「遊休地にアパートを建てると得」は本当か

相続・事業承継

貸家等は相続税法上評価額を下げるセオリー

相続を考えた際に、遊休地や誰も住んでいない老朽化した建物だけある土地、駐車場にしている土地等があると、銀行員等のアドバイザーは高い確率で、「更地にしてアパートを建てると節税対策になりますよ」とアドバイスするでしょう。

これは理屈的には至極もっともで、更地よりも借地権付きの土地は評価額が下がりますし、家屋も貸家は評価がさがります。そのため、相続税総額はほぼ間違いなく減少させることができると思われるのですが、本当にそうか、実際に数字を用いて検討してみたいと思います。

事案の説明

節税を検討している被相続人ですので、比較的資産には余裕がある設例とします。

被相続人は評価額1億円の更地と、預金5000万円を有しているとします。ここで、更地の上に3000万円かけてアパートを建築することを考えています。借地割合は60%、借家割合は30%であると考えます。

まず、アパートを建築しない場合、相続財産は1億5000万円です。

アパート建築後の収支・財産状況

アパート建築後ですが、まず預金が5000万円から2000万円に、3000万円減少します。

不動産ですが、評価額1億円の土地は82%(1ー借地権割合×借家権割合)で評価されますので、8200万円となり、建築したアパートは建築費の70%(1ー借家権割合)で評価されるため、2100万円となります。

そうすると、アパート建築前より、相続財産全体の評価額を2700万円も減少させる結果となります。

被相続人の預金は2000万円に減少してしまいましたが、この新築アパートに入居者が入れば家賃収入が手に入ります。この家賃収入は経費等を差し引いた残額に、所得税が被相続人に課せられますが、きちんと家賃が回収できていればマイナスとなることは想定しにくく、この収入を余生の生活費に充当することができます。

そして、この家賃収入は、相続後は、家屋を相続した相続人に承継されますので、相続人も相続発生後に、すぐに収入を得ることができる点で、お互いに満足度の高い工夫になる可能性はかなりあると言えます。

デメリット

さて、一見、非のつけどころのない仕組みに見えますが、いくつかデメリットがあるため、注意が必要です。

1つ目はアパートを建築して、賃貸すると、物件を管理する手間が発生する点です。この点は管理会社に委託するとしても、管理費用まで支払うと、家賃が滞納されたり、入居率が伸び悩んだ場合、赤字となってさらなる資金流出のおそれがある点に注意する必要があります。また、招かれざる入居者を入れてしまうと、家賃を支払わずに籠城したり、周辺住民に迷惑をかけて、アパートの安全性を害したり、設備を損壊する等のそれもあるため、入居者の審査が非常に重要になります。

2つ目は、最終的に土地を処分する際には更地にして売ることが多いため、この時点での収入は1億円ー解体費用ー仲介手数料等、となります。もともと1億円の土地と3000万円の預金だったものなので、収入が3000万円+解体費用+仲介手数料だけ目減りしています。優良物件であればアパートごと売れるかもしれませんが、少なくとも3000万円+αは家賃収入で儲けなければ、最終的に損してしまうのです。

3つ目は、2つ目のデメリットにちなんで、土地の処分時期が限定されることです。更地を駐車場として運営していれば、土地が値上がった際や、まとまった金銭が必要な際にすぐに換金できますが、アパートがあるとそうはいかなくなる点に注意が必要です。

まとめ

以上のように、遊休地にアパートを建築することは、相続税を節税するという目的に関しては正論ですが、トータルでより多くの財産を相続できるかどうかについては、建築したアパートに入居する客層や、将来的な土地の売却プラン等、様々なことを考慮する必要があります

当研究所では、弁護士・公認会計士・CFPがこうした節税スキームについて多様な観点から、メリット・デメリットを洗い出して、有益な情報提供を行っております。まずは下記よりお気軽にご相談ください。

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