元夫から養育費減額請求をされた場合の実践的な対処法

離婚

元夫が収入の減少を理由に、過去に公正証書で取り決めた養育費の減額請求をしてきた場合に収入を減らさないための方策はあるか

離婚後も、子どもの健全な成長と生活を守るために不可欠なのが「養育費」です。しかし、元夫から突然「収入が減ったから養育費を減額したい」と請求されるケースは少なくありません。とくに公正証書などで取り決めていたにもかかわらず、こうした申し出があった場合、どのように対処すべきかを理解しておくことは重要です。元夫が「収入が減った」という理由で養育費の減額を求めてきた場合、まずはそれが本当に正当な理由であるかどうかを冷静に確認する必要があります
一般的に、公正証書などにより養育費の金額が明確に取り決められている場合は、基本的にその内容に従う義務があります。しかし、実際に裁判所や調停で減額が認められるには「事情の変更」が必要とされており、たとえば病気や解雇など、やむを得ない事情がなければ簡単に減額は認められません。
本稿では、実践的な視点から元夫による養育費減額請求への対応策を解説します。

養育費は算定表に従って機械的に計算されるため、話し合いの余地は低い

まず注意したいのは、元夫が「自らの意思で転職」や「意図的に労働時間を減らした」など、収入を下げるような行動をとっている場合です。こうしたケースでは、「信義則違反」や「生活保持義務の軽視」とみなされ、減額は認められにくくなります。
もし収入証明や課税証明書を提出してもらった結果、不自然な収入減が確認できるようであれば、「本当に減額が必要なのか」を争う余地があります。調停や裁判に進む前に、専門の弁護士に相談し、相手の主張の根拠を精査することが大切です。
しかし、このような例外的なケースを除けば、養育費の金額は、家庭裁判所が公開している「算定表」をもとに算出されるのが一般的です。この算定表は、支払う側・受け取る側双方の年収と、子どもの年齢・人数をもとに、標準的な金額を示すものです。
つまり、基本的に裁判所の立場としては「算定表に準拠していれば妥当」という考えが前提となっています。そのため、双方が算定表に沿って適正な年収を報告した場合、大きな話し合いの余地はありません。
ただし、子どもが特別な教育を受けていたり、障がいなど特別な配慮が必要なケースでは、算定表の金額から増額されることもあります。逆に、元夫が勝手に収入減を演出して算定表上の金額を引き下げようとする場合は、先に述べたようにその正当性を厳しく問うべきです。養育費の算定は、単なる「元夫の申し出」ではなく、裁判所の客観的基準により決定される点を、冷静に押さえておきましょう。

一時金の増額を交渉する

定期的な養育費とは別に、子どもの進学や進級のタイミングでは、制服代、教材費、交通費など、まとまった出費が発生することが多いです。これらは通常の養育費の中には含まれていないことが多いため、「臨時費用」として追加での支払いを求める余地があります。
元夫から減額請求を受けた場合、「減額の代わりに、進級時の一時金を増額することで調整する」という交渉方法も考えられます。これはあくまでも「子どものための支出」であり、親としての責任を果たしてもらう合理的な提案です。
このときは、見積書や学校からの案内資料などを提示し、金額の根拠を明確にすることがポイントです。感情的にならず、あくまで「事実に基づく交渉」であることを強調しましょう。

面接交渉の回数を減らしたり、ルールを厳格化することを示唆して相手に譲歩を求める

養育費の減額を一方的に求めてくる元夫に対して、一定の交渉材料として提示できるのが「面接交渉権」です。面接交渉とは、子どもと別居している親(多くは元夫)が子どもに会う権利を指します。
この面接交渉は、子どもの利益に反しない限り、双方の合意によって柔軟に取り決めが可能です。したがって、元夫が養育費を減額したいというのであれば、「それに応じる代わりに面接交渉の頻度を見直したい」などの提案を行うことも一つの方法です。
もちろん、これは駆け引きの一種であり、子どもにとっての最善を損なわない範囲であることが前提です。しかし、交渉の場において「こちらにも条件がある」という立場を取ることで、相手に一定の譲歩を促すことができる可能性があります

養育費の減額を請求してくることを慰謝料発生の根拠事実として主張する

養育費の減額請求が悪意や嫌がらせに基づくものである場合、その行為自体を「精神的苦痛」として、慰謝料請求の一要素として主張する余地もあります。
たとえば、離婚の際に元夫が過去にDVやモラハラを行っていたケースでは、養育費減額という新たな経済的嫌がらせが加わることで、「継続的な精神的損害」が発生したと認められることもあります
もちろん、単なる養育費減額の申し出だけで慰謝料が当然に認められるわけではありませんが、「正当な理由もなく繰り返し請求をしてくる」「合意内容を一方的に反故にしようとしている」などの事情が積み重なることで、慰謝料請求の可能性が生まれます。
弁護士に相談のうえ、これまでの経緯や証拠(LINEのやりとり、メールなど)を整理し、慰謝料請求に含めるかどうか検討する価値は十分にあります。

まとめ

元夫からの養育費減額請求は、単なる金銭の問題ではなく、子どもの生活に直接影響を及ぼす重大な問題です。感情的に対応するのではなく、以下のようなポイントを押さえて、冷静にかつ戦略的に対応していくことが重要です。

  • 減額の正当性(本当に収入が減っているのか)を確認する
  • 家庭裁判所の算定表に基づく客観的基準を前提に交渉する
  • 一時金(制服代など)の追加交渉を提案する
  • 面接交渉条件を交渉材料として活用する
  • 悪質な減額請求には慰謝料請求を視野に入れる

最終的には、すべての行動が「子どもの最善の利益」に繋がっているかどうかが、判断の軸となります。必要に応じて弁護士や専門家に相談し、法的根拠に基づいた対応を心がけましょう。あなたとお子さんの生活を守るためには、適切な知識と準備が不可欠です。
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