新規出店のリスク
コロナ禍と円安で倒産企業も増えていますが、その数よりもはるかに多い数の店舗が不採算により閉鎖しています。コロナや円安という外部環境の変化を読み切れなかったという原因もあるかもしれませんが、多くの場合、新規出店のリスクを出店時に見誤っています。
幸い、倒産には至らずとも、新規に出店した店舗の閉鎖は結構大きな特別損失になり、企業全体に少なからずダメージを与えてしまいます。今日はリスクマネジメントとしての新規出店の考え方を整理したいと思います。
カニバリゼーションは論外
新規出店のわかりやすい失敗例として、東京チカラめしの例があります。東京チカラめしは焼き牛丼をメイン商材として、都内を中心に非常に速いスピードで新規出店を繰り返しましたが、同じ商圏で、顧客を奪い合う、いわゆるカニバリゼーションを次々と引き起こしているうちにブームも去り、一過性の企業で終わってしまいました。
カニバリゼーションは論外なのですが、我々の身の回りでは大手コンビニチェーンが次々と新規出店しています。時に隣のビルに同じ系列のコンビニが出店することもありますが、これには一応理由があります。
1つ目は、狭い地域に多数の店が集まると、商品の配送コストが下がるというメリットがあるからです。
2つ目は、店舗数が多いほど、店舗の存在がチェーンのブランド価値を上げ、広告宣伝効果にもなり、既存店舗の集客に貢献するからです。
しかし、隣接するビルに新規出店するようなケースはこうした効果ばかり見て、リスク評価を怠ったとしか言いようがないと考えられます。
出店時と失敗時の視野の狭さが原因
このように、出店時にはメリットばかり見てリスクを丁寧に評価しないケースが多い中で、撤退時にも安易な判断がなされることが多いです。
赤字なので、事業の継続価値(今後の累積赤字額)よりも撤退コストが小さいから撤退する。こう、目先のコストだけで判断してしまうのです。このように考えると、失敗したが、うまく赤字を極小化して済ますことができたと、あたかもナイス判断のように誤解しがちですが、新規出店の判断から撤退の判断までのすべての事情を丁寧に評価すれば、大悪手であったことはわかるはずです。
「成長」という結論ありきは危険
新規出店は、企業全体の成長という目標が先にあり、出店するかしないかではなく、どこに出店するかという観点で最初から検討されがちです。この考え自体が大きなリスクで、新規出店のメリット・デメリットを、短期・中期・長期の観点で丁寧に、公平に分析しなければ、失敗を美談としただけで終わってしまいかねません。
まとめ
企業は成長すべき存在です。しかし、成長ありきで盲目的な意思決定をしてしまうと困るのは企業のステークホルダーであり、1つ1つの意思決定を丁寧に綿密に行う必要があります。
当研究所では、経営やITに詳しく、京都大学大学院でリスクマネジメントや新規事業創出等を深く学んだ弁護士・公認会計士が、企業をとりまく様々なリスクに関して、適切な評価と対応に協力いたします。下記よりお気軽にご相談ください。
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