「安すぎる日本」問題
多くの観光客で賑わう日本ですが、円安の影響があるものの、色んなものが安すぎると指摘されています。例えばインバウン丼は日本人には手が出ませんが、外国人には十分価格に見合う価値があると評価されているものもあります。
こうした報道を受け、観光地などでは商品やサービス価格を一気に引き上げる動きもあります。しかしそうすると、地元の人が買い物できなくなります。そこで、二重価格を設定し、外国人には高く、日本人には安く商品・サービスを提供しようとする動きはありますが、まだなかなか浸透していないのが現状です。
そこで本稿では、こうした「安すぎる日本」が社会においてどのように問題であり、これをどのような工夫をして解決すべきであるかを、顧客目線と社会全体の目線から紹介いたします。
転売ヤー問題
安すぎる商品が大問題になっているのは転売屋問題です。レアなチケットが天文学的な金額に跳ね上がったり、ちょっとしたノベルティでも、例えば鉄道関係のものは鉄道ファンの間でかなりの金額で取引されたりします。
自由取引の社会では、早く人気商品を押さえたものが勝ちであり、それをいくらで購入するかも自由なのですが、それにより通常の方がほしい商品を得られないのは大きな問題です。例えば大谷選手の日本での試合のチケットは、ネットがなかなかつながらず最善を尽くしてもとれない人が多く、ノベルティも通常は数量限定なので、転売できると転売目的で入手する方が増え、本当に欲しい方に回らないおそれがあります。
転売対策はルール化できれば良いのですが、ルールがない場合、ある程度は売り出す側が適正価格を設定し、転売屋のうまみを消す取り組みが必要です。
備蓄米を納入せずに転売
空前のお米不足に社会全体が困惑する今年ですが、備蓄米が米の価格の安定化の切り札となるかが注目されています。ところが、その備蓄米を政府に納めずに業者に転売した事業者が発生しています。備蓄米を政府に納入する業者は予め定めた価格で政府に米を納入し、これを怠ると違約金が発生します。しかし、その違約金の金額が小さいため、違約金を支払ってでも転売した方が儲かることから、こうした政府への納入拒否事案が相次ぎました。
この問題の解消は数年後になると想定されます。政府が設定する違約金の金額を変えるためには、平等原則の問題もあり、米価格の変動状況をある程度の期間にわたって分析しなければならないためです。そうすると、一般家庭に通常価格でお米が届けられるのはまだまだ先になるわけです。
3つの観点で価格査定し、買い手を考慮して値付けする
価格設定には一般的に3つのアプローチがあります。1つは、その入手に要したコストから設定するパターン。一般的な製造業者であれば製造コストに一定の利益率を加えて販売価格とすることが多いです。2つ目は市場価格で、上場株式など市場で取引される価格がある程度わかるのであればこれを販売価格にするパターンです。3つ目は、その資産を有していることにより将来得られる収益総額の現時点での価値を販売価格とすることです。
ここで価格設定においては、取引相手の属性に注意する必要があります。仮に収益価格が最も高くても、相手が転売屋であれば市場価格を最も信用します。どのような相手に売るのかを想定し、その相手がどの価値を重視するかを考えながら価格設定することが大事ですし、様々な価値は時間の経過に伴って乱降下しがちであるため、ダイナミックプライシングの採用も検討すべきでしょう。
子どもの優遇措置などはサービスを徹底せよ
例えばスポーツの試合や鉄道イベントなどで、子どもに参加してほしいため格別に安く価格設定したところ、大人や、子連れの親子がこれを転買し、本来の意図を損ねてしまうケースもしばしば報道されています。こうした、特定の層に貢献するために特別に安くしている企画などではその企画達成のための運営を徹底する必要があります。例えば、高校野球では、子どもに試合を見てもらうという目的などで、バックネット裏の特等席を野球をする少年チームに割り当てています。この企画は一切目的を譲歩しないため。例えば急病などで参加予定の子どもが入場できなくとも、代わりに他の方は入れず、大人もそのエリアには立ち入りできない対応をすることで、この特等席の譲渡を防止しています。
まとめ
商品・サービスに一体いくらの価格があるのかを正確に算定することは難しいのですが、その結果、ほとんどの方が消極的な値付けをして損するとともに、本当にその商品やサービスを欲しい方に回らないという大きな問題がまだまだ解消されていません。特に転売屋対策はそのルール設計も、価格設定も複雑なステップを踏む必要があるため、なかなかすぐに解決策を見いだすことは難しいのですが、少し強気の価格を設定してみる。AIを活用してダイナミックプライシングを導入してみることも有効です。
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