配偶者に不倫された際の実践的交渉術【弁護士×CFPが解説】

離婚

不倫後の交渉は何となく進めてはいけない

配偶者の不倫が発覚した場合、検討すべき問題は多岐にわたります。不倫という一つの出来事をきっかけとして、夫婦関係や家族の生活全体に関わる問題を整理しなければならなくなります。

、配偶者が不倫を認めている場合には、相手の言葉をそのまま信用し、「とりあえず話し合えば何とかなる」と考えてしまいがちです。不倫をした本人が謝罪し、反省している様子を見せていると、こちらも感情的な対立を避けようとして、条件を細かく決めないまま協議を進めてしまうことがあります。また、夫婦として長年生活してきた関係があるため、相手を完全に疑うことに抵抗を感じることもあります。

しかし、不倫発覚直後と、話し合いが数週間、数か月と続いた後では、当事者の心理や置かれている状況が変化することがあります。当初は不倫を認めていた配偶者が、時間の経過とともに態度を変え、事実そのものを否定したり、自分に不利な発言を撤回したりすることもあります。

特に問題なのは、話し合いを口頭だけで進め、重要な事実や条件を曖昧なままにしてしまうことです。後になって「そんなことは言っていない」「そこまで約束した覚えはない」と言われれば、それまでの話し合いが一気に不安定になります。

相手が不倫を認め、謝罪しているという状況であっても、将来にわたって同じ態度を維持するとは限りません。交渉では、その時点の相手の言葉だけでなく、自分自身が何を求め、何を譲ることができ、何を譲るべきではないのかを整理したうえで、冷静に進める必要があります。

そこで本稿では、配偶者が不倫した後の実践的な交渉術を紹介することで、感情に流されず、必要な問題を適切に整理するための考え方を示します。

まず何より証拠の確保

不倫をめぐる協議が長引いた結果、当初は「不倫をした」と認めていたにもかかわらず、後になって「食事をしただけだ」「仕事上の関係だった」「そんな関係ではない」などと説明を変えられると、それまでの話し合いの前提が崩れてしまいます。

不倫を認めていた配偶者が態度を変える理由はさまざまです。不倫相手から助言を受けることもあれば、家族や知人から意見を聞くこともあります。また、弁護士などの専門家に相談した結果、不倫を否認した方が自分にとって有利だと判断し、これまでの説明を撤回するケースも考えられます。一度認めたからといって、その状態が永続するとは限りません。

そこで重要になるのが、不倫の事実を裏付ける証拠です。証拠が存在していれば、相手が後から説明を変更したとしても、客観的な資料を基礎として問題を整理できます。一方、証拠が乏しい状態で相手の自白だけを頼りに協議を進めてしまうと、相手の態度が変わった際にこちらの立場が急激に弱くなるおそれがあります。

不倫の証拠には、メールやメッセージ、写真、動画、SNS上の記録、宿泊や移動に関する記録など、さまざまなものがあります。ただし、これらは極めてプライベートな情報であり、時間が経過すると削除されたり、端末から消去されたりすることがあります。アカウントの変更や端末の買い替えなどによって確認できなくなることもあります。

そのため、「相手が認めているから証拠はいらない」と考えるのは適切ではありません。むしろ、相手が認めている段階だからこそ、冷静に証拠を確認し、必要な情報を保存しておくことが重要です。

また、証拠は単に大量に集めればよいわけではありません。不倫の時期、相手との関係、不貞行為の存在などをどの程度裏付けられるのかという観点から、内容と取得経緯を整理することが大切です。後から交渉や法的手続を行う可能性を考えれば、感情的に相手を問い詰める前に、現状を冷静に把握しておくことが重要になります

VS配偶者とVS不倫相手の話し合いは分ける

不倫が発覚した際、配偶者と不倫相手の双方に対して一度に話をつけようとする人がいます。三者で一緒に話し合えば、事実関係を一度で確認でき、問題をまとめて解決できるように思えるからです。しかし、不倫問題においては、配偶者との話し合いと不倫相手との話し合いを分けて考えることが重要です。

まず、配偶者と不倫相手では、こちらとの法律上・生活上の関係が異なります。配偶者とは婚姻関係にあり、今後も夫婦として生活するのか、婚姻関係を解消するのかという問題があります。これに対し、不倫相手との間では、主として不貞行為についての責任や慰謝料などが問題となります。両者を同じ場で処理しようとすると、本来別々に考えるべき問題が混在してしまいます。

また、二対一の構図になりやすいことも注意が必要です。配偶者と不倫相手が互いに協力する状態になれば、こちらだけが孤立する可能性があります。二人から同時に説明を受けることで心理的な圧力を受けたり、相手側が一致した説明をすることで事実関係を把握しにくくなったりすることもあります。

そもそも、不倫相手に対してどのような対応をするかは、配偶者との今後の関係によって変わります。婚姻関係を継続するのであれば、夫婦関係の修復を優先するという判断もあり得ます。一方、離婚するのであれば、離婚に伴う諸問題と不倫相手に対する責任追及を整理して考える必要があります。

さらに、「配偶者は許しても、不倫相手は許さない」という判断も珍しくありません。したがって、交渉の順序としては、まず配偶者との関係について自分の意思を整理し、夫婦として今後どうするのかを中心に話し合うことが基本となります。そのうえで、夫婦間で決まった内容との整合性を確認しながら、不倫相手との問題を別途整理します。相手方を一括して相手にするのではなく、それぞれとの関係性と問題を切り分けることで、交渉の論点が明確になります。

地裁と家裁の手続を使い分ける

不倫をきっかけとして発生する法律問題には、すべて同じ手続を利用するわけではありません。問題の内容に応じて適切な手続を選ぶ必要があります。

離婚するかどうかについては、家庭裁判所での調停など、話し合いを基本とする手続が中心になります。離婚条件についても、親権、養育費、面会交流、財産分与など、家族の今後の生活に直接関係する事項を総合的に整理していくことになります。特に家族関係に関する問題は、単純に金銭の多寡だけで決着するものではないため、当事者間の合意形成が重要になります。

一方、不倫による慰謝料請求は、不法行為に基づく損害賠償請求として、地方裁判所などの民事訴訟で争われることがあります。こちらでは、不貞行為が存在したのか、相手がどのような認識で関係を持ったのか、損害や因果関係をどのように評価するのかなど、証拠に基づいた主張立証が重要になります。

手続を選ぶ際には、単に「裁判を起こせばよい」と考えるのではなく、自分が何を実現したいのかを明確にする必要があります。離婚そのものを成立させたいのか、子どもの生活について合意したいのか、夫婦の財産関係を整理したいのか、それとも不倫による精神的損害について金銭的な賠償を求めたいのかによって、適切な手続は変わります。

さらに、自分がどの程度の証拠を持っているのかも重要です。手続の特徴と自分の証拠、相手との交渉状況を総合的に見て、適切な場を選択することが重要です。

子どもに非はない

不倫をめぐる夫婦間の問題で、最も慎重に扱わなければならないのが子どもの生活です。不倫をしたのはあくまで親であり、子どもには何の責任もありません。夫婦の関係が壊れた原因がどちらにあるとしても、そのことによって子どもの生活まで必要以上に不安定にしてよいわけではありません。

離婚するかどうかを判断する際にも、夫婦の感情だけでなく、子どもがどのような環境で生活することになるのかを考える必要があります。住居、学校、生活リズム、経済状況、親子関係など、子どもの日常に関わる要素は数多くあります。親同士が不倫問題について激しく対立していたとしても、子どもの生活については別の問題として冷静に考える姿勢が求められます。

特に重要なのは、不倫を理由として離婚する場合であっても、子どもが従前と同程度の生活をできる限り維持できるよう、両親がそれぞれ責任を果たすことです。離婚によって夫婦ではなくなったとしても、子どもとの親子関係まで消えるわけではありません。親としての責任は、夫婦関係の終了とは切り分けて考える必要があります。

一般的には、不倫をした側が夫婦の居住関係から離れ、子どもの生活に生じる経済的な負担について養育費などによって分担するという考え方があります。また、不倫をした側が子どもの監護を担うことになる場合もあります。この場合、不倫をされた側が「自分を裏切った相手に子どもを任せることになる」という強い葛藤を抱くことは当然です。しかし、親として許せないという感情と、子どもにとってどの環境が望ましいのかという問題は、必ずしも一致するとは限りません。

子どもの利益を中心に考えるということは、不倫をした側の行為を許すことではありません。夫婦間の責任については適切に整理しながら、子どもの生活については別の基準で判断するということです。不倫問題の交渉では、親の感情が前面に出やすいからこそ、子どもを親同士の争いの道具にしない姿勢が重要になります。

まとめ

配偶者に不倫された際の交渉では、怒りや悲しみといった感情を抱くこと自体は自然ですが、実際の交渉まで感情だけで進めてしまうと、自分にとって必要な条件を確保できなくなるおそれがあります。不倫発覚直後に相手が謝罪している場合でも、その態度が将来も変わらないとは限りません。そのため、相手の現在の発言だけを前提にせず、冷静に問題を整理する姿勢が重要です。

まず重要なのは、不倫の事実を裏付ける証拠を確保することです。一度不倫を認めた配偶者が後になって否認する可能性を考えれば、自白だけに依存するのは危険です。証拠は時間の経過によって失われることもあるため、適法な範囲で早期に整理しておく必要があります。

また、配偶者との話し合いと不倫相手との話し合いは、分けて考えることが基本です。夫婦関係を今後どうするのかという問題と、不倫相手に対してどのような責任を求めるのかという問題は、同じ不倫から生じたとしても性質が異なります。両者を一度に処理しようとせず、それぞれの関係と論点を整理することで、交渉を進めやすくなります。

さらに、離婚や親権、養育費、財産分与などは家庭裁判所での手続が中心となる一方、不倫による慰謝料請求は民事訴訟の対象となる場合があります。何を求めているのかを明確にし、証拠の状況や相手との交渉状況を踏まえて、適切な手続を選択することが大切です。

そして、どのような結論になっても、子どもには不倫の責任はありません。親同士の感情的な対立と、子どもの生活を守る問題は切り分けなければなりません。夫婦間の責任を適切に整理しながら、子どもの生活や成長に必要な環境を維持することも、親として果たすべき重要な責任です。

不倫後の交渉で大切なのは、相手を感情的に追及することではなく、自分が何を求めているのかを明確にし、証拠、相手との関係、手続、子どもの生活という問題をそれぞれ整理して進めることです。感情と法律上の問題を切り分け、必要な場面では専門家の助力も得ながら、一つずつ判断していくことが、後悔の少ない解決につながります。

当研究所では、不倫問題について、証拠収集や今後の生活設計などの点から早い段階で弁護士・CFPに相談することを推奨しております。下記よりお気軽にご相談ください。

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました