辞められて困る人とそうでない人
人手不足の中、特に中小企業では、ちょっと職場環境が厳しくなるとすぐに辞めてしまう人が出てきます。数少ない従業員が辞めてしまうと、仕事を残ったメンバーで処理しなければならなくなるため、余計に職場環境が悪化してしまうのが普通ですが、時に、優秀で組織に貢献していても、早く辞めさせた方が良い人材もいます。
「辞める」と切り出した人材に翻意を促すのは大変です。そのため、基本的には「辞める」と言いださない程度に職場の負荷を抑えるのがセオリーですが、優秀でも職場を乱す人材がいるのであれば、短期的にはその人材に辞められると大変であっても、将来を見越した判断が必要な場合もあります。
そこで本稿では、主に中小企業で仕事の負荷が高いので辞めたい、という従業員が出た場合に、カテゴリー別にどのように対応すれば良いかを説明します。
「リベンジ退職」する層
最近では「リベンジ退職」が増加していると言われます。リベンジ退職とは、退職の腹いせに企業のっ機密情報を持ち出す人材で、このような方は、企業にとって絶対に辞めてもらうべき存在です。人手不足の状況であっても、会社の信頼性や経営基盤を揺るがしかねない行為を容認することはできません。機密情報漏洩は取引先からの信用失墜を招き、長期的には企業の存続自体を危うくするリスクがあります。人材の不足による短期的な業務負担よりも、重大なリスク管理の方が優先されるべきです。このような問題行動を起こした人材は、速やかに適切な処分を行い、できれば、その前に手を打って機密情報を保護し、社内の安全体制を再確認・強化することが必要です。
リーダーシップを発揮する中核的な人材
中核的なリーダーが退職することは、企業にとって非常に大きな痛手です。特に人手不足の中では、リーダーシップを発揮する人材が担う業務の範囲は広く、その人材いなくなると組織の混乱が避けられなくなります。M&Aの際などにはこうした中核的な人材の引き止めが特に重視されていますし、意図的に競合他社の中核人材を引き抜く企業もあります。リーダーは業務遂行だけでなく、部下の育成、チームの士気向上、部署間の調整など、目に見えない部分でも重要な役割を果たしています。そのため、引き止める努力を最大限行うべきです。待遇やキャリアパスの見直し、働き方の柔軟化など、本人の不満や希望を聞き取り、退職回避に努めることが必要です。どうしても退職が避けられない場合には、後任育成を急ぎつつ、ダメージを最小限に抑える体制を整えなければなりません。
優秀だが、悪口を流布する従業員
優秀だが、同僚の悪口ばかり言う従業員については、慎重な判断が必要です。個人としての業績は優秀であっても、同僚の悪口を頻繁に口にすることで、チーム全体の雰囲気が悪化し、協力体制が崩れるリスクが高まります。職場環境の悪化は離職者の増加や生産性の低下を招き、最終的には組織全体の力を削ぐ結果になりかねません。本人に改善を促すための指導を行い、それでも態度が改まらない場合は、退職を受け入れる選択肢もやむを得ないでしょう。優秀な個人よりも、強いチームの維持を重視するべきです。特に人手不足の今こそ、組織のまとまりがより重要になっています。
言われたことはこなすが、向上心のない従業員
最近「サイレント退職」という言葉が広まっています。より良い転職先がないため、会社を辞める気はないのですが、会社に忠誠心を尽くす気もなく、任された仕事だけを所定時間いっぱいで処理して、それ以上の貢献をしない人材を指します。
このタイプの人材は、すぐに辞めてもらうべき存在ではありませんが、長期的に見て課題がある存在です。現状の業務を確実にこなすという点では、一定の貢献があり、人手不足の中では貴重な戦力でもあります。ただし、変化の激しい現代においては、単に現状維持を続けるだけでは、いずれ組織の足を引っ張ることになりかねません。できればモチベーション向上のための働きかけや、スキルアップ支援を行い、成長意欲を引き出す努力をすべきです。それでも本人に全く向上心が見られず、周囲にも悪影響を与えるようであれば、将来的には退職を視野に入れることも検討せざるを得ないでしょう。
まとめ
こうして、企業には見せかけの貢献度や忠誠心はあるが、将来的には企業活動を阻害する可能性があるため、辞めてもらわなければならない人材もいれば、企業への忠誠心や貢献度は低いが、当面はいてもらわなければ困る人材もいます。その判別は大変難しいのですが、優秀さや貢献度で評価するのではなく、社長の目指す方向性にどれだけ共感しているか、という観点で評価してみると面白い分別ができるかもしれません。
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