空き家率が13.8%。活用されない「負」動産が増加傾向
総務省統計局の住宅・土地統計調査によれば、2023年10月1日における総住宅数に対する空き家の割合は13.8%に上っています。この数値は毎年着実に上昇し続けており、現在では社会にたくさんある住宅の実に7~8軒に1軒は空き家であるというのが現状です。
建物の建築には相当な初期費用がかかりますし、不動産は保有しているだけで毎年税金がかかります。そのため、保有不動産は活用しなければどんどん出費だけが嵩む厄介者なのですが、こうした空き家を運用も処分もできずにだらだらと保有し続けるケースが増加しています。そこで本稿では、こうした負動産が生じる構造や、負動産を保有し続けるリスク、これを回避するための対策を一挙公開します。
原因はコスト管理意識の欠如
人間は病気にかかると病院で診察を受けて薬を飲んで治します。建物も人間と一緒で定期的なメンテナンスが必要で、高齢になればなるほどこのメンテナンスにかかる費用が増加します。そして、どこかで財産価値としては消滅し、解体・改築が必要となります。
今、全国で空き家が増えているのは、こうした建物のメンテナンスが十分にできていないことにより、誰も住みたいと思えない状態となって、価値の消滅が早まった物件がほとんどです。こうなると、本当は解体しなければならないのですが、解体さえできない、要はメンテナンスや解体を見越して費用をストックしてこなかったことが原因です。財産であるため誰もが活用を試みますが、改築する費用を出せず、また、現状有姿では売却先も見つからないので、仕方がなく相続放棄する物件が増加しています。
負動産のリスク
負動産はどう取り扱えばよいかわからないため、ついつい放置しがちなのですが、負動産の放置はさらに出費が広まるリスクがあります。
生活保護者や無職者など、激安物件にしか住めず、しかも家賃を契約通りに支払わない層は一定割合います。このような層に建物を貸してしまうと、追い出しも難しく、家賃収入も得られず、建物の劣化はさらに進むといったリスクばかりが広まっていきます。
かといって、貸さずに誰もいない状態で放置すると、何者かが侵入して犯罪の温床としたり、火災の火種やゴミ置き場として使われてしまうなど、有事の際に第三者に損害賠償すべき事態につながりやすいです。
時間が経過すればするほど価値は下落し、倒壊リスクなども増加する中で、何か対策しなければと思っても先立つものがなければどうしようもありません。
負動産が生じる構造と多重債務者との共通性
この構造、どこかで見たことがあるなと思わないでしょうか?「収支は赤字だがこの後頑張ればいいや」と、収入以上の出費を続けて借金が膨らむ多重債務者と同じ構造なのです。
不動産の場合、初期の建築・取得費用は高いのですが完成してしまうと、居住用であれば毎月の家賃を払わなくて済みますし、投資物件では当初は何もしなくても賃料収入が入るため、「楽に得できる」のです。
しかし、この楽な状況はせいぜい築15年くらいまで。それ以降はこまめなメンテナンスが必要となり、この費用は年々増していきます。しかし、最初の楽な状況になれた家主はなかなかその「既得権益」を手放したくなく、何もしないままズルズルと建物が劣化し、ついに誰も借り手がつかない状況となってしまいがちです。不動産は保有後期にメンテナンス費用や建替費用などが発生しますが、それを見越して内部留保を増やしていなければ完全に手詰まりになってしまいます。
多重債務と同じで、まだ初期段階で少し赤字を出したり無駄遣いをするのは前々問題ありません。大事なのはどこで踏みとどまって計画的に負債を返済したり、修繕費用を積み立てられるかで、この踏みとどまりができない方が破産したり、負動産を抱え込みがちです。
居住用と投資運用に分けた収支計画の作成を
こうした負け組にならないためには、きちんと収支計画を立てることが効果的な対策になります。
居住用不動産を自己所有する場合、おそらく終の棲家とするケースが多いのでしょう。この場合、築年数にもよりますが、相続人がこの建物に住むことは考えにくいため、相続を契機に取り壊して更地を売却するのが一般的です。そのため、更地にする解体費用まで事前にストックしていく計画が必要です。
投資運用の場合、不動産購入時に「何年保有する」かを決めることが大事です。これを決めると、空き室率について複数のパターンを考えながら収支計画を立てることができます。借主がいる限りは、その借主が退去するまでは家賃収入があるので保有し続けてよいでしょう。そして、退去した段階で物件を売却すれば損にはならず、修繕費用も家賃収入の中から充てれば良いです。
まとめ
負動産をずるずる持ってリスクを抱え込まないためには、居住用でも投資目的でも早い段階で明確に計画を立てて、前倒しで、保有の後半期に必要二なる費用をストックしていくことが有効です。
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