謝罪では済まされない。農水省のこれまでの失策と今後とるべき対応

リスクマネジメント

農林水産大臣が謝罪も批判殺到

収束の見込みが見えない米不足に対する国民の苛立ちに対して、農林水産大臣が先日、謝罪しましたが、これが逆に批判を浴びています。この謝罪、何もやらないよりはやってよかったのですが、そこに至るまでの経緯が悪すぎ、かつ、ここまでの失策を挽回する見通しもたっていないため、あまり効果的な対応にはなりませんでした
組織のリスクマネジメントにおいては、トップの謝罪ですぐに解決するものと、そうではなく、厄介な対応が長期間必要となるケースとがあります。どんな組織でも後者を回避して、前者に向けて世論を誘導していきたいところです。そこで本稿では、リスクマネジメントの観点から、こうした騒動に至る前と、その後にどのような対応が必要となるかを、このケースを基に検討していきます。

中央官庁として見通しが甘すぎた

「令和の米騒動」は昨夏ころから問題視されてきました。そこで適切に対応していればここまで大事にはならなかったかもしれません。食料の安定供給は農林水産省の職務です。この段階で米不足の要因を調査して対策すべきでしたが、「秋になれば新米が出てくる」と、楽観的な見解を示して、効果的な施策を講じなかったことが今の騒動の要因の1つになっていると指摘されています。さすがに、本当に何もしなかったわけではなく、専門家に対する相談などは行ったと思いますが、相談された専門家も、将来予測はうかつなことが言えず、相談者があまり本気でなければ、回答もあまり本気では行わない傾向があります。その結果、誰も真剣にこの件に対応としなかったことから、騒動が大きくなり、その要因が中央官庁としての職務に対する無責任にあることは間違いないと考えられます。

国民が求めるのは目に見える解決策

今回、大臣の謝罪が炎上しているのは、謝罪行為は何ら、現状を解決するものではないためです。国民が求めるのは目に見える解決策です。来月中にこの問題を解決しろ、などとは求めていません。できる限り早い段階で解決策を作ってほしい、という要望で、備蓄米の放出がほとんど流通に向かわなかった、というデータはこの要望に反するものであり、いくら備蓄米の解放を増やしても意味はありません。
この解決策を策定するためにはいくつかのステップが必要ですが、農林水産省の対応を見る限り、このステップが順調に進められているようには見えません。それもまた、「謝罪だけで済まそうとしている」という批判につながっています。農林水産省としてはいち早く、騒動を解決する施策を講じる必要があります。物価高騰に対する給付金のバラマキができるのですから、予算は政府がいくらでもつけてくれるはずです。

根拠の明示と分析

抜本的な解決策を策定するためには、エビデンスとロジックが不可欠です。現状の米不足の要因が何であり、それを客観的なエビデンスで説明するとともに、この原因を除去する方法を論理的に説明することが必要です。しかし、現状、解放した備蓄米のごく一部しか流通していないというデータはあるものの、その要因が解明されていません。備蓄米がJAに送られたところまでは確認されており、その先で米が消えているのであれば、JAが米を卸した事業者へのヒアリングや調査が必要となります。おそらくそこで米の不正な取り扱いがあり、強制力のある調査ができないため暗礁に乗り上げている可能性がありますが、それならそれで別ルートでの分析を進める必要があり、立ち止まることが許されるわけではありません。

実効ある追加調査の策定

分析は1つのルートだけで行えばよいわけではなく、複数のルートで行い、相互に検証する必要があります。今行っている調査とは別の、しかし実効性の高い調査を行うことで、真相を高い信頼性をもって明らかにするとともに、不正を働いている輩の弁解を防ぐことも同時に可能となります
現時点で、米が消える要因に一定の仮説がたっているのであれば、その仮説を裏付ける追加調査が必要です。ヒアリングでは当事者は真実を話してくれないという前提で、客観的にどのような追加調査をすれば精度の高い事実が得られるかをふまえて調査を行う必要があり、この段階では大量のデータを効果的に処理する公認会計士やデータサイエンティストの活用が有効だと考えられます。

まとめ

備蓄米を放出するだけでは米は市場に流通しにくいことが現時点で明確になっています。米の輸出量に異常がなければ、国内の卸・小売業者が抱え込んでいると考えるよりほかありません。では、どうすればそうした業者を排除できるか、それが農林水産省の仕事ですので、スピード感を持って取り組んで欲しいと思います。特に、初動がまずかったことが大きな出遅れにつながっているため、その出遅れを挽回するために、何が必要であるかを親権に考えて欲しいと思います。
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