不祥事対応が泥沼にはまりこむパターン
不祥事対応は迅速かつ的確に行う必要があります。リスクマネジメントにおいて初期対応を誤ると大変なことになりがちである点は、何度か記事にしましたが、忠実に、かつ正確に対処したとしても、周囲からの批判等がやまないケースは多いです。
例えば、不倫をした著名人は復帰しようとする度に世間からの批判を浴びて、なかなか復帰まで時間が長引きがちで、これを助けようとするスポンサー等にも厳しい飛び火が生じがちです。その理由は、不倫をするということは、女性を蔑視していたり、普段自身に献身的に動いてくれる人への敬意がないなど、人間性を根本的に批判されているからであり、人間性はそう簡単に変えられないためです。
同様に、企業も、不祥事を通じて企業体質に批判が及んでしまうと、いかに誠実に謝罪したとしても、なかなかその企業体質を変えたと、周囲の再評価を得るのは困難です。
ネットで炎上事例を参照してみよう
ネット上では日々炎上事例が紹介されています。例えば東京2020の組織委員会。森氏が「女性がいると会議が長くなる」と一言漏らした失言が大騒動に発展しました。この一言だけであれば謝罪すれば済む話であり、森氏も少し遅れて謝罪を行いました。しかし、この件が大きな騒動となったのは、ジェンダーフリーを目指す五輪を管理する組織の体質が女性蔑視なのはどういうことか、という点にあります。そのため、会長を女性に代えるばかりではなく、理事にも多くの女性を登用してようやく騒動が沈静化しました。
日大のアメフト部の不正タックル指令事件も、事実を速やかに解明して、しかるべき加害者から誠実な対応があれば、あれほどの騒動にはならなかったでしょう。しかし、とかげの尻尾切りを繰り返し、最終的に当時の理事長を守ることを最優先した隠ぺい体質が厳しく指摘され、理事会をほぼ一新する結果につながりました。
対岸の家事ではなく自社のリスクマネジメントの第1歩
こうした公開されている他社の炎上事例を、面白おかしくただ傍観しているだけでは意味がありません。五輪組織委員会の件であれば、自社内でも女性蔑視の空気がないか、社内調査を行い、女性を蔑ろにしないよう、社内規律や意識を正しい方向に導くべきです。
日大の件のように、最終的に絶対権力を持つトップにたどりつくような場合、どう組織を統治するか、仕組みを考える契機にすべきです。
不祥事対応は、事件発生後に速やかに事実関係を調査し、再発防止策の策定に取り組む必要がありますが、企業体質がおかしいと、周囲に疑念を持たれてしまうと、事後的に回復が大変困難となってしまいます。
企業体質は時間の経過や周囲の価値観の変化とともに評価が変わってしまうものもあります。体罰や先輩による後輩のしごきなどは、一昔前までは当たり前だったとしても、今では完全にアウトで、昔自分はこう教わったからと、古いやり方に固執すると、周囲から手厳しい評価を受けてしまうかもしれません。これを防止するために、他社事例から、こまめに企業体質のチェックを行うことが、不祥事対応のスタート地点なのです。
まとめ
以上のように、リスクマネジメントとしての不祥事対応は、不祥事発生前から始まっているのです。当事務所では、経営・法律・会計を横断的に実務経験豊富な専門家による様々な実務上の助言やリサーチ業務を提供しております。下記より、お気軽にお見積り依頼・ご相談ください。
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