新潟の出雲崎レトロミュージアムが入館に際して同意書を求める
新潟県出雲崎町内の博物館は、昭和時代の街並みを再現するおもちゃ博物館です。2023年12月にオープンした後は、館長が30年以上かけて集めた懐かしいおもちゃなど数千点を展示していました。ところが、子どもが展示品を壊したり、持ち帰ったりする被害が相次ぎ、24年12月には、注意された親から「子供が触れられるようにしている方が悪い」などと反論されることがあったため、館長は翌年に一時閉館し、その後は、おもちゃから展示替えして、大人の博物館としてリニューアルオープンさせました。 子どもも入館できるものの、中学生以下については原則、親が入館同意書にサインすることを求めています。その同意書では、射的やガチャガチャなど以外では展示品に手を触れず、「常に子供から目を離さない事を約束いたしますか?」と同意を求めており、「万が一展示品を触っていたり、破損した場合は即時退館、時価総額での請求となります」とし、館内には防犯カメラが12台設置されており、展示品を壊したことを自己申告しないときは「警察に被害届を出します」としています。この同意書については、入館せずに帰る家族連れが多いようです。
この取り組みは顧客を減らす悪手に見えて実に深く考えられた対応策です。本稿ではこうした手法のポイントと応用手法を紹介します。
子どものいたずらを防ぐ「同意書」
子どものいたずらに対して親に責任を認める同意書を求めることには、大きな意義があります。まず第一に、親が自らの責任を自覚することで、家庭内でのしつけとして自身が何に注意し、何を気を付けるべきかが認識され、子どもの行動に対する監督意識が高まります。次に、同意書の存在は抑止力として機能し、子ども自身も「自分の行動が親に影響を及ぼす」と理解するようになります。さらに、万が一問題が起きた際、関係者間の責任の所在を明確にし、トラブルの迅速な解決を図るうえでも有効です。このように、親に責任同意書を求めることは、いたずらの予防だけでなく、教育的・法的な観点からも有益であり、健全な社会関係の構築に寄与する手段となります。
高齢者をメインターゲットにする方針転換
この美術館がメインターゲットを高齢者に変更した背景には、子どもの悪戯による作品や展示物への影響が大きな課題となっていたことがあります。貴重な昭和のおもちゃは繊細で壊れやすく、いたずらや不用意な接触によって損傷するリスクが高いため、展示環境の保全が難しくなっていました。そこで、美術館は観覧マナーが比較的安定し、昭和の雰囲気や懐かしさに強い関心を持つ高齢者層を中心とした方針へ転換しました。この変更により、展示物の保護が図られると同時に、来館者により深い鑑賞体験を提供できるようになります。また、高齢者にとっては思い出をたどる機会となり、文化的な価値の再認識にもつながります。結果として、美術館の運営の安定化と展示の質の向上が期待される、意義ある方針転換といえます。
小学生以下の悪戯は親の責任だが・・
子どものいたずらに対する責任は、民法上、監督義務者である親が負うとされています。しかし実際には、その法的責任を十分に認識していない親も多く見受けられます。特に公共の場や施設において、子どもが展示物を触ったり、他人に迷惑をかけたりするような行為があっても、「子どもだから仕方ない」といった考えで放置されるケースが少なくありません。その結果、被害を受けた側が対応に苦慮したり、施設側が損害を被ったりすることがあります。こうした実情は、親の監督責任の意識不足に起因しており、社会的なトラブルの温床となることもあります。法的責任があることを理解し、子どもの行動に対して適切な注意と指導を行うことが、親に求められる重要な役割であるといえます。
外国人にルールを認知させる効果も
事前に同意書を求める取り組みは、日本の法律やマナーに不慣れな外国人観光客によるトラブルの防止にも有効です。特に文化施設や美術館では、日本特有の「展示物に触れない」「静かに鑑賞する」といった暗黙のルールが存在し、それを知らずに行動してしまうことでトラブルが生じることがあります。同意書を通じて、施設のルールや日本の一般的なマナー、万が一の際の責任について明確に伝えることで、観光客側の理解と注意を促すことができます。また、同意書はトラブルが発生した際の説明責任や対応の根拠としても機能するため、施設側にとっても安心材料となります。言語対応を含めた丁寧な説明と同意のプロセスは、文化の違いによる誤解を減らし、円滑な運営と来館者双方の満足度向上に寄与します。
まとめ
民法上、子どもの行動に対する責任は親にあると明確に定められていますが、一般の人々がその内容を十分に理解し、日常的に意識して行動するのは容易ではありません。特に博物館や美術館のように繊細な展示物が多い施設では、子どもの不用意な行動が大きな損害につながる可能性があります。そのため、入場時に同意書を交わし、ルールや責任の所在を明確にする取り組みは非常に有効です。同意書によって親が自身の責任を自覚し、子どもの行動に注意を払うよう促されると同時に、施設側もトラブル時の対応がしやすくなります。外国人対策も同様です。
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