売掛金を回収できずに資金ショートするケースが増加
企業経営において、支出の管理を丁寧に行っていても、入金の遅延や未回収によって資金繰りが破綻するケースは少なくありません。近年では特に中小企業を中心に、売掛金の回収が思うように進まず、突発的な資金ショートに見舞われる事例が増加しています。
支払いに必要な金額は把握できていても、肝心の「入ってくるはずのお金」が期日どおりに入金されないと、日々の運転資金や仕入れ、給与、税金などの支払いが滞ってしまいます。資金が底をつけば、銀行への返済や新たな仕入れにも支障をきたし、経営全体に深刻な影響を与えることになります。
「売掛金は回収できて当然」と思い込んでしまうと、いざ入金が遅れた際にそのリスクに気づくのが遅れます。経営が順調なうちは見過ごされがちですが、資金繰りの実態を把握せずに日々を過ごすことは、まさに“時限爆弾”を抱えるようなものです。売掛金の回収は、単なる事務作業ではなく、企業の存続を左右する重要な経営課題なのです。
そこで本稿では、資金繰り管理の一環としての債権管理の工夫を説明します。
アバウトな資金繰りと債権管理をしていてはいつか起こる
中小企業では、帳簿作成や税務申告をすべて税理士に任せきりにしているケースが多く、経営者自身が日々の資金繰りや債権の状況を正確に把握していないことがあります。このような状況では、資金ショートや不良債権の発生リスクが高まって当然です。
確かに税理士は数字のプロですが、経営判断に必要な情報までリアルタイムで管理しているわけではありません。月に一度の帳簿確認や年次決算の段階で、ようやく資金繰りの実態を知るようでは、もはや手遅れです。
さらに、「なんとなく回っているから大丈夫」「今まで大きな問題はなかった」といった感覚的な資金管理に頼っている企業も少なくありません。しかし、取引先の倒産や、急激な景気変動など、外部環境が変化すれば、すぐにバランスは崩れてしまいます。
資金繰りや債権管理は、日常的に細やかなチェックと対策を講じることが必要です。適切な仕組みを整えないままでは、いずれアクシデントが発生し、そのとき初めて「もっと早く対策をしておけばよかった」と後悔することになりかねません。
相手の信用状況に応じた支払条件を設定する
新たな取引を始める際、多くの企業が価格や納期に注目しますが、実はそれ以上に重要なのが「支払条件の設定」です。すべての取引先に対して同じ支払条件を提示するのではなく、相手の信用状況を見極めて、条件を調整することが大切です。
たとえば、財務内容が良好で、過去の取引でも期日通りに支払いをしている大手企業に対しては、多少スパンの長い条件であっても、無担保で取引を進めることはリスクが低いと考えられます。しかし、設立間もない会社や、直近の決算で債務超過が見られる企業との取引では、支払スパンを短縮する、前払いを一部求める、担保や保証をとるなど、リスク軽減策を講じる必要があります。
また、過去に一度でも支払い遅延があった企業については、再発リスクを想定して慎重な姿勢で臨むべきです。時には、取引そのものを見直す決断も必要になるかもしれません。
信用調査会社の情報や、取引銀行から得られる情報、現場での対応の丁寧さなど、あらゆる情報を総合的に評価して、最適な支払条件を設定することが、健全な資金繰りと安定経営の第一歩です。
資金繰り表を作成して危ない時期の債権回収には特に気を付ける
資金繰りを正確に把握するためには、月単位や週単位での資金繰り表を作成することが不可欠です。資金繰り表があれば、どの時期に資金が潤沢で、どの時期に不足しがちなのかが一目瞭然となります。
特に、資金が少なくなる見込みの時期には、売掛金の回収を確実に行うことが非常に重要です。入金予定があるにもかかわらず、万が一その回収が遅れれば、たちまち資金ショートに陥ってしまう恐れがあります。
こうした「危ない時期」には、期日前日にメールや電話でリマインドを行う、請求書に明確な支払期日を記載する、早期入金割引制度を導入するなどの対策が有効です。さらに、定期的に売掛金の年齢別残高一覧(いわゆるエイジングレポート)をチェックし、長期滞留債権が生じていないか確認することも重要です。
資金繰り表を単なる予測ではなく、実務の中で活かしていくことで、突発的な資金トラブルを回避できるようになります。
訴訟や担保権行使は間に合わないものと思うべき
債権が回収できない場合の最終手段として、訴訟や担保権の行使があります。確かに法的手段によって債権を回収することは可能ですが、それには相応の時間と費用がかかります。
たとえば、訴訟を起こすには、まず内容証明を送り、裁判所に訴状を提出し、判決が出るまで数か月を要することもあります。さらに判決後の強制執行も、相手側に資産が残っていなければ意味がありません。
また、担保を設定していたとしても、いざ相手が経営破綻してしまえば、回収可能な金額が大幅に減ることもあり得ます。実際に弁護士に相談する段階では、すでに資金繰りが限界を迎えていることも多く、そこからの対応では手遅れになるリスクが高いのです。
だからこそ、債権管理は「事後対策」ではなく「予防対策」が基本です。問題が起きてから動くのではなく、起きる前から準備し、起きないようにリスクをコントロールすることが求められます。法的手段はあくまで最終的な補助手段であり、それを使わざるを得ない状況に追い込まれないよう、日頃の債権管理を徹底しましょう。
まとめ
企業経営において、資金繰りの安定は最優先の課題です。売掛金の未回収が一度発生すれば、想像以上のスピードで資金ショートへとつながる可能性があります。たとえ支出を管理していたとしても、入金がなければ資金繰りは成立しません。
そのため、日々の資金管理を「なんとなく」で済ませず、正確な資金繰り表の作成、債権の回収状況の把握、そして信用リスクに応じた支払条件の設定を徹底することが重要です。
また、資金が枯渇しそうな時期には特に債権回収のタイミングに注意を払い、早期のリマインドや条件交渉を行うことも必要です。法的手段を頼る前に、未然にリスクを察知し、先手を打つことが何よりも大切です。
債権管理は単なる事務処理ではなく、企業の命綱ともいえる経営戦略の一環です。アクシデントが起きてからではなく、起こさないための体制づくりを、今からはじめましょう。
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