開業当初の少し注意すべき集客戦略【公認会計士×中小企業診断士が解説】

起業

開業当初は「生き残り」が至上命題

事業を立ち上げたばかりの段階で最も重要なことは、「理想の顧客」や「効率の良さ」ではありません。まずは企業としての「生存」を最優先に考えるべきです。多くの起業家が、スタート時点で理想の顧客層や、利益率ばかりを追い求めてしまい、結果として売上が立たず、資金が底をつき、事業が短期間で終わってしまうという現実があります。
この段階では、とにかく売上をあげることが最重要課題です。そのためには、利益が薄い仕事でも、多少面倒な顧客であっても、仕事として受けていくことが求められます。もちろん、理想的な顧客ばかりを選べればベストですが、現実にはそうはいきません。開業当初は、値引きやサービスの付加などを積極的に行い、まずは「お金の流れ」と「顧客との接点」を作ることに集中しましょう
売上が安定していない段階では、「こだわり」は一旦横に置いておく必要があります。最初は赤字覚悟で顧客の期待に応え、徐々に信頼を築いていくことが、その後の価格改定やブランド構築への道につながります。
そこで本稿では開業当初から成長期までの集客において少しだけ注意して改善できる点を紹介します。

開業の少し後にも集客が続く仕掛けを用意する

開業当初は、新規性やオープニングキャンペーンといった話題性から、多くのお客様が足を運んでくれることがあります。ところが、その一時的な盛り上がりが終わった直後、急に集客が落ち込むケースが非常に多く見られます。いわゆる「開業バブル崩壊」とも言える状況です。
この事態を防ぐためには、「開業直後の盛り上がりの後」にも来店や利用を促す仕掛けが必要です。たとえば、「1か月後に新商品をリリースする」「2か月後にリピーター限定の割引を実施する」「季節ごとのイベントやキャンペーンを実施する」といった中期的な集客策を開業当初から準備しておくことが効果的です
また、開業の数週間後に再来店してくれた顧客には、特別感のある案内を送ったり、特典を用意したりするのも有効です。「来て終わり」ではなく、「また来たい」と思わせる導線を設計することが、長く続く商売の基本となります。
新規性がなくなった後も継続的にお客様を惹きつけるには、「次に何があるのか」を予告したり期待させたりすることが欠かせません。開業準備の段階から、「数か月先の集客」も視野に入れておくと、安定した運営につながります。

値引きは期間限定で

開業時の値引きは、新規顧客を引き込むための非常に効果的な手段です。特に競合が多い業種や地域では、価格面での魅力を訴求しなければ、お客様が足を運んでくれないことも少なくありません。
しかし、この「値引き戦略」には明確な注意点があります。それは、値引きを「限定的な施策」として実施しないと、顧客がその価格に慣れてしまい、通常価格では購入してくれなくなるということです。つまり、一時的な戦術が、結果的に長期的な収益悪化を招くリスクを孕んでいます。
この問題を防ぐには、値引きを行う際に、「開業記念価格」「〇月〇日までの限定価格」など、期限をしっかりと設定し、「通常価格に戻る」ことを明示することが不可欠です。そうすることで、「今だけお得」という希少性や緊急性が強調され、購買意欲も高まります。
また、値引きによって集まった顧客に対しては、次回来店時に使えるクーポンやポイント制度などを活用し、リピーター化を促す工夫も必要です。価格以外の魅力を伝えていくことが、健全な経営への第一歩となります。

広告は中期的な視点で柔軟に継続を

広告は、どのような事業であっても必要な要素です。特に立ち上げ直後のタイミングでは、認知度がゼロに等しいため、広告を打たなければ存在すら知られないという事態に陥ります。
ただし、広告に即効性を求めすぎるのは危険です。どんなに優れた広告を出しても、すぐに効果が出るとは限りません。むしろ、継続的に露出を続けることで、「なんとなく見たことがある」「最近よく聞く」といった印象が蓄積され、徐々に集客へとつながっていくものです。
また、広告の手段も、折り込みチラシ、SNS、Google広告、地域密着フリーペーパーなど多岐にわたります。それぞれに向き不向きがあるため、いくつかの手法を試しながら、「反応が良かったもの」を中心に調整していくことが求められます。
重要なのは、短期的に失敗しても「投資」と割り切り、柔軟に試行錯誤する姿勢を持つことです。成果が出るまでには時間がかかるかもしれませんが、その過程で「自社に合った広告スタイル」が見つかってくるはずです。

採用が難しいなら仕事を断る

開業してしばらく経ち、顧客が定着しはじめると、徐々に忙しくなってきます。これは喜ばしいことですが、小規模事業者にとっては、人手不足が大きな壁となることがあります。特に採用が難しい業種では、「忙しい=品質が落ちる」という悪循環に陥る可能性があります。
そのような場合、無理に全ての仕事を受けようとせず、「断る勇気」を持つことも大切です。すべての仕事を請け負うことで、自社のキャパシティを超えてしまい、結果として納期遅れやサービス品質の低下につながり、かえって信頼を損なうことがあります。
特に「安い仕事」や「手間のかかる顧客」から優先的に断るという選択肢は、経営を守るために非常に有効です。利益率が低く、工数だけかかる仕事を削ることで、限られたリソースを「価値の高い仕事」に集中することができます。
この判断は一見すると冷たく感じるかもしれませんが、長期的に見れば、顧客満足度の向上とブランド価値の維持につながります。人手に限りがある状況では、「選ばれる側」になるための努力と、「選ぶ勇気」のバランスが重要です。

まとめ

開業当初において最も大切なのは、理想よりも現実を見据えて「生き残ること」です。とにかく売上を立て、実績を作ることが最優先であり、面倒な顧客や低利益な仕事でも積極的に受けていく姿勢が求められます。
ただし、その後を見据えた中期的な仕掛けも忘れてはいけません。開業直後の一時的な賑わいのあとに集客が落ち込むのを防ぐため、定期的なキャンペーンや新商品投入など、継続的な関心を得る工夫が必要です。
また、値引き戦略を実行する際には、期間や条件を明確にし、顧客が値引きに依存しないよう設計することが重要です。広告に関しても、即効性を求めず、中長期的な視点で柔軟に運用していくべきです。
そして、スタッフの確保が困難な場合には、無理な受注を控え、仕事の選別を行うことで、サービス品質の維持を最優先とする姿勢が求められます。開業直後は試行錯誤の連続ですが、計画と工夫によって、着実に安定した経営基盤を築く意識が重要です。
当研究所では、公認会計士・MBA・中小企業診断士・ITストラテジストが御社の開業当初の集客戦略について数字とデータベースで合理的に支援いたします。下記よりお気軽にご相談ください。

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました