貴重品種の流出事案
果物を中心に、日本が折角開発した新種を、海外に横取りされてしまうケースがしばしば報じられます。
こうした報道に対しては、「日本は規制が甘い」「お人よしだ」といった声があがりがちですが、実はこうした事例を事前に防止するのは非常に難しいです。
新種を開発した以上は、どんどん売らなければ投資が回収できません。ここで、外国人に売ってはならないというルールを制定すると差別になりますし、ホームセンターに売ってはならないというルールも見るからに問題があります。
結局、新種を販売しつつ、海外流出を狙う輩の手に渡らないようにすることは事実上不可能なのです。
種苗法の改正
こうした背景をふまえ、昨年、種苗法が改正されました。その主な内容は以下の通りです。
- 権利者が、輸出先の国を指定(限定)できる
- 権利者が、国内の栽培地域を指定できる
- 権利者が、買手の自己栽培を管理できる
すなわち、誰に売るかというところではコントロールできませんが、売った相手に対し、これを広める活動を制限できる権利を設け、種苗の不適切な拡散を防止しようとするものです。
権利者がなすべきこと
権利者は、新種の種苗を開発しただけですごいことなのですが、最終的には、これをたくさん売って資金を回収し、次の新種開発に投資することまで求められています。そして、たくさん売って資金を回収するためには、商品を売った後も、買手が不適切な使用をしていないか、きちんと監視し、コントロールすることが求められているわけです。
種苗法の改正により、権利者にはなすべき手間が大きく増えたわけですが、これを適切に行うことにより、大切な新種が近隣諸国に無償で持ち出されることのないよう気をつけう必要があります。
管理のために必要な力
こうした管理をするためにはいくつか必要な力があります。
まずは、契約できちんと規制する事項を取り決め、事後的にこれを監視する力です。そして、約束が守られていない場合、これをどう守らせるか、民事・刑事上のエンフォースメントをどう構築するかも重要です。こうした力は弁護士が得意としている事項です。
次に、規制を行うにしても、費用対効果とリスクの程度を考慮する必要があります。1回きりでわずか数百円程度の損害が見込まれるようなリスクのために、厳密な管理を行うことは得策ではありません。大規模な損害リスクがある場面でそれをいかに低減するかを数値ベースで検証できることが大事です。こうした場面では公認会計士が大きな力になります。
その他、品種の内容や制度の内容に詳しい弁理士や、マネジメント力全体に長けたコンサルタントなども有力な相談相手です。
まとめ
以上のように、新種の海外流出のためには少し面倒な管理活動が必要になり、弁護士や公認会計士などの専門家を交えてしっかりと計画を練るのが望ましいです。
当研究所では、弁護士・公認会計士・弁理士がこの点をトータルにサポートいたします。まずは下記より、お気軽にご相談ください。
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