CoCo壱番屋が5か月連続で客数が減少
CoCo壱番屋の既存店の客数の減少傾向が止まりません。カレーライスは早くてうまいランチの定番ですが、物価高の中で安さを訴求することは難しくなっています。カレーライス物価指数とう言葉もあり、カレーライス1杯を作るための総コストは経済全体を見通すために注目されています。それだけ、カレーを作るために米、野菜、肉、スパイスなど多様な食材を全世界から調達する必要があります。
そんな人気のカレーライスですが、CoCo壱番屋が特に目立った客離れを起こしている背景には単なる値上げの問題だけでなく、相応の理由があります。そこで本稿では、同社の商品が他のカレー店や、ランチの競合になる定食屋などと比較してどのような点で劣っているのかを整理して紹介いたします。
直接的な理由は値上げだが
CoCo壱番屋の客離れの直接的な原因は値上げです。「1000円の壁」という言葉がある通り、ラーメンやカレーなど回転の速い業種では、どうしても「1000円以上は支払いたくない」という消費者心理があります(回転寿司のような例外はありますが)。
ただ、どの飲食店でも物価高の影響を受けて値上げは余儀なくされており、CoCo壱番屋だけが値上げしているわけではありません。また、「1000円の壁」も、今や1000円以内で食べられるカレーはファーストフード店のカレーくらいしかなく、トッピングを加えるとほぼどんな店でも1000円は超えてきます。そのため、値上げしたから顧客が減少したと簡単に因果関係を推論してしまのは早計で、もう少し掘り下げて分析する必要があります。
街のカレー屋との比較
CoCo壱番屋と街のカレー屋とを比較してみましょう。カレーは人気商品なのでどんな街にでも人気カレー店は点在しています。人気カレー店は看板のおオリジナルカレーをメニューとして有しており、ワンオペの店ではトッピングは少なめで、レギュラーカレー一本で勝負する店も多いです。こうした店ではレギュラーカレーの品質にこだわっているため、SNSでの情報拡散も多く、個人店としてはそれでPRは十分です。トッピングがなければ価格は1000円前後に収まることが多く、価格面でも品質面でもCoCo壱番屋が戦うには分が悪い相手です。
かといって、CoCo壱番屋の競合が、ファーストフード店や街の(人気ではない)平凡な店というわけではないでしょうし、こうした店舗を相手にしては価格差で目も当てられません。
CoCo壱番屋は多店舗展開であるがゆえに規模の経済が働かせられるはずなのですが、コスト面でも品質面でも競合のカレー屋との間で競争力が低いことがまずわかります。
街の定食屋との比較
次に、街の定食屋と比較してみたいと思います。定食屋については都心部では「1000円の壁」はありません。いろんな食材を楽しめるため、当然、手間もかかり、ランチでは1回転が普通なのでゆっくり過ごせることなどから1000円に収めるのは難しいだろうという消費者心理があります。
定食屋は接待など高級志向の方もいるため、金額は青天井ですが、一般的には1000円台前半に収めることが多いです。そのあたりが消費者が選択できるギリギリのラインである可能性が高いからです。
さて、CoCo壱番屋でとんかつなどをトッピングすると同程度の金額になります。では定食とカツカレーを並べてどちらかを選ぶ際、カツカレーを選ぶ動機は何でしょうか?CoCo壱番屋のカレーは価格・品質の両面においてカレー屋以外の競合と戦う競争力も低くなっていると考えられます。
「課金システム」には限界あり
CoCo壱番屋の売りは、レギュラーカレー自体ではなく、ここにお好みでトッピングを加え、各自の食べたいカレーに仕上げることができる仕組みで顧客満足度を高めていた点です。しかし、いかんせんレギュラーカレーがその魅力に比して割高である点が最大の問題で、ここにトッピングを加える課金システムも、予算ありきで考えるとその範囲が制限され、食べたいカレーありきで考えると高額になってしまいます。
課金システムが強みであったにも関わらず、値上げでその強みが発揮できる範囲がどんどん狭まっていることが客数の減少につながっている要因です。CoCo壱番屋が客を回復するためには、価格設定を戦略的にすべて見直して課金システムをうまく発揮させられる仕掛け作りが不可欠だと考えられます。
まとめ
以上に整理したとおり、CoCo壱番屋の商品ラインナップは変わらなくても値上げにより飲食業界におけるポジションが変化しています。トッピングしないプレーンカレーが競合相手と比較して割高であるため、これにトッピングを加えて顧客が自分の好みのカレーを作り上げることも割高になりつつあります。一般的に滞在時間の短いカレー屋ですが、滞在時間を延ばして付加価値をつける戦略にも限界があります。対策としては、ベースになるプレーンカレーを、大衆受けする味を維持しながらできる限りコストカットし、その上に顧客の好みでトッピングを加える方式に調整することが1つ考えられます。
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