事業承継を考えていなくてもM&Aの提案営業が急増
「御社との資本提携に“興味がある企業”があります」中小企業にはこのような営業電話やDMが日常茶飯事にあるようです。しかし、これは絶対に相手にしてはいけません。事業承継を予定していても、していなくても「興味がある」というような企業はそもそも存在しない可能性も高く、存在しても従業員を任せられる先ではないためです。
本稿では、M&Aで企業を売る際の勘所を整理します。
“興味がある”は「金ヅル」程度にしかみられていない
御社との資本提携に“興味があります”という営業は、多くの場合、その後、その企業側が身売りを急いでいるという話にすり替えられて、企業を安く買おうと思う企業にしか実際に興味を持ってもらえません。
仲介事業者としては契約を成約させられれば報酬がもらえますし、買受企業も割安で購入できれば現預金や収益源を割安で得られて得だ、という意識しかなく、その企業を大事に扱ったり、共存しようという感覚はほぼ持ち合わせないことが多いです。
買い叩かれて従業員が不当な立場に置かれてしまう
このような状況でM&Aを成立させてしまうと、金額が不当に低く算定されてしまうほか、従前企業に貢献してきた従業員も、例えば重複する総務系の職員は解雇されてしまう可能性がありますし、従前の企業の規約上もらうことのできた退職金をもらえなくなってしまったなどのトラブル」が報告されており、要はM&Aによって経営者も従業員も不利な立場に追いやられるわけです。そのため、「興味があります」程度の相手とは、たとえ事業承継の必要性があったとしても、交渉しない方が得策です。
M&Aに適しているのは特別な無形資産を持ち、付加価値を生み出せる企業
M&Aによって、多くの企業の従業員はその前よりも不利益な状況に置かれます。それはM&Aという仕組上仕方ありませんし、事業承継の必要差し迫った企業には多くを望む時間は与えられにくいですが、売り手が交渉力を有しなければ買い叩かれて、従業員も困る状況に陥ってしまいます。そこで大事なのが、売り手が交渉力を有すること。特別な無形資産を有し、安定したまたは傑出した付加価値を生み出せる組織は簿価よりもはるかに高く取引されますので、このような企業の価値を明確に持つことで、経営者の利益も従業員も守ることが可能になります。
「是非ほしい」と思われる程度に企業を作り込む
こうした企業価値の大きい企業は、仲介業者を介さなくとも、様々な企業から「是非買いたい」という話が舞い込みます。すなわち、「興味がある」程度のオファーは完全に無視して、「是非買いたい」というオファーが来るまで企業価値を作り込めば、企業を交渉力を持って売却でき、従業員の立場も守ることができます。
まとめ
以上のように、“興味があります”というM&Aの誘い文句は、実際には興味を有する企業など存在せず、
M&Aを成立させて仲介手数料を得ようとする仲介事業者目線の営業行為であり、事業承継でもそうでなくても、M&Aで企業を売る際には、しっかりと自社の強みを磨き上げたうえで、まっとうな相手に高値で売り切るのがセオリーです。
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