「事実離婚」のメリットと留意点

離婚

「事実離婚」増加の背景

事実婚という言葉は社会に定着している反面で、事実離婚という言葉はまだ聞きなれない言葉かもしれません。事実婚が婚姻届を出さずに事実上の婚姻関係を営むのに対し、事実離婚は離婚届を出さずに事実上別れることです。

具体例としては、離婚届は作成したが、子どものために、子が成人するまでそれを出さないことを合意するケースや、二度と戻らないことの合意のうえで離婚届けを出さずに別居するようなケースです。本稿では事実離婚のメリットと、留意点を整理します。

両親の事情を子どもに負担させない

事実離婚の最大のメリットは子どもの生活の安定です。子どもを連れてシングルマザーになると一般的には生活はかなり苦しくなりますが、「子どもが成人したら離婚届を出す」という合意のうえで、同居を続けると、子どもをめぐる環境は大きくは変化しませんし、生活や学費も問題ありません。

両親はお互いに不仲になっても子どもは両親が好きで別れたくないケースは多いはずです。また、離婚してしまうと、どうしても学校でからかわれたり、場合によっては苛めの対象となりかねません。両親の事情で子どもにこうした辛い思いをさせないことが、事実離婚のメリットです

離婚届けを出さずに別れる理由

離婚届けを出さずに別居するケースも増えています。その理由としては、完全に相手のことを嫌いになったわけではなく、少しお互いにクールダウンする環境が必要だ、と考えるケースが最も多いのですが、誰しも、1人になるというのは大変心細さを感じるものです。

高齢の夫婦などは、離婚してしまうと、自分にもしものことがあった場合、誰も助けてくれなくなることが大変気になります。事実離婚であれば、自身が事故にあったり入院したような場合、相手に連絡がいき、最低限の助け合いができる点にメリットがあります。

一人になるのは怖い、なので再婚相手が見つかったときに離婚届けを出せばよい。そういう夫婦も増えています。

事実離婚の注意点

事実離婚は、戸籍上は夫婦関係が残るため、注意が必要な場面もいくつかあります。

まず、どれだけ婚姻関係自体は崩れていても、戸籍上の夫婦関係がある以上、相互に助け合う義務があります

また、相続関係も通常の夫婦関係と同様に生じます。事実離婚を始めた前後ではなく、離婚届を出した前後で相続人が大きく変わるおそれがあることには特に注意が必要です。

再婚相手を見つけた場合も注意が必要です。もちろん、再婚するためには離婚届を出さなければいけませんが、その前に交際することが不倫に該当するリスクがゼロにはならないことに特に気をつけるべきです。不倫は、婚姻関係の既に破綻した夫婦間では基本的には生じませんが、事実離婚をしている=婚姻関係が破綻している、と言えるわけではなく、また、不倫で訴えられた場合、婚姻関係が破綻したことの立証も難しいと想定されるからです。再婚相手になりそうな良い相手をみつけたら、交際を始める前に離婚届をきちんと出すべきです。

まとめ

主に子どものために、事実離婚を選ぶ夫婦が増えています。事実離婚をするだけでは、基本的には法律上は夫婦関係の継続と何ら変わらないことのメリット・デメリットを慎重に整理しておくことが必要です。

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