養子縁組前に生まれた子と、養母の間には親族関係は生じない
親族の誰かが存命であったら、その誰かが遺産を相続できるだろう、と考えるのは普通ですが、最近出た最高裁判決において、おじの遺産を相続できないという事案がありました。なぜこのような事が起きるのか、本稿ではこの最高裁判決を解説します。
事案の概要
原告らは1970~1980年代にそれぞれ生まれました。原告らの母には当然産みの親がいますが、1991年に別の女性と養子縁組を行いました。この女性には男性の子どもがいたため、原告らの母とこの男性は兄妹関係となり、原告らにとってこの男性はおじとなりました。その後、養母がなくなり、原告らの母が亡くなり、おじがなくなった段階でおじの遺産の移転手続きを原告らがしようとしたところ、移転登記などの手続ができなかったことからこの訴訟に至りました。
相続関係
おじの遺産は、おじに配偶者や子どもがいれば優先的に相続人になりますが、おじには配偶者も子どももいませんでした。
次の優先権は親ですがこれも既に他界済で、さらに次は兄弟姉妹ですがこれまた先に他界していました。おじの妹には子ども(原告ら)がいますが、兄弟姉妹の相続分については代襲相続は発生しないため相続は生じません。そこで叔父の母親の代襲相続ができないかが争点となりました。
親族関係は生じない
養子縁組した子に子どもができれば、その子は養親から見て孫です。しかし、養子縁組する前に既にいた子に関しては、当然には親族関係は生じず、親族関係を生じたければ別途養子縁組などを行わなければならない、というのが従前の裁判例の考えであり、最高裁もこの考え方を踏襲しました。
すなわち原告らはおじの母親の直系卑属ではないため、代襲相続できないという結論となります。
対策は?
結果的におじの遺産は国庫に帰属することとなります。しかしそれは常識感覚としておかしいと感じる方も多いでしょう。
そのための対策としては、おじに子がおらず、再婚予定もなくなった段階で親族と養子縁組をしておくという方法があります。これをしていれば原告らはおじの子として遺産を相続することができました。
まとめ
このように、養子縁組が絡むと、常識的に考えて当然と思っていたことが、いざ相続が発生した段階で覆ってしまう可能性があることに注意が必要で、予め専門家に相談することをお勧めします。
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