商標権は目的をもってとる
特許権や商標権といった登録対象の知的財産権は先願主義が採用され、最初に発見・発明した人ではなく、最初に出願した人が権利を得ることができます。そのため、特に特許権では発明が完成したら(権利の使途などは細かく考えずに)すぐに出願するのが普通であったりします。
商標権も、権利が欲しいと思ったらすぐに出願するのが基本ですが、特許と異なり、そうそう同じもので出願が競合することはありません(一過性のブームに乗ったり、物の通常名称に近い商標を狙うなど、ありきたりな出願でなければ)。そのため、商標はきちんと使途を考えたうえで出願する割合が多くなります。
本稿では、商標をマルチブランド戦略の実行に合わせてとることを想定して、手続や注意点等を整理します。
同種商品の名称を使い分ける訳
コンビニに行けば、同じお茶なのに様々なブランドのペットボトルが並んでいます。居酒屋でビールを頼むにも、同じ会社のビールなのに異なる銘柄のビールがいくつも並んでいることがしばしばあります。
これは、顧客の嗜好は非常に幅広いことから、様々なタイプの商品を作り、これをブランドごとにラベリングして顧客それぞれに、好きな味のブランドを愛好してもらうことを意図しています。
1つの商品がヒットしたとしても、その商品は特定の顧客層に人気があるだけで、世間一般に人気があるわけではないため、その顧客層に飽きられるとブームは去ってしまいます。そこで、できる限り市場全体を対象にしようと、様々なタイプの商品に別々の名称を付して売り出す。これがマルチブランド戦略です。
少しでも異なる顧客層や商圏を狙う場合、ブランドの使い分けが大事
ブランド戦略で大事なのは、顧客が「いいね」と思った商品を、後日間違いなく選べるようにすることです。この観点から、少しでも異なる顧客層を狙う新商品や、異なる商圏を狙う新商品を出す場合、受け取り手の感覚の違いからブランド認識に混乱を及ぼすおそれがあるため、(旧ブランド名と似ていても良いですが)異なるブランドを付すことが大事です。
ここで、ブランド自体は法的に保護されません(ブランドを毀損された場合損害賠償は一定の条件のもとに可能ですが)ので、予め商標権を複数とって使い分けることが非常に大事な戦略となります。
マルチブランド戦略の留意点
こうしたマルチブランド戦略を採用する場合、注意すべき点がいくつかあります。
1つは先願主義であるため、出願は急ぐこと。特に既存の人気商標のスピンオフを狙う場合、それを狙っている競合がいる可能性は高まるため、注意が必要です。
2つ目は、とにかく顧客にわかりやすい商標とすることで、色彩や図柄等も交えて間違いなく顧客が識別できるものとすべきです。
3つ目はブランドを多角化しすぎてお互いに顧客を奪い合うカニバリゼーションを起こさないことです。こうした点に注意してマルチブランドを進めると、顧客層のすそ野を広げることができるでしょう。
まとめ
ブランド戦略は幅広い顧客に自社商品を思い出して購入してもらうために非常に重要です。慎重に考え、決めたら迅速に行動に移すべきです。
当研究所では特許庁から特許事務所まで幅広い立場で商標実務経験を豊富に積んだ弁護士・弁理士が御社のブランド戦略を広範囲にわたってサポートします。下記よりお気軽にご相談ください。
コメント