発します。割引に魅力を感じて訪れただけの顧客は、定価に戻ると足を遠ざけてしまうためです。店舗側としては「せっかく多くの人に来てもらったのに、なぜ続かないのだろう」と疑問に思うかもしれませんが、オープニングセールはあくまでスタート地点に過ぎません。
そこで本稿では、新しい商品や店舗のPRを考える際に、オープニングセール以上に重要なポイントを考察します。セールによって一時的に来店してくれたお客様をどのように継続的な顧客に変えていくか、そして新規開店の勢いを継続的な成長につなげるための視点が重要になります。区切りの良いイベントであるオープニングセールだけに頼らず、長期的な視点でPR戦略を構築することが求められるのです。
大事なのは「認知」
新商品や新店舗の成功に不可欠なのは、まず認知を獲得することです。顧客が商品や店の存在を知らなければ、どれだけ品質が良かったとしても購買につながりません。マーケティング理論においては、AIDMAモデルやAISASモデルが代表的な消費行動プロセスとして語られます。AIDMAモデルではAttention(注意)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)の順で消費者が反応し、AISASモデルではAttention、Interest、Search(検索)、Action、Share(共有)という流れを示します。いずれのモデルでも最初の「Attention=認知」が極めて重要であり、ここを獲得しなければ後続の段階に進むことはできません。
この観点からすると、オープニングセールは確かに有効です。割引や限定商品などの施策によって注目を集め、短期間で多数の来店を促すことができます。「新しいお店ができたらしい」「お得らしいから行ってみよう」という動機づけを生む上で、オープニングセールは高い効果を持ちます。そのため、多くの事業者がこの方法を採用するのは合理的です。
しかし、問題が生じるのは「認知しただけで終わってしまう場合」です。つまり、オープニングセールで店の存在を知ったものの、その後の来店にはつながらず、一度きりの関係で終わるケースです。こうした状況は、オープニングセールだけがPRの中心になり、継続的な認知の強化や商品の価値訴求が不十分な場合に起こります。消費者にとっては「安かったから行っただけ」であり、店の特徴や魅力が記憶されないまま終わってしまうのです。
店側としては、認知をきっかけに興味や理解を深めてもらい、最終的には日常的な利用につなげたいと考えます。そのためには、認知を一度得ただけでは不十分であり、継続的に認知を補強し、顧客との接点を持ち続ける必要があります。オープニングセールはあくまで起点であり、その後にどのように認知と関心を育てていくかが、実際の成功を左右します。
継続的な認知促進が必要
現代は情報過多の時代であり、消費者は膨大な情報に日々触れています。そのため、一度認知された情報でも、時間が経つと容易に忘れられてしまいます。SNSやニュース、広告、口コミなど、消費者はさまざまなチャネルから情報を得ていますが、その中で一つの店舗や商品の印象を永続的に保つことは困難です。したがって、新店舗や新商品の認知は一度で完了するものではありません。むしろ繰り返し情報に触れてもらうことで、徐々に存在感が定着していくものです。
オープニングセールはその強いインパクトによって一時的に注目を集めますが、終了後に情報発信をやめてしまうと、せっかくの認知が記憶から薄れていきます。そのため、オープニングセールが終わった後も、継続的に顧客に店舗や商品の存在を意識してもらう取り組みが必要です。例えば、定期的なSNS投稿、店頭でのPOP告知、地域に根ざしたイベントへの参加など、さまざまな方法が考えられます。
また、ただ存在を思い出してもらうだけでなく、商品の魅力や店舗のこだわりを徐々に浸透させていくことも重要です。顧客が「この店ならではの価値」を理解することで、単なる価格競争ではなく、他店との差別化が可能になります。継続的な認知促進と価値訴求を併せて行うことで、オープニングセールにより築いた関心を購買行動へと進めていくことができます。
しかし、セールを永続的に続けることは現実的ではありません。利益率も下がり、店舗運営が難しくなります。そのため、セール以外のPR手法を構築し、オープニングセール後のプロモーション活動を戦略的に行う必要があります。情報発信の継続は手間がかかるものですが、顧客との関係性を長期にわたり育てていくための重要な作業です。
ターゲットを意識したPR
継続的なPR活動を行う際に大切なのは、ターゲットを意識した戦略です。誰に対して情報を届けたいのか、どの層が商品やサービスに対して価値を感じるのかを明確にしなければ、効果的なPRは成立しません。若い世代を対象とするのであれば、スマートフォンで手軽に閲覧できるウェブ広告が有効です。SNSの活用や動画プロモーション、インフルエンサーとの連携など、多彩な手法があります。短い動画や画像中心の情報が好まれる傾向にあるため、視覚的なアプローチが効果を発揮します。
一方で、高齢者が主要ターゲットの場合、紙媒体のチラシや地域情報誌、テレビCM、ラジオ広告といった従来型の広告手法が効果的です。高齢者は日常生活の中でデジタルデバイスに触れる機会が少ない場合が多く、紙やテレビの情報に対する信頼が高い傾向にあります。したがって、情報提供の方法をターゲットに合わせて選択することで、PRの効率を高めることができます。
また、最初の段階では複数のPR手法を試し、それぞれの効果を分析しながら徐々に最も成果の出る手法に絞っていく戦略も有効です。例えば、SNS広告とチラシを併用し、どちらの反応が良いのかを見極めながら、費用対効果の高い手法に集中することで、効率的な広告運用が可能になります。ターゲット層の行動習慣を深く理解し、適切な媒体と内容でアプローチすることが成功の鍵です。
さらに、地域密着型のPRも効果を発揮します。地域イベントへの出展、地元コミュニティとの協力、口コミの醸成など、直接的な接点を通じて信頼を獲得できます。顧客が親しみを感じる環境を作り、店の存在が自然と生活の中に溶け込んでいくようなPRを心がけることが大切です。ターゲットの特徴を理解し、適切な戦略を選択することで、長期的な集客基盤を構築できます。
資金計画を立てる
PR活動には費用が発生するため、継続的な施策を実施するには資金計画が欠かせません。まず、毎月どの程度の広告宣伝費を投入するか、上限金額を明確に設定します。この予算が曖昧だと、費用が膨らみ利益が圧迫されるリスクがあります。広告費用は投資であり、過度な節約は認知拡大の機会損失になりますが、制御不能な支出は経営を不安定にします。そのため、バランスの取れた予算設計が重要です。
次に、その広告宣伝費を固定費として損益分岐点を算出します。損益分岐点とは、売上から費用を差し引いた結果がゼロになるラインであり、これを把握することで、どの程度売り上げれば黒字になるのかが明確になります。広告費が固定費として加算されることで損益分岐点は上昇しますが、それを見越したうえで売上目標を設定する必要があります。
損益分岐点を上回る売り上げが期待できるかどうかは、広告戦略の成否に直結します。もし十分な売上が見込めないと判断される場合、広告予算を見直すか、より効率的な広告媒体に切り替える必要があります。また、自社でできる低コストのPR手法を併用することも効果的です。SNSの活用や口コミ促進、常連客へのサービス強化など、工夫次第で費用を抑えながら効果を生むことができます。
このように、PR活動は戦略と資金管理が一体となって初めて機能します。短期的な視点で費用をかけるだけでなく、長期的な視点でブランド価値を高め、継続的な集客につなげる計画を立てることが重要です。
まとめ
新店舗や新商品のPRにおいて、オープニングセールは効果的な手段ですが、そこで終わってしまっては長期的な成功は望めません。最初に認知を得た後、継続的に顧客との接点を保ち、商品の魅力を伝え続ける姿勢が不可欠です。その際、ターゲット層に応じたPR手法を選択し、効率よく情報を届けることが求められます。また、PRには費用がかかるため、適切な資金計画と損益判断を行い、継続可能な戦略を構築することが重要です。オープニングセールを出発点とし、長期的な視点で顧客との関係を育てることが、真の成功につながります。
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