生前贈与は油断大敵
相続になると大変なので、生前に財産を子どもらに分けておこうと、「プチ相続」を早めに行う方が増えています。財産を1つ、相続人の1人に移すだけなのでと、油断して、市民相談の専門家に少し話を聞くだけで手続きをしてしまうと、後々、困ってしまうケースがあります。
移転登記ができなかったケース
Aさんは持ち家に居住しており、長女のBさんが身の回りの世話をしていました。自身が死ぬまでは家の固定資産税を支払いつつ、自身が亡くなった後は確実にBさんに家を相続させたいと思い、市民法律相談に赴き、弁護士に相談しました。弁護士からは、一般論として遺言書の作成の説明を受けたものの、自身の死亡後、速やかにBさんに移転登記のできるスキームを希望し、死因贈与という仕組みを教えられ、後日その弁護士に依頼して死因贈与契約書を作成しました。
翌年、Aさんが亡くなり、Bさんは死因贈与契約書や家の権利証等の書類を持って司法書士事務所に行きましたが、結局、相続人全員の印鑑証明書が必要だと言われ、相続争いに巻き込まれることとなってしまいました。
このケースでは、弁護士に相談した際、移転登記の可否や必要書類まできちんとチェックしておくべきでした。
生前贈与ができなくなったケース
Cさんは持ち家に居住しており、妹のDさんが身の回りの世話をしていました。Cさんが亡くなった後、Dさんが確実にこの家に住める方法を税理士に相談したところ、生前贈与で家をDさんに移すことを提案されました。CさんとDさんは、生前贈与により税金が発生すると生活が困窮することを懸念しましたが、税理士が相続時精算課税を用いれば、2500万円までは、当面は税金は発生せず、相続時に相続税を精算することとなる、という説明を受けてこれを行いました。翌年、Dさんの孫が大学に入学することとなり、Dさんは孫に入学祝いとして、かねてから貯金していた100万円を贈与しました。110万円までは贈与税はかからないと調べていたため、問題ないものと確信していましたが、その後、税務署から電話があり、結局贈与税を支払うこととなってしまいました。
このケースでは、税理士による相続時精算課税のデメリットの説明不足が問題で、Dさんのライフプランも聴取しながら、総合的により良い提案をする余地がありました。
まとめ
以上のように、生前に相続財産の一部を確実に特定の相続人に渡しておこうと考えても、部分的な相談では、法律・登記・税務の一部は解決できても、その他の分野で問題が残る(場合によっては悪化する)ケースがしばしばあります。そのため、ちょっとした財産の移転であっても、できる限り、法律・登記・税務のそれぞれの専門家にチェックしてもらうのが望ましいです。
当事務所では、法律・登記・税務に横断的に詳しい専門家がワンストップで対応いたします。下記よりお気軽にご相談ください。
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