無断欠勤を許容して退職率が減少
今やどこの業界でも人手不足で、退職者が出ると現場が大変になるため、退職者を極力出したくありません。特に製造業などでは、組織として計画全体を管理しているため、1人の欠員が全体計画に及ぼす影響が大きくなりがちな反面で、働く側からすれば単純作業の繰り返しで業務ノルマも高いため、肉体的にも精神的にも負担を抱えてしまい、傷病による離脱や、自主退職をせざるをえない状況に追い込まれてしまうケースがしばしば発生しがちです。そんな中、無断欠勤を許容し、勤務時間を自由に選べる業務体制に変えることで、退職率を減少させることに成功した企業の例も報道されています。
そこで歩行では、従業員を拘束するのではなく、逆に負担を減らすことで離職率を減らすことのできるメカニズムと、その導入にあたっての問題点を様々な観点から説明いたします。
理由を考えて連絡するのが心理的な負担に
風邪をひいたのに当日の欠勤は認めない、なんて企業は現代ではブラックで、早晩淘汰されると思われます。現代の多くの企業は出勤時刻や昼休みの時間は固定的だが、残業は減少に努めており、有給休暇が残っている限り、病気の時にはその取得を推奨し、そうでない理由であっても可能な限り休暇取得は認めるのが一般的です。これは労働法令はしっかり遵守していますが、それだけでは従業員にはまだ負担がかかっているのが実情です。
毎日決まった時間に出勤しなければ「いけない」。会社を休む際には理由を考えて連絡しなければ「いけない」この義務感が、現実に行動することはそう難しくないことであっても、心理的な負担が依然として大きいため、そのような負担を抱え続けるのであればもう会社を辞めてしまおう、という方向に従業員が考えてしまいがちです。
給料が安くても働きたくない時期はある
たくさん働いてたくさん給料を得たい。そういう従業員の存在が高度経済成長を支えていました。また、我々就職氷河期世代の弁護士は、収入ではなく経験を早期に積むために競って仕事を受け、残業時間を増加させていました。こうして何らかの目的のために残業を求める従業員がいると組織全体の負担は減少するのですが、最近はこうした従業員は大きく減少し、逆に収入は少なくても良いのであまり働きたくない、負担を感じたくないという方が増えています。これは、企業としてはあまり欲しくない、企業が欲しいのは残業ウェルカムな層ですが、働きたくない層に無理を要求しても変化は期待できず、逆に管理を緩くすれば離職率が低下するため、出勤退勤の時間も欠勤も自由にすることで、とにかく従業員の負担を軽減することで、従業員の維持が可能となるわけです。
取引先の期限管理をどうする
さて、こうして勤務時間を自由にすることは企業側のある大事な事項を犠牲にする可能性があります。冒頭で挙げた全体生産計画です。製造業では、縦割りの業務体制が効率的であるため、なすべき仕事が従業員別に固定化されがちです。そのような中である従業員が急に欠勤すると、その工程が止まってしまい、その後工程の仕事がすべて詰まってしまうおそれが生じます。この犠牲が大きいため、計画責任者は「急な欠勤はするな」という方向で指導しがちでした。
自由な出退勤や欠勤を認める場合、こうした急な誰かの穴を組織としてどう埋めるかの代替案を考えることが不可欠です。その1つの策としては多能工化し、1人抜けても他がカバーすれば良い、というものですが、なかなか多能工を確保するのは難しく、問題を将来に先送りしてしまうだけかもしれません。
仕事を押しつけずに、交渉する体制作りが大事
誰かが急に休んだ場合、その仕事を別の従業員がサポートしなければなりません。ありがちな失敗例は、このサポートの役割を中間管理職に押しつけること。負担を誰かにおしつけてしまうと、その負担に耐えかねた従業員が辞めてしまい、その負担がさらに別の方に転嫁され、と企業はどんどん悪循環してしまいます。
その日の気分で休みたい人がいるなら、その日の気分で少し多く働いて稼ぎたい人もいるかもしれません。そうした個々の意向のコミュニケーションの風通しをよくして、うまく従業員間の交渉で負担のやりとりを認める体制を構築することができると、会社として誰かがこなさなければならない仕事を押しつけることなく、組織として負担無くこれを解消することが可能になります。
まとめ
最近の従業員は負担を感じやすく、特にこれからの季節は1年の中でも従業員が精神的負担を感じ、会社に対する不磨を抱えがちです。これに対して、自由な勤務を認めることでその負担を軽減することは一面では有効ですが、企業活動全体としての計画や期限遵守のためには、現場が混乱するリスクもあり、誰かが休んだ穴を他の誰がどのように埋めるかまで考えて人事体制を作り込まなければただ、目の前の問題を先送りしただけで終わってしまう失敗例も多く、注意が必要です。
当研究所では、京大経営管理大学院で人財マネジメントを副選考した弁護士・公認会計士・MBA・中小企業診断士が、御社の離職率と業務計画の双方を同時に改善するためにはどのような人事制度を構築すれば良いかを全体的な視点で助言・サポートさせていただいております。下記よりお気軽にご相談ください。
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