なりすましサイトは無関係でも被害甚大。その対策法は?【弁護士×ITストラテジストが解説】

リスクマネジメント

無関係のなりすましサイトは法的に直接リスクを負うわけではないが

なりすましサイトが第三者によって作成され、本家企業とは全く無関係である場合、法律上その企業が直接的な責任を問われることは基本的にありません。特に、本家企業がその存在を知らず、関与していないことが明らかであれば、裁判などに発展しても法的な追及の対象にはなりにくいといえます。ただし、そのことを理由に企業がなりすましサイトの存在を軽視したり、放置したりすることは極めて危険です。なりすましサイトは、単なる悪戯にとどまらず、悪質な詐欺行為や個人情報の不正取得など、重大な犯罪に利用される可能性があるためです。
しかし企業は、たとえ法的責任が生じないとしても、リスクを予防する観点から積極的に対応する姿勢が求められます。日常的に自社名や商品名を含むドメインの新規登録やWeb上の不審な動きを監視し、被害が拡大する前に手を打つ体制づくりが急務となります。
そこで本稿ではこうしたなりすましサイトの被害拡大を未然に防止し、あるいは拡大を防ぐ対応策について説明します。

苦情の増加、企業ブランドや信用の低下につながる

なりすましサイトによる被害で最も顕著に現れるのが、顧客や取引先からの苦情の急増です。たとえば、なりすましサイトで購入した商品が届かない、個人情報を入力した後に不審な連絡が来るといったケースでは、被害者が本家企業に問い合わせや抗議をしてくることがあります。このような場合、本家企業に非がないとしても、顧客の怒りや不信感は企業に向けられるため、対応に多くの時間と労力が必要になります。
さらに、SNSや口コミサイトを通じて「〇〇という企業は怪しい」「対応が悪い」といった情報が拡散されてしまえば、企業イメージの悪化は避けられません。これは、企業にとって看過できないブランド毀損であり、信頼回復には多大なコストと時間を要することになります。特に、中小企業やスタートアップ企業にとっては、信用こそが最も重要な資産であるため、たった一つのなりすましサイトが経営に与える影響は極めて大きいといえるでしょう。
苦情対応や風評被害の拡大を防ぐためにも、なりすましサイトが発見された時点で、すぐに自社サイトや公式SNSを使って注意喚起を行う、該当サイトの通報・削除依頼を迅速に行うといった対応が必要です。早期対応が被害を最小限に食い止める鍵となります。

企業情報を抜き取られている可能性

なりすましサイトの多くは、本家企業のサイト構造やデザイン、さらには文章内容までも忠実にコピーして作成されています。一見すると正規のサイトと見分けがつかないほど精巧に作られているケースもあり、利用者が誤ってアクセスしてしまうリスクは非常に高いといえます。こうしたサイトの目的は、商品やサービスの偽装販売だけでなく、企業のブランド力を悪用して顧客から個人情報をだまし取る「フィッシング詐欺」であることも少なくありません。
フィッシング詐欺と聞くと、一般には銀行のログイン情報やクレジットカード情報など、直接的に金銭を得ることを目的とした詐欺が思い浮かびますが、企業のWebサイトの情報そのものが抜き取られ、悪用されるケースも深刻です。たとえば、企業紹介文や社員紹介、商品説明などをそのまま転用されてしまうと、企業イメージを利用した詐欺行為が加速します。また、画像やロゴ、商標などを無断使用されると、知的財産権の侵害にもつながります。
このようなリスクを防ぐには、自社サイトの構成やコンテンツを常に見直し、コピー防止のための技術的措置(右クリック禁止、画像透かしなど)を施すとともに、検索エンジンやドメインウォッチサービスを活用して模倣サイトを早期発見する体制が重要です。

企業の無形資産の識別と保護の徹底を

企業の資産と聞くと、物理的な設備や商品、財務的な資源を思い浮かべがちですが、近年ではブランド、ノウハウ、顧客リスト、ロゴ、ドメインなどといった「無形資産」が企業価値の中核を成しています。これらの無形資産は、直接金銭的価値が見えにくい反面、なりすましサイトなどのサイバー犯罪に狙われやすい領域でもあります。模倣や不正使用によってその資産価値が損なわれた場合、企業の競争力低下につながるリスクが極めて高くなります。
とりわけ、ロゴやブランド名は顧客にとって企業を認識する重要な指標です。なりすましサイトにこれらが不正に利用されれば、顧客の混乱を招き、信頼を失墜させる要因となります。そのため、企業は自社の無形資産を明確に特定・管理し、必要に応じて商標登録を行う、著作権管理を徹底するなど、法的な保護措置を講じる必要があります。
さらに、情報システム部門と広報部門が連携し、ネット上でのブランド保護や偽サイトのモニタリングを強化することで、無形資産に対するリスクを予防的に管理する体制が求められます。無形資産を守ることは、企業の長期的な成長と信頼構築に不可欠な戦略といえるでしょう。

自社発信情報の適時性・正確性の確認も

なりすましサイトの脅威に目を向けると同時に、自社が発信する情報の正確性・信頼性にも細心の注意を払う必要があります。近年では、生成AIを使ってWeb記事やSNS投稿を作成する企業も増加していますが、AIが自動生成した内容に誤りがあっても、企業がそれを精査せずそのまま掲載してしまうと、虚偽の情報を発信していることになります。
こうした誤情報の発信は、顧客からの信頼を損なうだけでなく、場合によっては取引先との関係悪化や法的トラブルにまで発展するおそれがあります。なりすましサイトの被害とは異なる形ではありますが、結果として同様に企業ブランドを傷つけることになるのです。
そのため、情報発信を行う際には、内容の適時性と正確性を確保する仕組みを構築することが重要です。AIを活用する場合でも、最終的な確認は必ず人の目で行うべきです。チェックリストを用いた内容精査、責任者の承認制度、外部の専門家による校正など、ダブルチェック体制を導入することで、誤発信のリスクを抑えることができます。

まとめ

なりすましサイトが企業に直接的な法的責任をもたらさないからといって、放置すれば企業にとって甚大な被害となることは明白です。苦情の急増、信用の失墜、ブランド価値の毀損、企業情報の悪用といった形で、見えないダメージが広がることになります。企業は、自社の無形資産を的確に識別し、その保護に向けた施策を講じると同時に、自社が発信する情報の適時性・正確性の維持にも努めるべきです。ネット上の脅威に対する認識と対応体制の強化が、企業の信頼と成長を守る鍵となります
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