静かな退職とホワイト職場の大きな違い

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静かな退職が増加傾向

職場で必要最低限の業務しかこなさず、出世は目指さない「静かな退職」と呼ばれる現象が増加しています。「静かな退職」という言葉は、アメリカのブライアン・クリーリー氏が「仕事を辞めないが意欲は持たず、最低限の業務にしか携わらない働き方」として発信したもので、例えば、会議でまったく発言しない、残業を一切せず定時に帰る-などの勤務を常態としている社員などが想定されます。
これとは別に、昨今働き方改革が進み、残業の減少が多くの企業で進められていますが、残業の減少は企業側から見ると、決して仕事総量の減少を意味するものではなく、使用者と被用者との間に思惑の不一致があります。そこで本稿では、こうした静かな退職と職場のホワイト性について、その相違点や抱える問題点を整理した上で理想的な組織はどのようにあるべきかについて整理します。

強制されない大前提

残業や期限の厳しい仕事など、通常業務よりも負担の大きな仕事は強制されないことが大前提です。今でこそ働き方改革でこれがブラックであることは周知されてきましたが、それまでは「仕事が残っている以上誰かやれ」が当たり前で、今でもその風土が残っている企業はまだまだあります。「定時に帰るなんてあり得ない」「会議では必ず1人1回は発言せよ」というのはもう時代遅れで、静かな退職すら容認しない企業は現代的にもはや明確にブラック企業と認定されるでしょう。中長期的に持続可能な組織を目指すのであれば、まずはこうした昭和気質で、体育会系の企業風土を一掃する必要があります。不要な上下関係がないか、飲み会を強要していないか、その他無駄な活動や会合が残っていないか、強制参加させていないかなどを1つ1つまずはチェックすべきでしょう。

意欲を引き出す必要性

こうしてブラックでなければ静かな退職が可能となりますが、静かな退職者が増えると組織の活動は大きく制限されたままです。「適当に手抜きしながら法定労働時間だけ席に座っていればよい」そのような考えの人間がいては、仕事が積極的には進みようがないからです。同じ定時で帰るにしても、「法定労働時間の範囲内で精一杯のアウトプットを出そう」という方向に意欲を引き出して行かなければ組織として成長できません。この意欲の引き出し方が難しく、強要したらブラックに逆戻りしてしまいますし、評価で差をつけると静かな退職者が本当に辞めてしまうかもしれません。ただ、ブラックな企業では前向きな意欲は生まれようがありません。まずは職場をホワイトにしたうえで、「そこに居続けたい」「職場をよくしたい」と思ってもらうことが第一歩でしょう。

売上や期限を基準にすると組織が歪む

上でも少し書きましたが、売上上昇や期限遵守を徹底しすぎると、営業に過剰なノルマが課せられたり、期限遵守のために残業を強要せざるをえない状況に追い込まれてしまいます。そうならないためには、組織のリソースと活動状況を正確に把握して、合理的な内容で収益計画やスケジュールを計画に落とし込んでいくことが不可欠です。たくさん仕事をして儲かれば変動ボーナスで従業員に換言すればよい、というわけではありません。これでは従業員は辞めてしまいます。利益を増やすのは企業の目的ですが、現状に照らして現場に無理を強いるような計画を立てたり実情が生じてしまうと、組織内のどこかに必ず歪みが生じ、組織崩壊につながってしまいかねないため、利益を増やしたいという思いはぐっと抑え、ここは合理的な範囲にまとめることが必要となります。

生産性を向上せよ

今、企業で最も重視されている指標は労働生産性です。静かな退職をしてただ終業時間まで座っている人と、熱意ある人とでは同じ時間働いてもアウトプットが全然異なります。残業はさせないが、所定時間内のアウトプットをどう増やすか、に注目しているわけです。
労働制賛成を上げるためにはとにかく意欲がなければどうしようもありません。ここの改善が難しいことは上で紹介しましたが、このほか、正確性や計画性なども必要となります。仕事が速いが雑な人は結局、やり直しで時間を要して生産性は悪いですし、計画性なくやりたい仕事から順番にこなす人はかならずどこかでボトルネックを生じて生産性を悪化させてしまいます。大きな意味合いで「能力」という言葉にまとめられるのかもしれませんが、職場の労働生産性を高めるために伸ばすべき従業員の力は意外に多方面にわたりがちです。

まとめ

静かな退職者でも組織に貢献している以上は必要な人材ですが、そのままではダメで、こうした人材の意欲や能力を引き出していく必要があります。幸いなことに静かな退職者が生き残れる企業はブラックではないという証。ブラック企業ではないという点を強みとして訴求して人を集め、その従業員を大切に扱い、少しずつでも組織に愛着を持ってもらってその意欲を引き出し、能力開発に努めていく必要があります。やりたい仕事がない若者はこうした静かな退職をしがちですが、それは開発の余地があるということでもあり、決して強制にならない範囲で少しずつ意識改革を促していくことが望まれます。
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